コンコルソ デレガンザ ヴィラ デステ2017&2018: ハイライトとウィナーズ… Part2

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息をのむようなゴージャスなクラシックカーたち。
コンコルソ デレガンザ ヴィラ デステ2017と2018の最も印象的で美しい受賞車たち。

このアルファロメオ6C 1750グランスポーツ(1930)もまたシチリア島に存在した。そこで、この新しいオーナーは、6Cを追跡し、発見し、希少なエンジンを修復し、大部分が失われたボディを復元させた。数年にわたる修復の後、今年、このスポーツカーはヴィラ デステに初めて登場した。スピード感あふれる写真からは、躍動感が伝わってくる。
このピニン・ファリーナ(Pinin Farina)のデザインしたボディを身にまとったジャガーXK120 SE(1954)という非常に珍しい組み合わせの1台は、アメリカの輸入業者マックス ホフマンの発案と情熱によって実現した。バンパーの形状とグリルの大きさとが絶妙にバランスされている点が、ピニン・ファリーナたるゆえんである。
ドイツ人コレクター、クラウス オットー レーカー博士は、ポルシェカレラGTS(1964)をお披露目した。彼はこのレーストラックのみならず、公道上でも納得する性能を発揮する最後のオールラウンドなスポーツカーを、1978年以来所有し続けている。そのためにボンネットには直接、ドイツのナンバープレートが貼り付けられている。ドイツからコモ湖まで自走してきたのであろうか。
コンコルソ デレガンザ ヴィラ デステのスペシャルカテゴリーは、「モダンコンセプトカー」クラスだ。このクラスには、デザイナーのフラビオ マンゾーニによる非常に高い評価を得たフェラーリSP38が参加した。フェラーリSP38は、2018年に一台だけ作られたワンオフモデルであり、ということはつまり世界中にこの一台だけが存在している。ベースになったモデルは488GTBである。
これ以上の豪華さとスタイルを想像するのは難しい。大きな公園のあるコモ湖のほとりにある高級ホテル、ヴィラ デステは、有名で伝統的なコンコルソ デレガンザに理想的な環境を提供する。100年以上にわたり、世界中の皇族や世界的に名だたるセレブが訪れ続けている。たとえば、1925年には、アルフレッド ヒッチコック監督が彼の最初の映画のシーンをここで撮影したというのは有名な話だ。ずらりと係留されたリーバ製パワーボートと、湖上プールが贅沢さの証である。
華やかな世界とは、こういう世界のことであろう。
2017年には、アルファロメオ ジュリエッタSSクーペのプロトタイプが 「ベストオブショー」賞と最も美しい車に贈られるオーディエンスカップ、「トロフェオBMWグループイタリア」の2つを受賞した 。
ベルトーネ時代にフランコ スカリオーネがデザインした車は、今日、コレクターのコラード ロプレスト氏が大切に所有、愛用している。なんとも誇らしげなオーナー。
その他にも重要な賞が授与された。審査員が伝説的な「コッパ デ オロ ヴィラ デステ(Coppa d ‘Oro Villa d’Este)」賞の勝者を土曜日の午後遅く(2017年5月27日)に発表したとき、会場の人々は大きく驚いた。会場に並ぶ参加車の中でも、最も小さくて最も奇妙なクルマが最も大きな賞を受賞したからだ。クラシックカーの伝説的なビューティコンテストで、観衆は最も美しい車に、1935年ルラーニ ニッビオを選んだのだった。
シングルシリンダー(単気筒250 cc)は、1930年代にジオヴァンニ “ジョニー” コンテ ルラーニによってデザインされた。彼の家族は大きな金のトロフィー「コッパ ドーロ(Coppa d’Oro)」を受け取った。美しいモザイクタイルの上での授賞式、嬉しそうな笑顔が素晴らしい。
2017年のテーマは「80日間世界一周」。ドイツ語では 「記録づくしの時代の航海」だ。ジュール ヴェルヌの書いた1873年の小説は、現代のモビリティの始まりを指しているかのようだ。
クラシックカーを調べる審査員たち。オリジナルの度合い、保存状態、そしてその歴史的価値などなど、を検証する。
ピニン・ファリーナ(Pinin Farina)デザインによるこの黄金のフェラーリ250 GTベルリネッタSWBコンペティツィオーネ(1960)は、審査員たちによれば、コモ湖の「ベスト アイコニックカー(Best Iconic Car)」だとのこと。珍しいカラーリングだ。
そのため、「トロフェオ ヴランケン ポメリー(Trofeo Vranken Pommery)」賞が与えられた。この車もきちんとナンバープレートのつく、公道自走車輛である。
この1960年代のアバルト1000ビアルベーロ レコルド(デザイン by ピニン・ファリーナ=Pinin Farina)は、すでに60歳だ。にもかかわらず、この風景の中ではまるで宇宙から来た生物のようだ。戦後最高の評価を得た「トロフェオASI(Trofeo ASI)」
賞という栄誉をもって祝福された。もちろんこの車は、最高速度を記録するための車であり、そのために当時最高の空力的ボディを身にまとっている、ライトスタッフなのである。
コモ湖で最もエレガントなロールスロイスは、1926年にチャールズ クラークの手に寄って作られたボディを持つ、このファントムⅠブローアム デ ヴィルが審査員たちによって選ばれた。オーナーはオーストラリア人のクリス ミーニー氏だ。グルガパンツとツイードのジャケットがなんともブリティッシュではないか。
