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時代の先駆けとなった70年代、80年代、90年代のデジタルでもちょっぴりレトロなコックピット21選

2021年6月28日

「シトロエンBX」では、特別仕様車「デジット」(1985年)で、デジタルコクピットが量産された。センタースクリーンには速度が表示され、左右には警告灯がずらりと並んでいた。スターウォーズを彷彿とさせるコントロールサテライトは、最初のシリーズではすべての「BX」に採用された。
大林晃平: 「シトロエンBX」は写真のよ
うな、ちょっと「シトロエン ヴィザ」を髣髴とさせる内装が、初期のモデルのみ採用された。マイナーチェンジを受けたシリーズ2では、ごく一般的な操作系とヴェウリア製の針式のメーターとなり、ステアリングホイール形状も大きく変わることとなる。このデジタルメーターは、シトロエンの伝統だったボビン式数字メーターの発展型ともいえるが、正直これだったらボビン式メーターのままでもよかったような気がしてならない。個人的に気になるのはシフトノブ前のタッチ式スイッチ類だが、(のちにXMに備わるような)盗難防止装置だろうか?
控えめに、でも、めいっぱいデジタル風味のロゴを用いてDIGITと書いてあるのが微笑ましい。
Photo: PSA Groupe
「ランボルギーニ アソン」のコックピットは、「ボルボ タンドラ」のコックピットを強く連想させる。ロードスターのスタディもベルトーネで制作され、わずか1年後の1980年に発表されているからだ。ベルトーネが開発したディスプレイには、すでにタッチ機能が搭載されていた。
大林晃平: なんともレトロでオーソドックスなインテリアにデジタルコックピット。ランボルギーニにはなんとも似つかわしくないが、超高級な革をこれでもかと使った部分はイタリア感満載である。メーターパネルもさることながら、ステアリングホイール左のロボット(?)のようなデザインのスイッチ類や、助手席前の電卓のようなコントロールパネルが一体何なのか気になる。ドア内張にきっちり埋め込まれたウーハーとツイーターが備わるスピーカーから考えれば、なんらかのオーディオコントローラーなのだろうか(音質を変えることのできるイコライザーとか)?
Photo: Tom Wood ©2011 Courtesy of RM Au
1993年に発売された初代「トゥインゴ」のインテリアは、ルノーが一貫してミニマリズムを追求したものだった。ダッシュボードの中央にあるスクリーンには、速度、燃料レベル、走行距離が表示された。この表示は、ドライバーが自由に設定できるようになっていた。
大林晃平: こういう内装こそルノーのお家芸というか、フランスの小型車らしい内装といえる。まさにこの色の「トゥインゴ」を知っている人が愛用していたため、この内装もイヤというほど見てきたが、何一つ不満のない大変優れたものだったことを思い出す。エアコンのスイッチやシガーライター、ウインドレギュレーターなどをミントグリーンで仕上げたセンスがなんともニクく、凡百なデザイナーやつまらない国の上司では生産へゴーのハンコを押さないだろう。しかしこの処理もマイナーチェンジで失ってしまい、徐々にトゥインゴそのものも2代目に進化した過程で、面白味を失っていってしまうのは残念であった。
Photo: Klaus Kuhnigk
フランスは、1983年に発売された「ルノー11TSEエレクトロニック」で、初めてデジタルコックピットを体験した。この特別モデルの鮮やかな色のディスプレイは、それまでの地味なハッチバックに未来を感じさせた。
大林晃平: メーターカウルを廃止し、助手席から一直線になっているデザイン処理がお洒落(最近、ホンダがフィットでこういう処理を採用している)。そのデザインに呼応するように縦に操作するエアコンコントローラーや、ドライバー左手に整然と並べられた各種スイッチ類など、デジタルメーターに合わせたデザインといえる。ふんわり快適そうなシートや、スマートなステアリングホイールデザインも魅了的だ。大型の灰皿(かなり大きいはず)が堂々と備わっているのが、当時のフランス車らしい。ゴロワーズの吸い殻とか山盛りに詰めて使用するのだろう。オーディオなども隠れるような蓋つきとなっている(盗難防止措置)。
