【新車情報】フェラーリ 296 GTB が走りの楽しさを定義する

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新ミッド・リアエンジン・ベルリネッタ・スポーツカー、296 GTB を披露

・新フェラーリ V6 ハイブリッド・アーキテクチャーを採用、最高出力は 830 cv
・プラグイン・ハイブリッドシステムで利便性とドライビング・プレジャーを最大化
・296 GTB には究極のハイパフォーマンス仕様である Assetto Fiorano パッケージも提供

マラネッロが生んだミッド・リアエンジンの最新 2 シーター・ベルリネッタ、296 GTBが発表されました。296 GTBは、ステアリングを握る楽しさという概念を根本から書き換え、限界まで攻めるドライビングに限らず、日常的な走行でも純粋な感動を味わえるモデルです。

296 GTBは、フェラーリに真の革命をもたらす存在です。数々の受賞歴がある8気筒および12気筒のフェラーリ・パワーユニットとは異なる新たなエンジンタイプ、バンク角120°の新V6エンジンを採用したからです。エンジン単体での出力は663 cv、これに電気モーターによって122kW(167 cv)が上乗せされます。跳ね馬のバッジを付けたロードカーに6 気筒エンジンが搭載されるのはこれが初めてです。830cvという強大な総出力を誇り、これまでには考えられなかったレベルのパフォーマンスと、革新的かつ刺激的でユニークなサウンドを実現しています。

モデルの名称は、フェラーリの輝かしい伝統にのっとって、総排気量(2.992 リッター)と気筒数に、グラン・ツーリスモ・ベルリネッタの頭文字であるGTBを組み合わせています。車名が強調するように、この新型エンジンは、マラネッロにとって時代を画す重要性を持ちます。296 GTBの中で生きて鼓動する心臓部であるだけでなく、フェラーリの70年以上におよぶモータースポーツでの比類ない経験に深く根ざした新たなV6時代の幕開けを告げる存在なのです。

フェラーリの歴史上初めてのV6 は、バンク角65°アーキテクチャーで、1957年に1500cc のF2シングルシーター、Dino 156でデビューしました。続く1958年には排気量が拡大され、フロントエ
ンジン・スポーツプロトタイプの196 S と296 Sに搭載。F1でも246 F1に搭載されて、同年にマイク・ホーソーンがF1 ドライバーズ選手権タイトルを勝ち取りました。

V6をミッド・リアに搭載した史上初のフェラーリは、1961年の246 SPで、数々の優勝のほか、同
年と翌1962年にタルガフローリオを連覇しました。また、1961年にフェラーリに初のF1コンストラクターズ・タイトルをもたらした156 F1は、バンク角120°のV6を搭載していました。フェラーリがエンジンのシリンダーバンク間に初めてターボを配置したのは、1981年の126 CKです。続く1982年の126 C2はターボ搭載マシンとして初めてF1コンストラクターズ・タイトルを獲得し、さらに翌1983年の126 C3が2度目のタイトルをもたらしました。最後に、V6ターボ・ハイブリッ
ドのアーキテクチャーは、2014年以降、F1の全マシンで採用されています。

296 GTBのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)システムは、抜群の利便性を誇るだけでなく、ペダル・レスポンスをゼロにまで短縮し、電力のみを使うeDriveモードで25kmの航続距離を実現しました。また、車両のコンパクトなサイズと革新的なダイナミック制御システムの導入、徹底的に磨き抜かれた空力によって、ドライバーは操作に対する驚異的な敏捷性と応答性を即座に体感できます。スポーティーな波打つデザインと極めてコンパクトなサイズは、並外れてモダンなビジュアルですが、シンプルさと機能性の完璧な融合は、1963年250 LMといった名車を彷彿とさせます。
SF90 Stradaleと同様に、車両の究極のパワーとパフォーマンスを特にサーキットで最大限に活用したいお客様のために、296 GTBには、軽量パーツや空力的モディファイを含むAssetto Fioranoパッケージをご用意しています。

パワートレイン
296 GTBは、フェラーリのロードカーとして初めて、シリンダーバンク角が120°のV6ターボエン
ジンを搭載し、そこにプラグインの電気モーターが組み合わされています。新V6 エンジンは、フェラーリのエンジニアがこの形式のために専用に白紙から設計・開発したもので、フェラーリで初めてターボをVバンク間に搭載しています。この特殊なアーキテクチャーは、パッケージングや低重心化、エンジン重量の削減に大きな恩恵をもたらしたほか、驚異的なレベルのパワーの実現にも貢献しました。その結果、新フェラーリV6は、比出力221 cv/Lというプロダクションカーの新記録を打ち立てています。

V6ターボの後方には電気モーターが組み合わされているため、296 GTBの総最高出力は830cvに上り、後輪駆動スポーツカーのクラストップに位置します。また、極めてフレキシブルな活用が可能で、それは、日常的な状況(296 GTBのEV 航続距離は25km)でも、ドライビングの楽しさ(アクセルペダルに対し、全回転域において瞬時でスムーズなレスポンスを実現)についても当てはまります。

パワートレイン・アッセンブリーを構成するのは、V6ターボICE、8速DCTおよびEデフ、エンジンとギアボックスの間に位置するMGU-Kです。クラッチはICEとモーターの間にあり、電気のみを使うeDrive モードでは両者を切り離します。最後に、高電圧バッテリーと、モーターを制御するインバーターがあります。

内燃エンジン
最高出力663cv、比出力221cv/L を誇る296 GTBのICEは、プロダクション・ロードカーの比出力新記録を樹立しました。その実現で中心的役割を果たしたのが120°バンク角の採用で、等間隔点火の実現に加え、ターボをバンク間に配置することで、大幅にコンパクトなエンジンとなり、重量の最適な分散が可能となりました。

