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【初テスト】究極のラグジュアリーGT ベントレー コンチネンタルGT V8マリナーに初試乗 全情報!

2021年7月4日

普通のベントレーでもまだ豪華さが足りないときには? ベントレー コンチネンタルGTマリナーという究極の一台がある。我々はベントレー コンチネンタルGT V8マリナーをテストした。おまけ: マリナー コーチビルドのプランを紹介!

私にとって、「ベントレー コンチネンタルGT」は、例えば、「メルセデスAMG S 63」や「BMW M8コンペティション」よりも、さらにラグジュアリーな存在だ。素材選びや造りの良さという点では、長年英国勢は別格だが、ベントレーは「コンチネンタルGTマリナー」で、さらにラグジュアリー感と個性をさらに高めている。将来的には、この伝統的なブランドは、コーチビルディングの分野でも、その存在感と実力を発揮したいと考えている。その最初のモデルは、12台限定の「バカラル(Bacalar)」だ。

自動車の分野でも、個性化の重要性が高まっている。この傾向は、最近発表された、「ポルシェ エクスクルーシブ マニュファクトゥール(Porsche Exclusive Manufaktur)」事業の拡張にも表れている。さらに超高価格帯では、ロールス・ロイスの「ボートテール」(実に30億円超である)や、ブガッティの「ラ ヴォワチュール ノワール」のような、超限定生産シリーズやワンオフモデルも求められている。このようなユニークなプロジェクトでは、価格は重要ではない。重要なのは、独占性(排他性)だ。ベントレーもこのことを十分に認識しているからこそ、2020年に、「ベントレー マリナー」のサブブランドを拡大したのだった。その焦点は、「マリナー クラシック」、「マリナー コーチビルト」、「マリナー コレクションズ」の3つのセグメントにある。クラシックセグメントでは、伝説の「ブロワー(Blower)」などの歴史的モデルが、いわゆる「コンティニュエーションシリーズ」の一環として細部までこだわって再現されているが、コーチビルドセグメントは特に興味深い。
最初のプロジェクトは、12台限定の「バカラル」だ。ソフトトップを持つ高級コンバーチブルだ。
「バカラル」の外観は、「コンチネンタルGTC」に似ているが、他のモデルからのボディパーツは一切使用していない。古典的なコーチビルディングのスタイルで、ほとんどすべての部品が、「バカラル」のために特別に手作りされている。たった12台の小さなシリーズのために、大変な努力が払われているのだ。

659馬力のバカラルは12台しか製造されず、言うまでもなくとっくの昔に完売している。

ベントレーはワンオフモデルを否定しない

なぜちょうど12台の「バカラル」が作られるのかという質問に対して、「マリナー」のディレクターであり、自身熱狂的な自動車愛好家でもある、ポール ウィリアムズは、インタビューの中で、「20台、30台のバカラルを販売することも可能でしたが、少数で独占性こそが重要なのです」と明確に答えている。計画では、1年間、毎月1台ずつ「バカラル」を納車し、実際に659馬力のロードスターを生産開始するのは約6カ月後からだという。また、未来の「バカラル」オーナー12人のうち、ほぼ半数が、新規顧客であるという事実も注目に値する。これは、このようなプロジェクトが、新しいターゲットグループにも届くことを示している。また、ベントレーは将来的に、「マリナー コーチビルト」セグメントを、ワンオフモデルの製作で、さらに拡大していく決意を固めている。

GT Mullinerの特徴は以下の通りだ。
● セルフレベリングハブキャップ付き22インチホイール
● 「ダブルダイヤモンドマトリックス」ラジエターグリル
● シルバーのエクステリアミラーキャップ
● 3トーンインテリア(希望に応じて)
● ダイヤモンドミルド仕上げのセンターコンソール
● ブライトダイヤル付きブライトリング製クロック
● イルミネーション付きマリナードアシルプレート
● ベースプライス: GT V8マリナーは216,800ユーロ(約2,900万円)より。

GTマリナーの特徴は?

通常の「GT」と比較して、「マリナー」にのみ採用されている新しい10本スポークのホイールがすぐに目につく。22インチの専用ホイールだが、ツートンカラーの仕上げにより、さらに大きく見え、エレガントなクーペによく似合っている。また、「B」のロゴが常に直立しているハブキャップが新たに加わった。ロールス・ロイスが長年にわたってすべてのモデルに採用してきた機能だ。

