【初テスト】新型ルノー カングー 14年ぶりのフルモデルチェンジで見事に進化 その実力と評価は?
2021年6月30日
家族に優しいフランス車: 新型ルノー カングー初テスト。ルノー カングー、実に14年ぶりのフルモデルチェンジ。このスタイリッシュなフランスバンは、我々のテストでも示されているように、大変洗練された進化をとげている。
そろそろじゃないかと思っていた。オールド「カングー」が年季の入ったモデルだっただけに、ニュー「カングー」の外観はとてもリフレッシュされたものになっている。標準装備のLEDヘッドライトを見れば、これが現代のルノーであることも一目瞭然だ。その印象は、車が動いているときにも確認できる。全長が4.50メートル弱になった新型「カングー(先代は30センチ近く短く、ホイールベースも短かった)」の初テストに、我々はディーゼルバージョンを選んだ。
新しい「カングー」は、シャシーに関しては、まったく新しい資質を示している。95馬力のエンジンは快適に仕事をする一方で、優れてグレードアップされた6速トランスミッションと260Nmというトルクのおかげで、エンジンはまったくその弱さを感じさせない。遮音性の向上もすぐに実感できる。高速道路では、ディーゼル音も風切り音も明らかに抑制されている。また、ステアリングやシャシーのチューニングにも磨きがかかっているようで、特にスタイリッシュなステアリングホイールを通したハンドリングは、決して直接的とは言い難いが、正確さに欠けることはない。また、快適にチューニングされたサスペンションは、荷物を積んでいない状態でもレスポンスが良く、荒れた路面ではリアアクスルが少し硬く感じる程度だ。最初のドライビングインプレッションを短く表現するならば、「あのバンのような乗り味は完全に過去のものとなった」だ。
後部座席へのアクセスには大型スライドドアを採用
後席へのアクセスには、省スペースのスライドドアをカングーの両サイドに用いている。さらに、リアスライドドアにはパワーウィンドウも付いている。一方、分割式リアシートは2ステップで簡単にフラットにすることができ、実用的なプラスチックパネルのおかげで、ほぼフラットな荷台を作ることができるようになっている。また、助手席のバックレストを折りたたむことができるので、最大2.70メートルの長さの荷物を積むことができるようにもなっている。また、実用的な収納スペースも豊富に用意されており、中でも引き出し式の大型グローブボックスは非常に優れたデザインとなっている。ルノーはセーフティエレクトロニクスをアップグレードし、車線逸脱警告システム、歩行者検知機能付き緊急ブレーキシステム、居眠り警告システムをステーションワゴンに標準装備した。また、車間距離警告システムや、ルノーでは初めてとなるブラインドスポットアシスタントも搭載されている。将来的には、ストップ&ゴー機能付きのクルーズコントロールや、ハイウェイ&トラフィックジャムアシスタントなどのオプションも追加される予定だ。
充実したインテンスシリーズの装備
新型「カングー」では、自律的な駐車もできるようになった。2つのトリムレベルのうち高い方には、ルノーは450ユーロ(約6万円)で「イージーパーキングアシスタント」システムを提供している。装備のリストを見ると、インテンスラインには、1,800ユーロ(約24万円)の追加料金がかかるが、その追加料金は、ベーシックモデルである「エディションワン(Edition One)」に比べれば、十分に投資する価値のあるものと言える。ルーフレール、キーレスアクセス、フォールディングテーブル、ウィンドウティント、大径ホイール、そして何よりも、通常であれば750ユーロ(約10万円)かかる、イージーリンク(Easy-Link)ナビゲーションシステム(8インチスクリーン、DAB+ラジオ、Apple CarPlay付き)がすでに搭載されているからだ。2022年からは、よりパワフルな115馬力のディーゼルも用意される。最上位モデルのディーゼルと、130馬力のガソリンエンジンは、その後、デュアルクラッチトランスミッションでも注文できるようになる。来年後半には、電気自動車の「カングー」も登場する。バンとしてだけでなく、5人乗りのステーションワゴンとしても、初めて登場する。本当の家族の友だ。
テクニカルデータ: ルノー カングー ブルーdCi 95
● エンジン: 4気筒ターボ、フロント横置き ● 排気量: 1461cc ● 最高出力: 95PS@3000rpm ● 最大トルク: 260Nm@1750rpm ● 駆動方式: 前輪駆動、6速MT ● 全長×全幅×全高: 4486×1919×1838mm • 乾燥重量: 1677kg • ラゲッジコンパートメント容量: 519~2031リットル ● 最高速度: 164km/h ● 0-100km/h加速: 15.1秒 ● 燃費(ディーゼル): 20.4km/ℓ ● CO2排出量: 128g/ℓ ● 価格: 26,300ユーロ(約352万円)
結論:
ルノーは新型「カングー」で、快適で、装備が充実していて、経済的なファミリーフレンドリーなバンを提供するという、正鵠を射た提案をしている。ただ、インフォテイメントの進化にはまだ十分な説得力がない。
AUTO BILDテストスコア: 2-
いよいよ、新型「カングー」のテストレポートがヨーロッパから届くようになったが、いずれ日本に導入された場合、どうしても気になる部分は3つ。
1: 前のモデルよりもさらに大きくなったボディサイズ
2: なんとも没個性になったフロントグリルデザイン
3: 文中にあった「バンらしさ」からの脱却・洗練さ
そんなの余計なお世話だ、実用車だって進化してどこが悪い、カッコだって大きくうなったことだってほっといて欲しい、とヨーロッパの「カングー」を、(当たり前ながら)単なる貨物運搬用のバン、つまり商用車として使っているユーザーは言うかもしれない。
もちろんルノーの行ったフルモデルチェンジは正しいことだし、クルマの進化とはこういうものであることは言うまでもないのだが、この極東にある島国で、「カングー」がここまで愛用された理由は、決して自動車のハードウエアのできの良さだけではないだろう。だから今回、洗練さや快適性のアップは良かったとしても、それが普通の自動車に近づき、「カングー」としての独自性の魅力を薄めてしまうフルモデルチェンジであったならば、「カングー」愛用者&愛好家は今回のニューモデルに寂しく複雑な思いを抱くのではないだろうか?新しい「カングー」も、実用車としても快適なカーゴであることは疑いの余地もない。しかし、自動車というものの持つエモーショナルな魅力という大切な部分を、新しい「カングー」は前のモデルと同じようにもっているのだろうか??
乗ればきっと良い自動車で、楽しいことも間違いないだろう。でも今まで「カングー」が持ってきた、このクルマならではの、のんきで優しい雰囲気が薄まってしまってないかどうか、かくれカングーファンとしてはその部分がとても心配なのである。
Text: autobild.de
加筆: 大林晃平
Photo: Renault