このクルマなんぼ? 日本人が購入、所有した、ほぼ新車状態のマクラーレンF1がオークションに その驚きの想定落札価格は?

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ほぼ新品の状態のマクラーレンF1(1995年)は、オークションで、1,500万USドル(約16億8千万円)以上の値段がつく可能性がある。ペブルビーチでおこなわれる、「Carweek 2021」の一環として、新品同様の状態のユニークなマクラーレンF1が米国でオークションにかけられる。1,500万ドル(約16億8千万円)という推定落札価格は、それでもあまりにも低すぎる設定だという声もある。以下に、すべての情報をお届け。

1千5百万USドル(約16億8千万円)。
これでもまだ安いと思えるのであれば、それは、それだけ特別なクルマなのだろう。
「マクラーレンF1」は、1989年から1992年にかけて、巨匠ゴードン マレーによって開発され、現在のハイパースポーツカーの先駆けとされているだけでなく、世界で最も魅力的で、安定した価値を持つ車のひとつでもあり続けている。
そして8月におこなわれる、「Carweek 2021」の一環として、オークションハウス、グッディング・アンド・カンパニーは、ユニークな「マクラーレンF1」を出品する!

シャシー番号029(VIN SA9AB5AC9S1048029)の「マクラーレンF1」は、いくつかの点でユニークな個体だ。
第一に、ブラウンとライラックの中間色である「クレイトンブラウン」に塗装された唯一の「F1」であること。
第二に、シャシー029は、1995年の納車以来、わずか387kmしか走っていない、事実上の新車であること。
その走行距離数は、前オーナーが、このコレクターズアイテムを、定期的なメンテナンス時にのみ、走行していたことによるものだ。
言うまでもなく、ヒストリーは完全に記録されて、残されている。
公式資料によると、「F1 029」は25番目に工場を出発した車両だとされる。
その資料によれば、1995年に、日本の最初のオーナーに引き渡され、長年にわたり、プライベートコレクションとして存在していた。
その後、あまりメディアに取り上げられることなく、アメリカの現オーナーに売却されたという。
その際の価格は不明だ。
珍しいブラウンカラーの「F1」は、ほとんど乗られていないものの、定期的にメンテナンスは行われていた。

センターに配置されたシートポジションは、F1でのドライビング体験を特別なものにしてくれる。内装は新品同様の状態だ。バックスキンの内装なども完璧な状態だ。

106台しか製造されなかったマクラーレンF1

「マクラーレンF1」が現在、世界で最も人気のあるクルマのひとつである理由はたくさんある。
本来ならば、350台が生産されるはずだった「マクラーレンF1」は、1993年から1997年の間に106台しか販売できなかったのだ。
この106台のうち、公道走行可能なものは78台で、残りの28台は純血種のレーシングカー「F1 GTR」となっている。
ちなみに現在では、少なくない数の「F1 GTR」が公道用に改造されて登録されているという。
また、ゴードン マレーが開発した「F1」は、現代のマクラーレン初のスーパースポーツカーであるだけでなく、一切の制限を設けずに開発されたモデルでもあることは言うまでもない。

BMW製の自然吸気V12エンジンを搭載したマクラーレンF1

最新作「T.50」を発表したばかりのマレーだが、「マクラーレンF1」では、究極のスポーツカーを目指した。
そのために、彼は多くの慣習を破った。
例えば、「F1」は3人乗りで、中央にドライバー、そのやや後方にオフセットされたかたちで、右と左に乗員が座るようになっている。
また、「F1」のボディは、1990年代初頭に初めて採用された、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)でできている。
エンジンには、マクラーレンがBMW製の6.1リッター自然吸気V12エンジン(S70B61)を採用し、「F1」では627馬力、650Nmを発揮した。
6台しか製造されなかったルマン用マシン、「F1 LM」では680馬力を発揮した。
パワーは6速マニュアルギアボックスを介して後輪に伝達され、「F1」は1,138kgいう軽量化と相まって、圧倒的な速さを発揮した。
具体的には、「F1」は長い間、世界最速の市販車であったとさえ言える。
1998年には、現存するプロトタイプの「XP5」にレブリミッターを追加して、391km/hという驚異的な最高速度を記録しており、現在でも自然吸気エンジンを搭載した車としては世界最速を誇っている。