このアーキテクチャーは、点火順序の面でも、シリンダーヘッドの吸気側にあるエンジンサポーと吸気プレナムを一体化する上でも理想的です。プレナムと外部サポートの排除によってエンジンがより軽量・コンパクトになり、体積の削減による流体力学的な向上で、吸気効率も高まりました。バンク角120°のアーキテクチャーは、90°の場合よりバンク間のスペースが広いため、ターボを中央に搭載することが可能になりました。したがってユニット全体のサイズや、燃焼室に到達するまでの空気の移動距離が大幅に削減され、吸排気ダクトの通過性と効率性を最大化できました。

これほどの出力を得るには、燃焼室内の圧力を新たな高みに引き上げる必要がありました。エンジンの重量と信頼性に悪影響を与えることなく、燃焼室内の圧力を引き上げるため、熱流体力学と構造の両面について並外れた開発が求められました。その実現のため、フェラーリは、合金や設計、コンポーネントに関する優れた専門性を、アルミニウム製のエンジンブロックとシリンダーヘッドのエンジニアリングにすべて注ぎ込みました。両コンポーネントとも、この新V6アーキテクチャー専用の新型です。

駆動伝達装置も完全な新設計で、ウォーターおよびオイルのポンプ・アッセンブリーを駆動する1 本のタイミングチェーンと、バルブトレインを駆動するオフセット・スプロケットおよび各バンク専用のタイミングチェーンを備えます。メインチェーンは、専用の油圧式テンショナーと、それぞれに油圧式テンショナーを持つ2本のブッシュチェーンからなり、左右バンクでキャリブレーションが異なるほか、オイルポンプ・アッセンブリー専用のチェーンもあります。バルブ駆動メカニズムは、油圧式タペットを備えるローラー式ロッカーアームで、吸気と排気で専用のバルブトレイン・プロフィールを持ちます。

このエンジンでは、SF90 Stradaleで導入されたフェラーリによる燃焼室の最新の開発を生かし、インジェクターとスパークプラグをセンターに配置した噴射圧350バールのインジェクション・システムを採用。燃焼室内の燃料と空気の混合を向上させ、パフォーマンスを高めて、排出量を低減しています。
吸排気ダクトは再設計し、体積効率を最大化するよう調整して、燃焼室内に高レベルの渦流が形成されるようにしています。

IHI製ターボチャージャーは、より高性能の合金を採用して完全に再設計されました。これにより、ターボの最高回転数を180,000rpm にまで引き上げることが可能となり、結果的にパフォーマンスが高まり、過給効率が24%向上しました。ターボはシンメトリーの逆回転式でモノスクロール・タイプです。
このソリューションの採用で、極めて高い出力を実現しながらも、コンプレッサー・ホイールの直径は5%、タービンホイールの直径は11%、V8用より縮小できました。回転質量の低減(2個の回転エレメントによる慣性は3.9リッターV8に比べて11%減)により、回転上昇にかかる時間が短縮され、瞬時のパワーデリバリーを保証しています。

クランクシャフトは窒化処理スチール製です。クランク角を120°とするため、まず鍛造した粗形材にツイスト加工をしたあと、窒素を深く浸透させる熱処理を施して高負荷への耐久性を確保し、機械加工とバランス取りを行います。新V6の点火順序(1-6-3-4-2-5)は、クランクジャーナルのジオメトリーの結果です。そのバランスは回転質量100%と往復質量25%が釣り合っており、これによってエンジンの重量を増加することなくブッシュの負荷を低減できました。

新しい可変容量オイルポンプは、エンジンの全作動範囲にわたって油圧を連続的に制御するために開発されました。エンジンECUがクローズドループ制御を行い、ソレノイドバルブを使って流量と圧力についてポンプ容量をコントロールして、エンジンの機能と信頼性の保証に必要な量だけのオイルを供給し、同時にポンプ自体が吸収するパワーを低減しています。排油側については、飛沫拡散によるロスを最小限にするため、6個のスカベンジ・ローターを使用して吸引システムを強化しています。そのうち3個のローターはクランクスロー下のクランクケース専用で、他の1個はバルブ・コンパートメント用、2個はシリンダーヘッド・コンパートメント用に割り当てられています。

フェラーリエンジンでは、通常、吸気プレナムはVバンク中央に配置されます。しかし、このV6ではその点でパラダイムシフトが起きました。プレナムをシリンダーヘッドの側面に配置して、スロットルバルブのサポートと一体化したのです。また、軽量な熱可塑性素材を使用して、エンジンの重量を抑えています。このソリューションはパフォーマンスを押し上げました。ダクトの短縮とそれによる流体力学の向上に加え、高圧ダクトの容量縮小によって、ブースト時間が短縮されたからです。

この新アーキテクチャーは、排気ラインをエンジン・コンパートメントの上部に配置して、より直線的にする開発にもつながりました。このエグゾーストの形状は、排出されるガスの通過性を高め、パフォーマンス向上に貢献しています。エグゾースト・マニフォールドと触媒ハウジングは、すべてスチールとニッケルの合金であるインコネル®製として、エグゾーストの重量を低減し、高温への耐熱性を高めています。

サウンドの面でも、296GTBはルールブックを書き換えました。通常は相反する二つの特性、ターボのパワーと、自然吸気V12が奏でる高周波音のハーモニーを両立させたのです。低回転域でさえ、V12の純粋な音の重なりに匹敵するサウンドをキャビンの中で楽しめ、高回転域ではあの典型的な高音が約束されています。このフェラーリサウンドは、パフォーマンスにぴったり合致しているので、前例のない一体感を生み出します。マラネッロのベルリネッタの歴史がめくられ、新たなページに入ったのです。

