【ひねもすのたりワゴン生活】コットンテントの誘惑 その7

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目覚めたのは9時過ぎ。蒸し暑さから解放されたコットンテントの朝

空前のブームで、各地のキャンプ場はカラフルなテントで埋め尽くされています。そのほとんどは軽くて強靭な最新素材ですが、コットンの魅力に惹かれる人々も…。私もそのひとりで、十代の半ばに出会って50年近く…今も、この少し手間のかかるパートナーをクルマに積み込んで、至福のひとときを過ごしています。

 さて、再びコットンテントの話…。
 オアシスの朝は、それまでとまったく違っていた。コットンに囲まれた空間で迎えた最初の朝、友人たちの声で目覚めると、時計は9時を大きく回っていた。
 驚いた。生地を透過する日差しは夏そのもので、外の強く眩い太陽光を想わせたけれど、身を横たえていたコット(折り畳みベッド)は、すがすがしく心地よかった。そのまま瞼を閉じれば、また眠りに誘われそうだ。しかし、それがコットンという素材のなせる業であることにすぐ気づいたわけではなかった。
 その朝がたまたま涼しかったのかも…と、外に出てみると、友人たちはコーヒーを飲みながらタープの陰で涼んでいる。
 「よく寝ていられるなぁ…」と冷やかした1人が、入れ替わりでテントの中に入っていった。
 しばらくして出てきた彼はひと言。「なんだか暑くない…」。その不思議そうな表情がすべてを語っていた。
 コットンだ。コットンという素材の特性なのだと納得した。
 朝食を終え、缶ビールを持ってテントに戻ってみた。コットに寝転って、本を読んだり、入ってきた仲間と無駄話をしたり……それはそれは心地よかった。結局ランチタイムまでうつらうつらと過ごすことになってしまったが、食事の用意をしなくてもよいのなら、夕方までのんびりしていただろう。
 熱がこもらない。湿気がたまらない。この日、私はコットンテントの真価を知った。
 雑誌でこのテントと出会った頃、私を虜にしたのは、デザインや雰囲気、そして、大人の男たちが見せる時間の過ごし方だった。コットン素材がもたらす爽やかさ、快適さはスチル写真と活字では感じることができなかったのである。
 しかし、ここで断っておかなければならないのは、私のキャンプのスタイルと大きく関係しているという点だ。キャンプにはいろいろな楽しみ方があって、子ども連れの若いご夫婦なら、朝早くから海水浴や川遊びに興じるだろうし、近くのレジャー施設に出かけるかもしれない。
 若いカップルならば近くの山へトレッキングに出かけたり、野鳥好きはバードウォッチングを楽しんだり、釣り好きは近くの川や湖で竿を振るだろう。つまり、日中テントに留まらなければ、その恩恵もさほど大きな意味を持たないかもしれない。
 私はテントの近くでのんびりと時間を過ごすのが好きだ。仲間と行く時も、釣りだのドライブだのと出かけて行く彼らを見送ったあとは、タープの下で居眠りしたり、前夜の食器を洗ったり、焚火の灰を片づけたりする。
 ランタンの光に照らされる美しさを想いながら洗ったワイングラスを木陰で磨き上げるのは楽しいし、残りものをどんな料理に転じてやろうかと頭をひねるのも心が躍る。10時間後を楽しみに、寸動鍋にスープストックの具材を放り込んで火の具合を眺めているのもまた一興だ。
 いずれにしても、こんなキャンプだからこそ、蒸し暑さに邪魔されず、寝坊が許され、昼のひと時を怠惰に過ごせるオアシスがこの上ないパートナーになったのである。

蒸し暑さで寝ていられない…コットンテントはそんな朝から私を解放してくれた
コットンテントを愛する友人たちは皆、同じことを口にする Photo by Gen Kitamura

【筆者の紹介】
三浦 修
BXやXMのワゴンを乗り継いで、現在はEクラスのワゴンをパートナーに、晴耕雨読なぐうたら生活。月刊誌編集長を経て、編集執筆や企画で糊口をしのぐ典型的活字中毒者。

【ひねもすのたりワゴン生活】
旅、キャンプ、釣り、果樹園…相棒のステーションワゴンとのんびり暮らすあれやこれやを綴ったエッセイ。