コレクターズアイテムにふさわしく、ラゲージセット、ツールバッグ、タグ・ホイヤー製の腕時計などの付属品もすべて含まれている。欠品も傷みもない。

高値で取引されるマクラーレンF1

「F1」のストックは、そのほとんどが長年にわたってコレクターの手元にあって、大切に保存されている。
ブルネイのスルタン国王は、10台のマクラーレンF1を注文したと言われているが、そのうちの1台(シャシーナンバー014)だけが、「国外逃亡」したことが証明されている(つまりまだ9台を所有しているのだ!)。
このように、「マクラーレンF1」が公式にオークションに出品されるというのは、絶対的な例外といえよう。
したがって、ここ数年から数十年の間に、さまざまな「マクラーレンF1」がオークションで繰り返し記録的な価格を達成しているのも、決して不思議なことではない。
2015年8月には、シャシー番号073(LMキットを後付けしたもの)が、1,375万ドル(約15億4千万円)で競売にかけられた。
わずか2年前には、シャシー番号018(同じくLM仕様にレトロフィット)が、1,800万ドル(約20億円)という驚異的な価格で落札されている。
その額に、手数料を含めた、最終的な落札価格は、1,980万米ドル(約22億円)にも達した。

推定価格は1,500万USドル(約16億8千万円)

したがって、今回のシャシーナンバー029の「マクラーレンF1」が、予想落札価格である、1,500万米ドル(約16億8千万円)を、大幅に上回ることは十分に考えられる。
なぜなら、このカラーの新車状態の「マクラーレンF1」は、世界に1台しかなく、しかも1995年当時のままのグッドイヤータイヤを履いていて、オリジナルの書類や付属品もすべて揃っているからだ。
サービスブックレットとオーナーズマニュアルに加え、タイタンツールセット、ファコムツールトロリー、オリジナルスーツケース/バッグセット、「タグ・ホイヤー」の腕時計、そして「Driving Ambition」と題された書籍が付属している。
伝説の「マクラーレンF1」は、2021年8月14日~15日に開催される「ペブルビーチオークション」で競売にかけられる予定になっている。
価格もさることながら、これほどの「マクラーレンF1」が世の中に登場することは、もう二度とないだろうという意味でも貴重である。

史上最高のロードゴーイングスポーツカー、それはこの「マクラーレンF1」なのではないだろうか。そして「T.50」が登場した今でも、その評価は少しのゆるぎもないものだと私は信じている。
一切妥協も制限もせず、採算度外視で生み出された空前絶後のスーパースポーツカー、そんなとんでもない自動車は二度と世の中に出てこない。そして今回の一台は、そんな世の中に出てこない「マクラーレンF1」の中でも、もう二度と世の中に現れないような程度の一台。ファコムの工具セットからタグ・ホイヤーの時計まで欠品なく、今までずっと整備され続けたというのに、走行距離はたったの387km(!!!)。
こんなしぶいボディカラーと、実に落ち着いたセンスの内装をわざわざ選択したというのに、オーナーは飾っておいただけで、一度もちゃんと乗っていなかったのだろうか。
あるいはまだ他にも、別の「マクラーレンF1」を所有していて、そちらを乗るためにしていたのだという予想もできるが、いずれにしろ、こんな一台はもう二度と世の中に現れないことも想像がつく。
そういう意味では、16億円以上と予想される落札価格は妥当な気もするし、この価格よりも、もっと上の金額で落札されるだろうとも推測する。こんな新車の「マクラーレンF1」に、これから乗ることのできるオーナーが本当に羨ましいが、もし自分だったらもったいなくて、距離を伸ばせないまま、距離計を刻む自信はない。
8月と言われるオークションの続報をまたお伝え出来たら幸いである。

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Gooding & Company