車外で聞いても、甲高いエンジンサウンドは即座にそれと分かります。F163型エンジンファミリーの最初にあたるこのV6には、開発中に「ピッコロV12(ミニV12)」という愛称が付きました。バンク角120°のアーキテクチャーによって点火順序を左右対称にでき、等長のチューンド・エグゾースト・マニフォールドと、ホットV 外側の1本出しの排気ラインが圧力波を増幅。こうした特性が、音の重なりに純粋さを加えています。また、驚異の8500rpmという高回転でリミッターを打つことも貢献しています。特許取得の「ホットチューブ」は、296 GTBのために完全に再設計され、排気ガス後処理システムの前に位置するので、純粋なサウンドをキャビンに伝達し、ドライバーの一体感と興奮をさらに高めます。

電気モーター
後輪駆動のみのPHEV(プラグイン・ハイブリッド電気自動車)アーキテクチャーは、これがフェラーリ初です。ICEと組み合わされる電気モーターはリアに搭載、最高122kW(167 cv)を発生します。F1で使用されるモーターから派生したため、MGU-K(モーター・ジェネレーター・ユニット、キネティック)という名称も引き継いでいます。モーターとICEは、トランジション・マネージャー・アクチュエーター(TMA)を介して連携し、同時に使用すれば総出力830cvを発揮し、切り離してモーターのみで走行することも可能です。

パワートレイン・アーキテクチャーを構成するのは、V6ターボと、既にSF90 Stradale、Ferrari
Roma、Portofino M、SF90 Spiderで採用されている8 速DCTのほかに、エンジンとギアボックスの中間に位置するMGU-K モーター、モーターとICEを切り離すTMA、7.45 kWhの高電圧バッテリー、モーターを制御するインバーターがあります。

MGU-K は、ダブル・ローター、シングル・ステーター型のアキシャルフラックス・モーターです。サイズと構造がコンパクトなため、パワートレインの全長を短くでき、最終分析で296 GTBのホイールベースを短縮することにつながりました。このモーターが高電圧バッテリーを充電するほか、ICEを始動させ、トルクとパワー(最高167 cv)を上乗せし、完全に電動のeDriveモードでの走行を可能にします。MGU-Kの設計を改善したことで、発生する最大トルクは315Nmに達し、以前の仕様より20%増加しました。

トランジション・マネージャー・アクチュエーター(TMA)は、電動からハイブリッド、ICEへ、またその逆へと、動的、静的のいずれについても非常に素早い移行を可能にし、スムーズでリニアなトルクデリバリーを保証します。TMAの制御ソフトウェアは、すべてフェラーリ社内で開発され、これがDCTやモーター、インバーターのソフトウェアと情報交換をして、ICEの始動やトランスミッションとの接続・切断をより効率的にマネージメントします。新世代のコンポーネントによってTMAは驚くほどコンパクトな設計となりました。このシステムによるパワートレイン全長への影響は、わずか54.3mmです。そのアーキテクチャーは、トリプルプレートの乾式クラッチと、ドライブラインと同軸のクラッチ・コマンド・モジュールおよびクラッチ・コントロール・リンケージ、ECU から構成されています。

296 GTBの高電圧バッテリーは、製造でレーザー溶接を使用する革新的設計によって、7.45 kWhの容量と競争力の高いパワーウェイトレシオを実現しています。バッテリーパックはフロア下に位置し、容積と重量を最小化するため、冷却システムと構造部材、固定装置は1個のコンポーネントに統合されています。セルモジュールは直列に接続された80個のセルからなります。セル・スーパーバイザー・コントローラーは各モジュール内に直接組み込み、サイズと重量を削減しています。

296 GTBのインバーターは、並列に接続された2個のシリコン製モジュールを基本とし、そのパワーデリバリー・モードは、MGU-Kが最大トルク315Nmを発揮できるよう最適化されています。このコンポーネントは、電気エネルギーの変換効率が極めて高く(94%強)、最大の電力が求められている状況でも、V6の始動に必要な電力を供給できます。

エアロダイナミクス
296 GTBは、数々の大胆で革新的なソリューションを擁して、ミッドシップ・ベルリネッタ・スポーツカーの世界に登場しました。ターボをクランクケースのVバンク上に搭載するホットV構造を採用したため、最も高温で発熱するコンポーネントが、すべてエンジンベイの中央上部に集まっています。そのため、エンジンベイ自体と電気系コンポーネントのいずれについても、より効率的な熱管理が可能になりました。こうした過去との明確な決別は、エアロダイナミクスに関する選択にも見られます。458 Specialeで導入されてから受け継がれてきたアクティブ・エアロの枠組みを覆し、296 GTBでは初めて、可動デバイスをドラッグ低減のためではなく、ダウンフォース増加のために使用しているのです。
LaFerrariをインスピレーションとするアクティブ・スポイラーをリアバンパーに組み込み、必要なときに高いレベルのリア・ダウンフォースを発生できます。Assetto Fioranoパッケージの場合、ハイ・ダウンフォース構成で発生する最大量は、250km/hで360kgに相当します。

この驚くべきパフォーマンスは、車体のボリュームをシームレスに最適化することで達成されました。
その結果、極めてクリーンでエレガントなデザインとなり、パフォーマンス志向の全エレメントがスタイリングと苦もなくとけ合って、あらゆるフェラーリの特徴である美とテクノロジーの完全な融合を実現しています。空力面の開発によって、296 GTBはロー・ドラッグ構成でさえも、従来のモデルより大きなダウンフォースを発生でき、ハイ・ドラッグ構成では、アクティブ・スポイラーによってダウンフォースが100 kg上乗せされます。