Photo: Renault
プジョーのクエーサー コンセプト(1984)は、グループBのモンスターである「205 T16」をベースに、600馬力のターボ4気筒を搭載していた。その奇抜なコックピットは、クレイジーな全体コンセプトにマッチしていた。赤いレザーシートに加えて、SF映画にインスパイアされたデジタルディスプレイが目立つ。センターコンソールにはナビゲーションシステム用のスクリーンまであるのが未来的(実際に作動はしそうにないが)。
大林晃平: 超ド派手。さすがはフレンチという配色と形状。デジタルメーターにも派手な数字が、所せましと並び、どの数字を読むべきなのか悩みそうだ。その割には助手席前のスイッチ類やオーディオなど、年代を感じるアルミパネル処理なのが可笑しい。まあこのまま生産化されなくて良かった、という気もする。
Photo: PSA Groupe
ピニンファリーナの協力を得て製作された「キャデラック アランテ ラグジュアリー コンバーチブル(1987〜1993)」の丸型計器をデジタルで再現した。1988年からは、オプションでアナログ計器を無料で注文できるようになった。デジタル計器に納得できない顧客も多かったようだ。
大林晃平: 世界最長の生産ラインを誇り、専用の747で大西洋を越えて生産された「キャデラック アランテ」。個人的には決して嫌いでないし、そういったストーリーも含めて憎めない一台である。あえてアナログ風味を残したメーターパネルや、お爺さんの杖のような形状のオートマチックトランスミッションセレクターを皮で仕上げた(巻いたのだろう)処理など、意外とコンベンショナルな感じである(まあキャデラックを買える顧客層を考えれば正解といえる)。ちょっと長距離クルーズで疲れそうなステアリング形状と、ずらっと並んで使い間違えを誘発すること必須なシートコントローラーが気になるものの、そういう部分に目くじらを立ててはいけないのが、アメリカ車である。
Photo: Christian Bittmann / AUTO BILD
1980年に発表されたシトロエンのスタディモデル、「カリン」では、デジタル表示のスピードメーターを中心に、さまざまな機能のボタンが円形に配置されていた。ステアリングホイールのハブには、ビルトイン電話のボタンが配置されていた。また、このコンセプトカーは外見も変わっていて、ルーフがピラミッド型になっていた。
大林晃平: まるで宇宙船のようなシトロエンのコンセプトモデル。非現実的はあるものの、ショーカーなわけだし、これくらいの未来の夢を見せて欲しい。日本のショーカーも昔はそうだったのになあ・・・。まあ実際問題としては、ステアリングホイールに合わせて設定されたスイッチ類はまだしも、その内側に設置された数々のスイッチ類を操作するためには、えらく腕を伸ばさなくてはならないことが予想され、やはり走行中にできるかどうかは保証できない配置だ。でもそんなことにツッコミをいれることさえ忘れてしまうほど、配色を含めてお洒落なことは言うまでもない。
Photo: PSA Groupe
1999年に発売された「BMW Z22」のインテリアは、現在のコックピットを予感させるものだった。スタディモデルでは、現在の多くのモデルと同様に、ほとんどの機能が中央に配置されたタッチスクリーンとマルチファンクション(多機能型)ステアリングホイールのボタンで操作されていた。一方、カメラからのライブ映像は「バックミラー」に表示されている。
大林晃平: 使いにくそうなステアリングを除けば、この「Z22」はメーター以外にもクリーンなカラーリングや形状など魅了的な部分は多い。またセンターに備わるセレクターなども未来的だ。蛇足ながら最近のBMWで気に入らないのは、タコメーターが逆回転なことで、そもそもエンジン屋という名前を持つBMWがこういう処理を大切なメーターパネルに施すことが理解できない。せめて乗る人が正回転か逆回転かを選べるようにするべきだし、そういう切り替えがスイッチひとつでできることこそがデジタルメーターの利点なのではないだろうか? そういう進化はできないものなのだろうか?? 残念でならない。
Photo: BMW Group

Text: Elias Holdenried
加筆: 大林晃平