22インチのホイールは、マリナーのみに設定されている。その後ろにはラジエターグリルに合わせたトリムエレメントが付いている。

試乗したベントレー コンチネンタルGT V8マリナーは243,315ユーロ(約3,260万円)だった

もちろん、ホイールが「マリナー」モデルのすべてではない。「マリナー」のフロントは、いわゆる「ダブルダイヤモンドマトリックス」スタイルの新しいグリルで飾られていて、このパターンは「マリナー」専用のもので、フェンダー下部のトリムエレメントにも見られる。「マリナー」モデルは、シルバーのエクステリアミラーキャップ(アウディSモデルのものと同様)で識別できる。このように、見た目の変化はごくわずかだが、「マリナー」は従来の「GT」と明確に区別されている。ここで、243,315ユーロ(約3,260万円)の試乗車を手渡してくれた係員にお礼のご挨拶をすると、「現在、GTマリナーはこの1台のみで、ホイールやラジエターグリル、ミラーキャップなどのスペアパーツはありませんので、生卵のように扱ってください」との言葉とともに手渡された。もちろん、それは名誉なことではあるが、最初のメーターを見たときの安心感は、必ずしも得られるものではない。

3トーンインテリア: ベージュとダークブルーを基調とし、レッドのディテールがアクセントになっている。

しかし幸いなことに、「GTマリナー」のコックピットは、すぐにくつろげる場所になっている。試乗車は ベージュ、ダークブルー、レッドの3色のレザーを意味 する「アマルフィ」と「インペリアルブルー」のカラースプリットだった。この組み合わせが気に入らないという人のために、ベントレーは別の配慮もしている。「GTマリナー」のインテリアには、合計8種類の3色のコンセプトが用意されており、ほぼ無限の組み合わせの中から、購入客が簡単に選択できるようになっている。

V8エンジンまたはW12エンジンを選択できるGTマリナー

550馬力の「GT V8マリナー」のベース価格216,800ユーロ(約2,900万円)には、12,535ユーロ(約167万円)の「マリナードライビングスペシフィケーション」がすでに含まれているがさらにこの仕様には、22インチホイールやスポーツペダルセットに加えて、1つのダイヤモンドパターンがちょうど712個のステッチで構成されている特別なキルティングシステムが含まれていた。また、ヘッドレストの「マリナー」レタリング、ダイヤモンドミル仕上げのセンターコンソール、ギアセレクターレバーの前に設置されたブライトリング製の特別な時計なども、「GT」の特別な装備だ。これらの装備は、ホイール、ラジエターグリル、ミラーキャップと同様に、「ノーマル」の「GT」や「GTC」ではオーダーできないものだ。

マリナーにのみの設定: 「ダブルダイヤモンドマトリックス」デザインのラジエターグリル。

スペック的には、「GTマリナー」は「コンチネンタルGT」と同じだ。V8(4.0リッター、550馬力)とW12(6.0リッター、635馬力)の2種類がある。W12には別レベルの威厳があるとはいえ、どちらのエンジンがボンネットの下にあるかはほとんど二の次なのは、どちらも十分すぎるほどのパワーがあるからだ。パフォーマンスは文句なしだ。しかし、高速道路を300km/hで疾走することよりも、ベントレーに乗って道路を走っているという特別な感覚のほうがはるかに面白い。最後に疑問が残る。「GTマリナー」は、通常の「コンチネンタルGT」よりも本当に豪華なのだろうか?私は「いいえ」と答えるだろう。しかし、それは否定的な意味ではなく、逆の意味だ。「マリナーコレクション」では、ホイール、グリル、3トーンのインテリアなどの専用パーツを使用して、夢の車をさらにパーソナライズすることができるようになっている。すべてのラグジュアリーが同じように作られているわけではない。

「マリナー パークウオード」、それはちょっと年配の自動車愛好家には、「またたび」のように、効く単語だろう。そしてそんな単語の使われた、特別な、おそらく路上で一度もバッティングすることのない特別な自動車に乗りたい、そんなことを思うベントレーオーナーも多いのではないだろうか。
昨今、こういう特別な「私だけの自動車」を望む富裕層は多く、ロールス・ロイスもブガッティも、メルセデス・ベンツ(マイバッハも含む)などなど、頻繁にそんなカスタマイズ部門の話題がアップされるようになった。どのカスタマイズ部門も、ほとんど頭の中で考えられるようなスペックのクルマを実現できるし、オーナーのイマジネーションを超えるほどのバリエーションやギミックなどを用意して毎回楽しませてくれる。

もうここまでくると、本当に必要なのはオーナーのセンスと価値感覚になっていくことは言うまでもないが、さすがに選びきれなくなって、自由過ぎることが苦痛や悩みになってしまうオーナーもいるのだろう。今回のマリナーは「ベントレーがあらかじめ用意した、超豪華なリコメンドパッケージ」みたいなものであり、12台という絶妙な希少数も魅力なのだろう。値段? そんなこと「マリナー」を購入する人にははっきり言って眼中にはなく、いつ自分の手元に届くのか、今度のパーティーに間に合うのかのほうが大切な心配事なのである。

最後に少しだけいちゃもん?をつけさせていただくと、シートのヘッドレストに刺繍された「MULLINER」のロゴだけは無用の長物のような気がしてしまう。こういう部分は控えめであればあるほどスマートで洒落ているだから。

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Bentley Motors Limited