ICEとギアボックスの冷却は、車両前方に搭載する2 基のラジエーターで行い、フロントタイヤの前には、高電圧バッテリーの冷却用コンデンサー2基も装備します。高温の空気はアンダーボディに沿って排出されるので、車体側面上部を流れてインタークーラーに取り込まれる冷却エアには干渉しません。この選択によって効率が最大化され、したがってエアインテークのサイズを最大限縮小でき、元々クリーンなスタイリングがいっそう滑らかになりました。ハイブリッドシステムのラジエーターは排気口が2個あり、スポイラーの両サイドのすぐ下に位置します。このソリューションによって、フロント中央部の空間があいたので、そこをダウンフォース発生に利用できたほか、様々な経路の最適化につながり、パッケージングと重量に直接的な恩恵がありました。

エンジンベイには、最高900℃を超える温度でも機能する通常のICEコンポーネントと共に、それより低い温度でしか機能しない電気・電子コンポーネントが存在します。そのため、ターボのレイアウトと排気ライン全体の完全な再設計が行われました。

ブレーキの冷却システムの開発で中心となったのがエアロ・キャリパーです。鋳造キャリパーの内部に通気ダクトが組み込まれており、SF90 Stradaleから導入されました。このブレーキ冷却コンセプトには、フロント・バンパーのエアインテークで取り込んだ冷却エアをホイールアーチまで正確に導く専用ダクトが必要です。296 GTBでは、インテークをヘッドライトのデザインに組み込みました。DRL直下の奥に開口部があり、フェンダーからシャシーストラットと並走するダクトを通ってホイールアーチにつながり、ブレーキに冷却エアを供給します。

これによって、アンダーボディの設計を新たな極限にまで押し上げられました。フロントに可動エアロ・メカニズムを設けずに、アンダーボディの冷却能力を高めることができたのです。296 GTBのフロントで特徴的な空力エレメントが「ティートレイ」です。ラジエーターを車体両サイドに配置したことによって中央の空間があいたので、そこにティートレイを装着しました。これを取り囲むブリッジによって、フロント・バンパーのアーキテクチャーやスタイリングと完璧に融合しています。このエアロ・デバイスは、シングルシーターで広く採用されているコンセプトを活用しています。バンパー後方の面とティートレイの上面との相互作用で高い正圧の場を生み出し、アンダーボディに特有の負圧の場と拮抗させます。

二つの異なる圧力場は、ティートレイの端までは分離していますが、末端で相反する圧力場が再びひとつになり、気流が巻き返して、極めて影響力の大きい強力なボルテックスがアンダーボディ下に向けて発生します。この渦状の空気の動きで気流が局部的に加速され、高レベルの吸い付ける力が発生して、より大きなダウンフォースがフロント・アクスルにかかります。

前方から車両を見ると、側面のボリュームは内側へと鋭く折れて、サイド・スプリッターへと折れ曲がるかのように見えます。こうして生まれた空間が、気流をより効率的に導き、バンパー下部に流れ込む気流を最大化します。サイド・スプリッターにぶつかる気流の力を最大限に活用するため、タイヤ前方のバンパーの端には垂直の翼端板を装着しています。これが局部的な再圧縮のエリアを作り出してダウンフォースを増強し、ラジエーターから高温の空気を抜き出す力を高めます。また、バンパー側面にはサイド・エアカーテンがあるので、バンパー前面から入る空気はタイヤハウスへ導かれ、ホイールアーチ内の専用の開口部から排出されます。このダクトの排出口は、後流が横方向へ広がるように調整されています。

中央部分で最も重要な改良点は、法的に認められている最低地上高まで部分的に表面を下げていることです。こうしてアンダーボディを路面に近づけ、グラウンド・エフェクトで発生する吸引力を強めて、フロントのダウンフォースを増強しています。低い中央部分のすぐ下流のアンダーボディは、最低車高よりわずかに持ち上げられています。これは、地表とアンダーボディの間を通過する気流の質を最大限高め、露出するボルテックス・ジェネレーターの垂直面を増やすためです。ボルテックス・ジェネレーターは、その特殊な形状やリアのアンダーボディへの影響によって、走行中のあらゆる動的状況で適切な車両バランスが保たれるようにします。

エアロ・キャリパーの採用で、サスペンション・アームの下には、ブレーキ専用冷却システムのためのダクトを設ける必要がなくなりました。こうしてあいたスペースは、フラットなアンダーボディを広げてダウンフォース発生面を増やし、L 字状の革新的なボルテックス・ジェネレーターを追加して活用しています。

テールのスタイリングは、フェラーリクーペの伝統的デザインとは明確に決別し、スパイダーのように、ルーフとリアのエンジンカバーが不連続なアーキテクチャーを採用しています。この選択によって、296 GTBはひと目でそれと分かるユニークなモデルとなりました。エアロダイナミクスの面では、ルーフに新たなウィング形状が加わり、これが左右に伸びてサイドフィンとなって、リアのエンジンカバーの端をはさみ込んでいます。

296 GTBでリアのエアロダイナミクスを特徴づける中心的存在がアクティブ・スポイラーです。これがダウンフォースを上乗せし、高速走行時のハンドリングとブレーキングのパフォーマンスを最大化します。このアクティブ・エアロのコンセプトは、実は458 Speciale以降のフェラーリのベルリネッタで採用されてきたものとは正反対です。従来は、ディフューザー上のフラップをハイ・ダウンフォース(HD)構成からロー・ドラッグ(LD)構成へと変えて、ストレートで最高速度に到達することを可能にしていました。しかし296 GTBでは、可動エアロ・デバイスが稼働すると、ダウンフォースが増加するのです。

この可動リア・スポイラーは、バンパーのデザインとシームレスに一体化しており、左右のテールライトにはさまれた空間をほとんど占有しています。最大ダウンフォースが必要でない状況では、スポイラーはテール上部のコンパートメントに格納されています。しかし、車両のダイナミック制御システムが常時モニターしている加速度がある閾値を超えると、その瞬間、スポイラーが稼働してボディワークの固定部分から伸展します。この複合効果によって、リア・アクスルにかかるダウンフォースが100kg増加するので、ハイ・パフォーマンスなドライビング中のドライバーによる操作性が高まると共に、ブレーキング時の制動距離が最小化されます。