自動車のインテリアは、コモ湖のビューティコンテストでは常に重要な要素となる。2017年のコンコルソ デレガンザで疑う余地もなく、もっとも素晴らしいインテリアに選ばれたのも、このロールスロイス ファントムⅠブローアム デ ヴィルのものだった。 象嵌細工と思われるが、この写真だけでは、由緒ある洋館の豪奢な家具にしか見えないし、その上の時計なども自動車の時計とは思えない形状である。もちろん彫金細工の飾りは走行中に転がってしまわないように固定されているのだろう。最初のオーナーは、このクルマを彼の妻に贈った。彼のつけたクルマの愛称は、「愛の怪人(Phantom of Love)」だ。
グースバンプス(鳥肌が立つ)。1962年のシェルビー コブラ427は、専門家たちの意見によれば、組み立てられたブリキの美しさの「最もエキサイティングなデザイン」であり、「トロフェオ オート&デザイン」を受賞した。明るいボディカラーが、北イタリアの光を浴びて明るく美しい。オーナーも嬉しさのあまり、白い歯をつい見せる。
ギアのデザインした黒のL 6.4クーペ(1962)は、最も美しい形の卓越した職人技のお手本だ。「トロフェオ ジュリアス ベエア(Trofeo Julius Baer)」賞を獲得した。ボディの仕上げも美しいが、前後とも湾曲したウインドーの形状も卓越した職人技が求められる。
最後に愛情のこもったひと磨きを。ローマナンバーのアルファロメオに、最後のひと化粧。
クルマだけがクラシックショーのために綺麗に着飾るわけではない。
VOGUEといった、高級女性雑誌のワンカットのようだ。
1932年ヴォアザンC23シャラント(ジャクエス グラフ ヴルステンベルガー コレクション所属)の高貴なラジエターキャップは、奇妙でありながらも非常に建設的な美しさを備えている。ヴォアザンはもともと飛行機メーカーであったため、マスコットも鳥をモチーフとしてアールデコ調にした形状であるし、その下の羽根のモチーフにもAVIONの文字が見える。
「ベントレー ボーイ」として知られるヘンリー “ティム“ バーキン卿がステアリングを握った「バーキンベントレーバウワー」として知られるベントレー4½リッター。これは、スーパーチャージャーを装備した最初のベントレーのレーシングカーであった。ブルックランズ サーキットでのラップレコードとともに、その時の平均速度は222km/hを超えていたともいわれる。しかし、今から100年近くも前に、平均速度222km/hとはどんなに豪胆で、勇気がいったことだろう。想像もつかない。
1958年からマセラティ300Sを駆動するこの3リッター6気筒はエンジンそのものも美しい。そしてそのエンジンはいささか騒がしいが素晴らしい存在だ。スターリング モスやペドロ ロドリゲスなどの有名なレーサーに成功を与えたのだから。
レーシングカーとはこういうクルマのことをいうのだ、という模範解答のようなデザイン。そしてその実態は、公道走行可能な、当時のフォーミュラ1カー以外の何物でもなかった。
1920年に製造されたバロット3/8 LCは、エキサイティングな物語を持っている。それは、このクルマが1921年にイタリアで開催された最初のグランプリに勝利したマシンであるということだ。この勝利は、当時最強だったフィアットのマシンたちにとっては屈辱なことだった。その日からあと少しでちょうど100年が経過する。歴史を物語る様々な小物たちにも注目。
時に美しさは、はかないものだ。そのことはこの1956年マセラティA6G 2000グランスポールが証明する。フルアによってデザインされたこの車は、2016年初頭に歴史を刻んだ。当時、パリの‘Baillon’コレクションの一部として競売にかけられた。新しいオーナーはすべての損傷部分には手を付けず、そのままで運転できるよう修復したのだった。そしてその修復方法は、正統的である種の正解の方法であるともいえる。
1952年にアメリカのデザイナー、ジェイ エヴェレットによって作成され、そのデザインが絶賛された、明るいブルーのアストラクーペ。エヴェレット製のボディはアルミニウムによって作られている。ちょっとデザインそのものは、バットマンが乗っていてもおかしくなさそうな雰囲気ではあるが。
非常に裕福な顧客のために、手作業で作られた新しいロールスロイスは、参加者から多大なる注目を浴びた。コンコルソ デレガンザで発表されたモデルは、「スウェップテール(Sweptail)」と呼ばれる。このモデルは、もちろん世界に一台だけの特別な車輛である。他のどの車にも似ていない形状のリアウインドーには、オーナー専用の帽子を置くスペースが用意されている。ちゃんとナンバープレートがついていることに注目。
誰もがこのクルマを美しいと思ったわけではない。しかし、結局のところ、このわがままなロールスロイスは、発注したオーナーを喜ばせたことは間違いない。ちなみにファントムクーペベースのこの車の価格は、日本円で約14億円。それにはセンターコンソールのドンペリニヨン収納ボックスと、フルートグラス2客も含まれる。

Text: Thomas Wirth
Photos: BMW Group Classic

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