初テスト 燃料電池車は電気自動車の代替モデルとなれるか? 果たしてトヨタ ミライの未来は? 初試乗その性能と評価
2021年7月22日
新型トヨタ ミライが、燃料電池で他のメーカーに差をつける。
新型トヨタ ミライで、燃料電池はようやく定着するはずだ。我々のテストが示すように、今度はうまくいくかもしれない。以下にそのレポートをお届けする。
ドイツは電気自動車フィーバーで、各メーカーが参加している。
みんな・・・?
いや、必ずしも、そうではない。
トヨタは少なくとも、バッテリー式電気自動車のトレンドにそって、燃料電池車「ミライ」の新バージョンを発表した。
これもある意味電気自動車だが、電気の供給元が異なる。
我々は2015年の初代モデルを覚えている。
型破りなスタイリング、素朴な内装、8万ユーロ(約1,050万円)近い価格・・・。
そのため、最も売れた年でも、ドイツの顧客の手に渡ったのは、わずか67台(!)だった。
テスラは同時期に9,000台以上の「モデル3」を販売したというのに・・・。
デザイン面でMIRAIは大きく前進した
新型「ミライ」は、より多くのお客様を惹きつけるために、大改良された。
それを物語るのがデザインだ。
5メートル近い大きさの新型車は、よりまとまりのあるデザインになっており、ハッチバックや水平方向のテールライトは、どこか「アウディA7」を彷彿とさせる。
しかし、室内には、見慣れたトヨタの世界がまだ待っている。
ギザギザの計器類の外観は議論の余地があるが、出来栄えの良さは格別だ。
リアは、下から見ると水素タンク、上から見ると傾斜したルーフラインにより、操縦性が大きく制限されている。
リアに入るためには、いくつかの曲芸が必要で、その後、頭がルーフの凹みにはまり込んでしまう。
5番目シートは、巨大なセンタートンネルのため、子供にしか使えない。
燃料満タンで650kmの走行が可能
その走行性能は、後輪駆動車用に設計された大型の「GA-L」プラットフォームを採用しているため、何よりも優れたハンドリングを実現している。
「ミライ」は今、「プリウス」よりも「カムリ」に近い存在だ。
非常に静かでスムーズな走行を実現している。
古典的な電気自動車と異なるのは、そのやや抑制された気質だ。
急激に走り出すのではなく、持続的かつ直線的にプッシュしていく。
悪くはない。
快適なシートだが、横方向のサポートがやや弱いし、ほとんどコミュニケーションのないステアリングはコーナリングを奨励しない。
だから、時速175マイル(約281km/h)に制限されている最高速度でも我慢できる。
そして、何より、トヨタは航続距離を大幅に改善した。
3つのタンクには合計5.6kgの水素が充填されている。
約束された消費量が0.79〜0.89kg/100kmであることから、約650kmの航続距離を実現している。
給油もガソリンを入れるのとほぼ同じスピードで、バッテリー充電とは比べ物にならないほど速い。
また、購入を検討している人にとっては、価格の引き下げがさらにうれしい要素なはずだ。
「ミライ」の価格は63,900ユーロ(約843万円)からとなっているが、その金額は以前より15,000ユーロ(約200万円)も安くなっているからだ。
加えて、環境ボーナスの対象にもなる。
もしかしたら、いよいよ燃料電池車の時代が到来しつつあるのかもしれない。
「ミライ」は、まさにそう感じさせる1台だ。
テクニカルデータ: トヨタ ミライ
● パワーユニット: 燃料電池、電動モーター ● システム最高出力: 134kW(182馬力) ● 最大トルク: 300Nm ● 駆動方式: 後輪駆動、1速トランスミッション ● 全長×全幅×全高: 4975×1885×1470mm • 乾燥重量: 1900kg • ラゲッジコンパートメント容量: 321リットル ● 最高速度: 175km/h ● 0-100km/h加速: 9.0秒 ● タンク容量: 5.6kg H2 ● 燃費: 0.79kg H2/100km~ ● CO2排出量: 0g/ℓ ● 価格: 63,900ユーロ(約843万円)より
結論:
有害な電池を作らず、たったの5分で燃料補給。
燃料電池のアイデアは、「ミライ」そのものと同様に説得力がある。
問題はインフラ不足だ。
まだ給油施設&ステーションが少ない。
しかし、それはトヨタの問題ではなく、自動車業界全体、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、そして全世界的な課題なのである。
AUTO BILDテストスコア: 2-
今度のミライはかなり良い、というのが実際に乗ってみた人たちの共通する評価である。そもそも水素自動車を「普通に」市販していることだけでも驚くべきことであり、評価されるべきポイントではあるのだが、それでも自動車の基本性能としても大きな進化をとげているらしい。いっそのことこれをレクサスのラインナップとして売ったらいいのに、とも思うし、今の時代のクラウンとはこれなのではないか、とも思うが、とにかくトヨタの実力が凝縮した自動車が「ミライ」であることは間違いない。
ちょっとショックだったのは、前のモデルのドイツでの販売成績ではあるが、この点に関しては水素ステーションなどインフラ整備の部分が大きく影響しているからやむを得ないだろう。
先日のレースに参加した、「ピストンを使った」水素自動車も、「ミライ」のようなEV水素自動車も、これからの世界を考えた時に、その役割の大きさは図りえない。どうかこの技術がわが国の自動車産業を引っ張っていけますように、という願いをこめて、今回の「ミライ」の進化は絶賛に値する。
Text: Malte Büttner
加筆: 大林晃平
Photo: Toyota