車体リアの機能を損ねないためには、ロー・ドラッグ構成でもハイ・ダウンフォース構成でも、リアの気流が極めて効果的に働くことが不可欠です。296 GTBはルーフ末端からテールまで続くリアスクリーンがないので、ルーフからの気流の剥離を精密に操る必要がありました。そこで、バーチャル・フェアリングを作り出して、あたかも目に見えないリアスクリーンが存在するかのように、ルーフを通過する気流が車体後方に正確に導かれるようにしました。こうして、ウィング形状とキャビン末端の気流が吹き付ける部分とを非常にうまく作用させることができました。後者は、CFD 開発でディテールを厳密に調整してから、風洞で効果を確認しています。

フロントの開発が大幅に進んだ結果、100kgのダウンフォース上乗せがないLD構成のときにも、リアでフロントに釣り合う効果を発揮する必要が生じました。そこでデザイナーは、排気ラインのレイアウトで広がった可能性を最大限に活用しました。主な熱源がエンジン・コンパートメントの上部に集中しているので、エンジンカバー下のコンポーネントに必要な排気用の開口部を最適化できたのです。したがって、これまでより広い面積をダウンフォース発生に確保でき、特にエンジン下の中央部分では、アンダーボディの気流の効率に悪影響を及ぼさずに済みました。

ディフューザー上流が非常に効率的なので、ディフューザーは非常にすっきりとした直線的なデザインとなり、リアバンパー上部と完璧に調和しています。ディフューザー中央の流路は、2回曲がっているのが特徴です。このデバイスによって、アンダーボディに沿って吸い込まれた気流が車両の後流へと放出される方向を調整でき、後流を垂直方向に拡大して、ドラッグを低減できました。

ビークル・ダイナミクス
296 GTBのダイナミクスの開発では、車両の純粋なパフォーマンスの押し上げ、ドライバーとの一体感をクラストップレベルに引き上げることを重点としました。そのために、新アーキテクチャー・ソリューション(V6 ハイブリッド・パワートレイン、短縮されたホイールベース)を最大限に活用し、車両パフォーマンスを引き出しやすくすることはもちろん、ハイブリッド・レイアウトがもたらす機能を使いやすくすることにも取り組みました。

目標達成のため、アーキテクチャーを磨き上げ、主要コンポーネントをできる限りコンパクトにすると共に、エネルギーフローのマネージメントを図り、それをビークル・ダイナミクス制御と統合しました。

数々の新コンポーネントが296 GTBのため特別に開発されました。その最たるものがトランジショ
ン・マネージャー・アクチュエーター(TMA)と、自動車業界では世界初となる6ウェイ・シャシー・ダイナミック・センサー(6w-CDS)です。ほかにも、6w-CDSが収集したデータを活用するABSevoコントローラーや、電動パワーステアリングとグリップ推定機能の統合といった新機能があります。

フェラーリでは、車両のハンドリング特性とドライバーへのフィードバック(社内では「走りの楽しさ」と呼ばれる要素)を、5 種類の指標で測っています。

  1. 横方向:ステアリング・ホイールによるインプットに対する反応、ステアリング・インプットのリア・アクスルの即時の応答、苦もなく操れるハンドリング
  2. 縦方向:アクセルペダルに対する迅速でスムーズな反応
  3. ギアチェンジ:変速時間、それぞれのギアチェンジで生じる明確な変化の感覚
  4. ブレーキング:ブレーキペダルのストロークや反応といったフィール(効率性や操作量)
  5. サウンド:キャビン内の音量や音質、エンジン回転の上昇に伴う音の変化

パフォーマンスの引き出しやすさや活用のしやすさも、296 GTBのドライビングにおける非常に重要な要素です。たとえば電気のみを使うeDriveモードでは、ICE に頼らずに最高135 km/hに達することが可能です。一方Hybridモードでは、高いパフォーマンスが求められたときにICE がモーターをバックアップします。電動とハイブリッドのドライビングモードの切り替えは非常に滑らかで、スムーズで安定した加速が保証され、パワートレインの出力が素早く発揮されます。また、新たなABSevoの働きと6w-CDSセンサーとの統合によって、乾いた路面での制動距離が大幅に短縮され、ヘビーブレーキングを繰り返しても一定の制動力が保たれます。

シャシーに目を向けると、ホイールベースがこれまでのフェラーリのミッド・リアエンジン・ベルリネッタより50mm短縮され、動的俊敏性が高まりました。車両のハンドリングやパフォーマンス強化につながったほかのソリューションには、ブレーキ・バイ・ワイヤ・システム、「エアロ」ブレーキ・キャリパー、電動パワーステアリング、リアの可動エアロ・デバイス、磁性流体ダンパーのSCM-Frsがあります。

また、重量削減にも細心の注意を払い、車両バランスと繊細なハンドリングを確保しました。ハイブリッドシステムで増えた重量は、様々なソリューションで相殺されています。たとえば新V6エンジンは従来のベルリネッタのV8ユニットより重量を30kg 削減したほか、軽量素材も幅広く使用しています。その結果、乾燥重量は1470kg となり、クラストップの1.77 kg/cvという総パワーウェイトレシオを実現しました。

296 GTBは、シングルモーターによる後輪駆動のみとしたことでも重量を抑えています。主な充電機能としては、リアに回生ブレーキ機能を備えます。通常のブレーキング時に加えて、ABS介入時やアクセルオフでリア・アクスルに過剰な制動力がかかる際に、ICEとモーターを一体としてマネージメントして、バッテリーを充電します。

