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「bb CW 311」メルセデスはこのクルマのことは何も知らなかった!

2020年3月6日

bb CW 311 (1978):6.3リッターV8、375ps、ガルウィングドア。1978年、チューナーの「bb」は、メルセデス300SLの理想的な後継モデルとしてこのCW 311を作成した。

このガルウィングを備えたスペシャルモデルは1987年に、チューナー“bb”のオーナー、ライナー ブッフマン(Rainer Buchmann)によってデザインされ、ポルシェの開発エンジニアだったエーベルハルト シュルツ(Eberhard Schulz)の手を借りて開発された。主にポルシェとメルセデスのパーツを使って作られた。メルセデスのマーク、スリーポインテッドスターもノーズに備えていたが、当時メルセデスは、まったくこのクルマのことを知らなかった。

メルセデスエンジン+ポルシェパーツ=高性能

「CW 311」はスペースフレームにまたがるグラスファイバー製ボディを備えていた。エンジンはメルセデス600に搭載されていた6.3リッターV8をAMGがチューンナップしたものを搭載し、ミッションはZF製5速トランスミッションを介してリアタイアを駆動した。そしてテールパイプはレーシングマシンの「メルセデス 300 SLR」同様、左のリアホイールの手前に装着されていた。

AMGがチューンしたV8エンジンから生み出される375psと580Nmは、「CW 311」を0-100km/hは4.8秒、0-200km/hは12.7秒で加速した。トップスピードは320km/hと言われていたが、本当かどうかこの件に関しては最後まで公にはされなかった。ステアリング、イグニッションロック、そしてスピードメーターのユニットは911から、サスペンションは928からの転用と、ポルシェのパーツも使われている。

ルーフの上のこぶは、ペリスコープミラー用のケースであり、ここからリアの視界を確保する。「bb」のロゴがなんとも懐かしい。

CW311は日常使用にも適していた

「CW 311」のルックスは、「300 SL」のオマージュとして同じくガルウィングを備えていたメルセデスのテストカー、「C111-1」と「C111-2」に類似しているが、その名前は空気抵抗係数がCw 0.311であることに由来する。その超スポーティなルックスと、すばらしいドライビング性能とともに、「CW 311」は毎日の使用にも適していた。パッセンジャー用には驚くほどのスペースを提供し、性能の良いエアコンも彼らに快適さを与えた。トランクも十分実用になりそうな大きさだった。ルーフにはペリスコープリアビューミラーが装着されていて、ドライバーに十分なリア視界を提供していた。ホワイトパールカラーのペイントはメルク社からの世界初の製品で、「CW 311」に初めて使われた。(その後、同社のフラットノーズ911などにも使われたものである)

唯一のプロトタイプは失われた

「メルセデス 300 SL」の後継モデルという想定で作られた「CW 311」はラジエターグリルにスリーポインテッドスターを取り付けていた。だが問題は、このクルマが発表するまで、メルセデスがこのクルマに関して何も知らなかったことだ。つまりスリーポインテッドスターはメルセデス純正、とはいえなかったのである。

「bb CW 311」。ラジエーターを抜けた空気はフロントガラスに向かって流れるのがわかる。

ショーを訪れた観客たちが「CW 311」を熱狂的に歓迎したために、メルセデスはこの車(と作ったメーカー)に制裁を課することをあきらめ、逆に祝福した。その結果、「CW 311」は、古今東西、メルセデスが開発しなかったにもかかわらず、スリーポインテッドスターを備える唯一のクルマとなったのである。しかし、結局「CW 311」は1台きりのプロトタイプに終わり、現在の動向や所在は知られていない。開発にたずさわったエーベルハルト シュルツはその後1982年にスポーツカーブランド、イズデラ(Isdera)を起ち上げ、30台の「インペレーター 108i(Imperator 108i)」を作った。そしてその「インペレーター 108i」は紛らわしいほど「CW 311」に似ていたのである。

Text: Moritz Doka
Photo: Werk