初テスト オフロードアイコン ジープ ラングラーにもついにプラグインハイブリッドモデルが
2021年8月3日
ジープ ラングラー4xeルビコン。それは、荒れた大地を力強く駆け抜ける。そんなジープ ラングラーにプラグインハイブリッドを搭載して耐久テストを実施した。ジープのラインナップのコンパス、レネゲードに続いて、オフロードのアイコンモデルであるジープ ラングラーが、プラグインハイブリッドとしても登場した。以下に、テクニカルデータとともに、そのテストの結果をレポート。
ファンの期待は大きい: 「ジープ ラングラー」には、今後、ディーゼルや純ガソリンエンジンは搭載されず、ショート2ドア、ロング4ドア、オフロード系の「サハラ」と「ルビコン」は、フォールディングルーフコンバーチブル、デタッチャブルハードトップを問わず、プラグインハイブリッド車のみとなる。
なお、ショートタイプの「ルビコン」のみ、電動モーターを搭載していないモデルも選択できる。
しかし、兄弟車である「レネゲード」や「コンパス」とは異なり、「ラングラー」のドライブトレイン自体は変更されていない。
オフロードでは、「ラングラー」は悪路などの状況下で威力を発揮する。
それは、オフロード用のリダクションを備えた恒久的な全輪駆動であり、今回試乗した「ルビコン」の場合は、さらに両軸(アクスル)に、本物の機械式ディファレンシャルフルロックを備えている。
電動式の全輪駆動ではないが、オフロード車としては最高の性能を備えている。
「ジープ ラングラー」を除けば、メルセデス・ベンツの「Gクラス」だけが、この機能を備えているが、デファレンシャルロックを持つジープが、オフロードカーの中で最も優れた性能を発揮するのは当然のことだ。
さらに、「ルビコン」には、解放可能なスタビライザーバーや、ラフなオフロードタイヤなど、他のオフロード用パーツも搭載されている。
しかし、本当にすごいのは、これが純粋なEモードでも機能することだ。
すべてのオフロードシステムは、電動モードでも使用可能となっていることは、特記すべきことだ。
特に、特別に短いオフロード用クローラーギアを備えた「ルビコン」では、245Nmの電動トルクで、坂道で驚くほど強力なトラクションを発揮する。
我々が試乗した「ルビコン」構成のプラグインハイブリッド車の価格は、純燃焼エンジン車よりも、ちょうど1万ユーロ(約130万円)高い、7万1000ユーロ(約930万円)からだが、ここからプラグインハイブリッド車の購入プレミアムが差し引かれることにはなる。
「ルビコン」は、街乗りのようなSUVとしてはあまり良い選択ではない。
「ルビコン」は、スポーティなハンドリングではまったくないし、高速道路を走るのに適したクルマではないことはいうまでもない。パワーは十分すぎるほどあるものの、「ルビコン」は最高時速が156km/hだし、オフロードタイヤは荒々しく大きな音を立てて転がる。スローなステアリングは、岩の上を走ってもステアリングホイールが手から叩き出されることがないので、荒れた路面ではありがたいが、カントリーロードでは、もう少しフィードバックが欲しいところだ。
さらに、純内燃機関モデルの「ラングラー」と比較して、「4xe」が不利になるのは、部品の追加による重量増とグロス17.3kWhのバッテリーであろう。しかしバッテリーは、リアシートの下に設置されているので、オフロードでも常に安全だとはいえる。
一方で、街中をゆっくり走る面では、まあうまくやっていける。
高い位置にあるシートポジションが落ち着きを与えてくれるからだ。
電動モードでの人工的な音が気になるだけだ。それは、特にフォールディングルーフを開けたり、ハードトップの蓋を外して運転したりしているときに、熱を持ったベアリングのような音がする。
テクニカルデータ: ジープ ラングラー4xeルビコン
● パワーユニット: 4気筒ターボ、フロント横置き+電動モーター ● 排気量: 1995cc ● システム最高出力: 280kW(380PS)@5250rpm ● システム最大トルク: 637Nm@3000rpm ● 駆動方式: 全輪駆動、8速AT ● 全長×全幅×全高: 4882×1894×1901mm • 乾燥重量: 2383kg • トランク容量: 533~1910リットル ● 最高速度: 156km/h ● 0-100km/h加速: 6.6秒 ● 燃費: 24.3km/ℓ ● CO2排出量: 94g/ℓ ● 価格: 71,000ユーロ(約930万円)
結論:
ジープは、「ラングラー4xe」をスタイリッシュなシティオフローダーとして販売したいと考えている。
しかし、「ルビコン」が混雑した都心を走るには適していない部分もあることは理解しておくべきだ。
AUTO BILDテストスコア: 2
「ジープ ラングラー」の中でも、特別にオフロードに特化し、辛口に仕上げたモデル、それが「ルビコン」だ。名前からして、「ルビコン」なのだから、ほかのモデルよりも悪路での走行性能が優れていなければ意味がない宿命を、最初から与えられたような一台である。
そもそも普通の「ラングラー」だって、一般人には使い切れないほどのオフロード性能を与えられているはずで、それで事足りない人など、数パーセント程度の存在だろう。
そう考えると「ルビコン」も一種の付加価値を与えるグレード展開でもあるわけだが、その内容は極めて本物で、普通に使うには、「ルビコン」ではないモデルのほうが安楽なことはいうまでもない。
そんな「ルビコン」もプラグインハイブリッドになってしまうのか…。世の中の趨勢とはいえ、これほど悪路に特化したハードなグレードさえも電気のパワーを与えられるという現実には複雑な気持ちを抱く。だがこういう方向に進化することで、「ジープ ラングラー」のような自動車が延命できるのであれば、喜んでこのプラグインハイブリッドモデルも歓迎するべきなのだろう。街中でアウトドアのファッションとして、「ジープ」を使用する場合には、プラグインハイブリッドのほうが適しているのではないか、と考えれば、これは良いハナシなのである。そういう使い方のユーザーが圧倒的多数なのだから。
Text: Thomas Rönnberg
加筆: 大林晃平
Photo: FCA