新ブレーキ・バイ・ワイヤ・ユニットによる電動トラクション・コントロールとエネルギー回生では、作動する全モード(ABS を含む)で油圧と電気による調整が組み合わされます。もうひとつ、トラクションの制御・分配ソリューションとして296 GTBで世界デビューを飾るのが、まったく新しい「ABSevo」です。ブレーキ・バイ・ワイヤの恩恵で、ペダルストロークが最小限にまで徹底的に抑えられたため、スポーティーな感触が強まりました。同時に、軽くブレーキングした際の効率性や、サーキット走行でのペダルフィールも犠牲にしていません。新しいABS 制御モジュールは、新登場の6w-CDSセンサーと統合されており、リアタイヤのグリップ限界をさらに押し上げ、制動距離の再現性を高めるので、結果的にコーナーにターンインする際のパフォーマンスが向上しています。

電動モードとハイブリッドモードの切り替えは、296 GTBのスポーツカー特性の基礎となります。使用可能な出力をパワートレインがどうマネージメントするかについても同様で、いずれも、車両のダイナミクス機能との融合を根幹で支えます。伝統的マネッティーノに加えて、パワーマネージメントのセレクター(eマネッティーノ)も装備しているのはそのためです。eマネッティーノには4 つのポジションがあります。

  • eDrive:内燃エンジンは停止し、純粋に電気のみで後輪を駆動します。バッテリーがフル充電の
    状態で25kmの走行が可能で、最高速度は135km/hです。
  • Hybrid(H):始動時のデフォルトモードです。パワーフローは効率を最大化するようマネージ
    メントされ、制御ロジックが内燃エンジンの介入を決定します。エンジンを稼働すると、車両の最大のパワーとパフォーマンスが引き出されます。
  • Performance:ICEを常に稼働してバッテリーの効率を維持し、いつでもフルパワーが発揮で
    きる状態にします。攻めたドライビングに最適な設定です。
  • Qualify:バッテリーの再充電を抑えて、最大のパフォーマンスを発揮します。

サイド・スリップ・コントロール(SSC)システムのグリップ・エスティメーターは、電動パワーステアリング(EPS)をベースとする第2 のデバイスです。EPSから情報を得て、SSCが推定する横滑り角と相互参照することで、限界域での走行ではないときも、すべてのステアリング操作について、その間のタイヤのグリップを推定します。これにより、制御システムによる介入がグリップ状況に応じた正確なものとなり、サーキット走行では、グリップ推定時間が従来のシステムより35%短縮されました。

296 GTBは、フェラーリのために専用に開発された新しいABS制御モジュールを備え、Raceポジション以上で利用可能です。6w-CDSからの情報を使い、これまで使われていたヨーレート・センサーよりも正確な推定速度を得て、制動力を最適に配分します。6w-CDSは、加速度と旋回速度の計測をいずれも3軸(X、Y、Z)方向について行うため、他のビークル・ダイナミクス制御システムが車両の動的挙動をより正確に読み取ることが可能となり、介入が最適化されます。この正確性によって、ストレートでのブレーキングはもちろん、スイッチバックのように、リア・アクスルがブレーキ性能と前後方向の安定性との間で妥協せざるを得ないような状況で、タイヤの縦方向の力をいっそう活用できるようになりました。その結果、制動距離に目覚ましい改善が見られ、F8 Tributoとの比較で、296 GTBは200-0km/hの制動距離を8.8%短縮、200km/hから繰り返しブレーキングした際の制動効率は24%向上しました。

スタイリング

エクステリア
Ferrari 296GTBのデザインは、ミッド・リアエンジン2シーター・ベルリネッタのアイデンティ
ティーを再定義しようというフェラーリ・スタイリングセンターの熱意の結果であり、極めてコンパクトなラインを生かして、独創的でモダンなルックスとなりました。短いホイールベースと1個の塊から削り出されたようなストラクチャーを持つ296GTBは、過去10年間にマラネッロが生み出したどのベルリネッタよりコンパクトです。ベルリネッタの典型的なファストバックは捨て、代わりに力強いボリュームの中に埋め込まれたように見えるキャビン・アーキテクチャーが誕生しました。こうした印象を作り出しているのは、短いホイールベースや筋肉質のフェンダー、バイザースタイルのフロントウィンドウ、たくましいフライング・バットレス、新しい垂直のリアスクリーンといった各要素の組み合わせです。これらのフォルムがひときわ独創的なキャビンのシルエットを生み出し、それが車両全体の印象を支配しています。

非の打ち所のないクリーンでシンプルなアーキテクチャーは、鉛筆による一筆書きで生み出されたかのようです。そこには、車体のボリューム感を軽減する人為的な視覚効果や強烈な色のコントラストはありません。デザイナーが選んだのは、最も説得力のある原型を利用して、車両にまったく独自のユニークなアイデンティティーを与えることでした。ルールを完全に書き換えるほどのユニークさは、イタリアのカーデザインの原点となる理念を再発見することで生まれました。クリーンなフォルムや各部分が響き合うボリューム感は、妥協のないスポーティーな個性をいっそう強調し、フェラーリの伝統の原点にまでさかのぼる哲学を受け継ぐにふさわしいモデルとしています。並外れたモダンさは、シンプルさと機能性を特徴とする1960 年代のフェラーリをヒントに生まれました。特に1963 年に生まれた250 LM は、波打つ彫刻のようなボディやB ピラーのデザイン、エアインテークを配したフェンダーの独特の構成、繊細にバランスを取ったカムテールといった要素で、デザイナーにインスピレーションを与えました。

296 GTBのデザインの中でも、最も特徴的な要素がキャビンです。フロントウィンドウはサイドウィンドウへとカーブするバイザースタイルで、これまでもJ50といった限定モデルやP80/Cといった
ワンオフ・モデルで何度か採用されてきたテーマですが、それがロードカーで究極の表現に至りました。
このフロントのラップ・アラウンドのテーマと有機的なつながりを見せるのが、リアのフライング・バットレスのテーマと、エンジンをのぞくことができる透明なエンジンカバーです。

296 GTBの優れた美とパフォーマンスは、斜め後方から見ると一目瞭然です。ルーフのカットラインやフライング・バットレスの配置、筋肉質のフェンダーが、ボディとキャビンの強烈な関係性を強調しています。その結果、非常にコンパクトな印象と、キャビンが周囲のふくらみに埋め込まれているようなイメージが生まれるのです。

296 GTBのエレガンスが露わになるのがサイドビューで、波打つ筋肉質なフェンダーが特徴となっています。はっきりとした力強いプレスラインがドアを走り、その先の空力的に最も効率の高い位置に設けられた大きなエアインテークにとけ込んでいます。このエアインテークは円筒形のため、筋肉質なリアフェンダーは突き出すように盛り上がっています。リアフェンダーの横断面の形状は、このモデルに求められる高度な空力性能の実現に必要な量の気流がスポイラーへと流れるよう、細心の注意を払ってデザインされました。

296 GTBのフロントは、表面の形状を徹底的に磨き抜いた結果、非常にピュアでクリーンかつ極めてコンパクトになりました。これまでのミッド・リアエンジンV8モデルに比べて、296 GTBのフロントは先端にいくほど絞り込まれています。上から見ると、フロントフェンダーのふくらみが、車両のフロント外周を完全に包み込んでおり、このスタイリングテーマがヘッドライト・アッセンブリー内の機能をエレガントに分割しています。

ヘッドライトは、過去の「ティアドロップ」形ヘッドライトにインスピレーションを得ました。296 GTBでは、このスタイリングテーマを再解釈して、車体のフロントに2 個の宝石が埋め込まれたような「フェアド・イン・ティアドロップ」としました。その効果を高めているのがDRLの構成で、このモデルのフロントを特徴づけると共に、ブレーキ用エアインテークも内蔵しています。中央にシングルグリルを配するスタイリングテーマには、グリル中央の高さを抑えるという変更が加えられています。その結果、2基の強力なラジエーターの存在をうかがわせるバーベル形となりました。中央部には、F1で採用されているソリューションを思わせるコンパクトなつり下げ型のウィングがあります。

超モダンなテールの上面は、力強いフライング・バットレスで占められています。その基部と一体化したエンジンカバーは、ユニークな3次元的ガラス面になっています。中央部にある印象的なボディカラーのエレメントは、名高いFerrari TestarossaやF355 GTBにまでさかのぼる、マラネッロにとって思い入れの強いスタイリングテーマです。

もうひとつ、リアエンドのスタイリングを特徴づけているのがカムテールで、硬い物体を切り落として できたような面が、車体のコンパクトさを強調しています。テール上部には水平なエレメントがあり、テールライトと格納型スポイラーが組み込まれています。ライトを消した状態では、細長い「ブラックスクリーン」のラインが全幅にわたって水平に走っていますが、テールライトが点灯すると、両端に2本の光の線が現れます。デザイナーは、伝統の丸形2灯を再解釈し、他の照明機能を半円形にまとめて、リアのサイドライト下の面に配置しました。

296 GTBでは、テールパイプをセンター1本出しとした点もモダンな印象です。このエグゾーストのデザインは、バンパー中央下部の形状と調和し、バンパーは左右両端でテールライトに向けて上方へと伸びて、車体リアの水平を基調とする印象を強調しています。中央のスポイラーは、テールライトの間のボディワークに格納されており、デザインを邪魔していません。機能性とテクノロジーとデザインを完璧に融合させるこうしたソリューションで、デザインの純粋さを損なうことなく、必要な空力性能を実現しています。

296 GTBが履く新アロイ・ホイールは、ツインスポークのデザインが、彫刻のような星形スポークのアクセントとなっています。ほかに、ダイヤモンドカット仕上げでいっそう印象的な5本スポークの専用鍛造ホイールもあります。5本のメインスポークには、それぞれにダイナミックにカーブしたエレメントが添えられており、その間にできるスロットがホイールアーチからの空気の排出を促進します。オプションのカーボンファイバー製ホイールは、鍛造ホイールより8 kg 軽量で、まったく新しいパフォーマンスのベンチマークを打ち立てています。

コックピット
296 GTBのコックピットは、完全なデジタル・インターフェースによる新コンセプトを中心に開発されました。SF90 Stradaleでデビューしたもので、そこに見られたスタイリングの一貫性を生かしてインテリアがレイアウトされています。SF90 Stradaleでは先進テクノロジーの存在と過去との明確な決別を強調したのに対し、296 GTBでは、そうしたテクノロジーを洗練さで包み込むことを主眼としました。その結果、ピュアでミニマリストな雰囲気が生まれ、漂う力強いエレガンスは、美的な意味で、エクステリアのデザインと完璧に調和しています。

296 GTBのキャビンは、機能的要素をピュアなフォルムにするというコンセプトを新たな高みへと引き上げました。エンジンを停止中は、インストゥルメント・クラスターは黒一色となり、キャビンのミニマリストの印象が強まります。シートや内装には高級イタリアンレザーがあしらわれ、機能的コンポーネントに使われたテクニカルな新素材がそれを引き立てています。

ひとたび「Start Engine」ボタンが押されると、すべてのコンポーネントに徐々に命が宿り、並外れてモダンで人間工学的に優れたフルデジタルのインターフェースの形で、輝かしいテクノロジーが露わになります。メインのインストゥルメント・クラスターは、ダッシュボード・トリムにうがたれた深い割れ目に埋め込まれています。ダッシュボードは、表面を意図的にクリーンで張りつめた印象にしています。このスタイリング・ソリューションから、ステアリング・ホイールとインストゥルメント・クラスターが突き出し、これを支える2本の露出した支柱は、細くなりながらダッシュボードへとシームレスに続いています。さらに運転席には、それぞれにタッチスクリーンとエアベントを持つ2 個のサイド・サテライトが備わります。助手席側は非常にミニマリストな印象ですが、標準でパッセンジャー・ディスプレイが備わるので、まるでコ・ドライバーのように関与して、ドライビング・エクスペリエンスを満喫できます。

彫刻のようなドアパネルは、素材と色でダッシュボードとシームレスにつながっています。中央には、菱形状に深く彫り込んだ3次元的なエレメントがあしらわれています。こうしたアーキテクチャーは、ドアパネル全体をひときわ軽快な印象にし、リアのトリムとの統一感を生み出しています。センタートンネルには、SF90 Stradale同様、クラシックなシフトゲートを現代的に解釈したセレクターと、跳ね馬のバッジが特徴のイグニッション・キーを収納するコンパートメントがあります。デザイナーは296 GTBのために専用のディアパソン・スタイルのシートを作りました。そこで使われている対照的な畝は、インストゥルメント・クラスターの縁取りと美しい調和を見せています。

ピュアなフォルムを最大限に追求するフェラーリの哲学をよく表しているのが、レザートリムと融合したヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)です。スピーカーも同じ理念でデザインし、金属ではなく、ダッシュボードと同色の熱可塑性素材のカバーを選んでいます。

ASSETTO FIORANO
車両の究極のパワーとパフォーマンスを最大限に活用したいオーナーのために、296 GTBにはAssetto Fiorano パッケージが用意されています。最大パフォーマンスのために一切の妥協を排して、大幅な軽量化やエアロパーツを駆使しています。主な装備には、GTレースから生まれ、サーキット走行に最適化された特別なアジャスタブル・マルチマチック・ショックアブゾーバーや、フロント・バンパーに装着すると10kgのダウンフォースを上乗せするカーボンファイバー製ハイ・ダウンフォース・パーツ、Lexan®製リアスクリーンがあります。また、カーボンファイバーを初めとする軽量素材をキャビンとエクステリアに幅広く使用しています。

Assetto Fiorano パッケージは、単にパーツを変更するだけに留まりません。ドアパネルなど標準仕様の基本構造を再設計する必要が生じたコンポーネントもあり、その結果、全体で12kg を超える軽量化が実現しました。最後に、Assetto Fiorano パッケージを選んだお客様限定で、250 Le Mansをインスピレーションとするスペシャル・リバリーをオーダーすることも可能です。このスタイリング・エレメントは、フロントの両端から始まり、中央のグリルを包んでその外周を縁取り、ボンネットへと続いてハンマーのモチーフを形成。さらにルーフへと縦に伸びて、リアのスポイラーまで続きます。

Assetto Fioranoパッケージのみでオーダーが可能なパーツには、全体の重量削減を15kgにでき
る超軽量なLexan®製リアスクリーンや、高いグリップ力でサーキット走行に特に適したミシュランの高性能タイヤ、スポーツ・カップ2R があります。

7 年間メンテナンス・プログラム
卓越した品質基準と、さらなるカスタマー・サービスの充実を目指すフェラーリでは、296 GTBに7年間の純正メンテナンス・プログラムをご用意しております。フェラーリの全ラインアップを対象としたこのプログラムは、最初の車両登録から7年間にわたり、お客様のフェラーリのパフォーマンスと安全性が最高の状態で維持されるべく、すべての定期メンテナンスを保証するフェラーリならではのサービスです。この特別なサービスは、認定中古車を購入されたお客様にもご利用いただけます。

定期メンテナンス(20,000 km ごと、もしくは毎年1 回。走行距離制限なし)では、純正スペアパ
ーツおよび最新の診断テスターを使い、マラネッロのフェラーリ・トレーニング・センターで研修を受けた有資格者による詳細な検査を受けていただけます。これは純正メンテナンス・プログラムの魅力のひとつにすぎません。このサービスは、全世界の市場で展開する正規ディーラー・ネットワークにてご利用いただけます。

マラネッロで製造された車両が誇る優れた性能と素晴らしさの維持を願うお客様に向けて、フェラーリはこれまで展開してきた幅広いアフターセールス・サービスに加えて、この純正メンテナンス・プログラムを導入し、さらなるサービスの向上に努めています。

296 GTB – 主要諸元

パワートレイン
タイプ V6 – 120°
総排気量 2992cm3
ボア・ストローク 88mm x 82mm
最高出力 ICE* 663cv
最高出力 ハイブリッドシステム** 610 kW(830 cv)/ 8000rpm
最大トルク 740Nm / 6250rpm
最高許容回転数 8500rpm
圧縮比 9.4:1
高電圧バッテリー容量 7.45kWh

サイズ&重量
全長 4565mm
全幅 1958mm
全高 1187mm
ホイールベース 2600mm
フロント・トレッド 1665mm
リア・トレッド 1632mm
乾燥重量*** 1470kg
乾燥パワーウェイトレシオ 1.77kg/cv
重量配分 40.5%フロント / 59.5%リア
燃料タンク容量 65L

タイヤ&ホイール
フロント 245/35 ZR 20 J9.0
リア 305/35 ZR 20 J11.0

ブレーキ
フロント 398 x 223 x 38mm
リア 360 x 233 x 32mm

トランスミッション&ギアボックス
8速F1 DCT
電子制御
eSSC: eTC、eDiff、SCM、FDE2.0、EPS、ABS Evo、6w-CDS; エネルギー回生機能付き高性能
ABS/EBD

パフォーマンス
最高速度 > 330km/h
0-100km/h 2.9秒
0-200km/h 7.3秒
200-0km/h 107m
フィオラノラップタイム 1’ 21”
燃料消費量 & CO2排出量
ホモロゲーション取得申請中

Text&photo:フェラーリ・ジャパン