このクルマなんぼ? ブルネイのスルタン国王特注のメルセデスCL700 AMG販売中 そのどこがどう特別なのか?

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ブルネイの元スルタン国王の愛車であった、メルセデスCL 700 AMG(1998)。このクルマは、元々、ブルネイのスルタン国王が所有していたと言われる、そんな7.0リッターV12を搭載した、希少なメルセデスCL AMGが、現在、イギリスで販売されている。価格とともにすべての情報をお届け。

「C140」シリーズの中でも極めて特別な「メルセデスCL」が、今、イギリスで販売されている。
ボンネットの下には、496馬力の7.0リッターV12(M120)が鎮座し、最初のオーナーはブルネイのスルタン国王と言われている。
しかし、このラグジュアリークーペの正確な呼称には、いくつかの疑問がある。

販売されているのは、「メルセデスCL700 AMG」というクーペだ。
世界に2台しかないとされている。
しかし、AMGによる「CL700」の製造数に関するメルセデス側の公式情報はない。
それは、「C140」がこのような形で正式に発注されたことがないからである。
しかし現実的には、「Sクラス(W140)」や「SL(R129)」と同様に、CL(C140)でも、「600」をAMGに持ち込み、アファルターバッハで、V12を7.0リッター、あるいは7.3リッターにボアアップしてもらうことができた。
7055ccのV12は、それまでの394馬力、570Nmから496馬力、720Nmへと大きく進化した。
さらに「73」バージョンでは525馬力、750Nmを発揮し、「SL73 AMG」は世界最速のロードスターとなった。
7.0~7.3リッターへの排気量アップに加えて、AMGの改造では、ブレーキシステムの大型化やマニホールドからの排気システムが採用されていた。
約半世紀前の当時のその部分の改造費用は?
約10万マルク(約680万円)という高額なものだった。

CLのエンジンルームをほぼ埋め尽くすほどの巨大な7.0リッターV12。最高出力496馬力、最大トルク720Nmを発揮する。

ブルネイのスルタン国王のための特別生産車

しかし、謎のひとつは、「CL」の正確な呼称である。
最初の個体では、「CL600 7.0 AMG」と表示されていたが、後に「CL70 AMG」という1台もあった。
専門家によれば、その後、記念碑的な7.0リッターV12を搭載した「C140」は、合計で、わずか18〜25台しかなく、通常は「CL600 7.0 AMG」や「CL70 AMG」という名称で呼ばれていたという。
しかし、英国のメルセデススペシャリスト、「エドワード ホール(Edward Hall)」社によれば、この「C140」は最初から「CL700 AMG」として登録されていたという。
これは、ブルネイのスルタン国王のために特別に製作されたものだという。
数千台のコレクションの大半とは異なり、この「CL AMG」はブルネイには納車されず、バークシャーに在る国王の英国邸に置かれたままであった。
1998年に、購入のために必要な手続きを担当したのは、メルセデスディーラー「Greenoaks Maidenhead」であった。

CL 700 AMGという呼称についてはあまり知られていない。ディーラーによれば、C 140の納車時にはこの写真のようになっていたという。

AMGカスタム7.0リッターV12

1998年に初登録された右ハンドルの「CL」は、ブルネイのスルタン国王の後、さらに2人のオーナーを経て、現在までに102,351kmを走行してきた。
その間の歴史が隙間なく記録されているかどうかは不明だ。
しかし、写真を見る限り、この「CL」は非常に手入れの行き届いた状態であるように見えるが、これは過去2年間に大規模なメンテナンス作業が行われたことにも起因しているのかもしれない。
例えば、V12はオーバーホールされ、ブレーキは全面的に交換され、サスペンションも一部更新されており、19インチのモノブロックホイールも再調整されている。

そして、カスタムカーならではの、充実した装備が施されている。
ダークブルーとグリーンが交互に現れるフリップフロップ塗装のような「Designo LCP」(カラーコード021)の特別塗装だけでも、1万2千マルク(約82万円)以上の追加費用がかかっており、グリーン/ブラックのバイカラーの「Designo」レザーを使用したインテリアは、グリーンのフロアマットも含めて、お買い得以外の何物でもないだろう。
加えて、キセノンヘッドライト、パーキングエイド、電動リアブラインド、メモリー機能付きシートなど、数々の快適装備も装着されている。

90年代風の上品なインテリア: グリーン/ブラックのバイカラーレザーシートとダークウッドの組み合わせ。失礼ながら、スルタンの王様、なかなかセンスいいじゃん、と思う。

価格? 100,000ユーロ(約1,350万円)以上

「C140」が、「CL600 7.0 AMG」、「CL70 AMG」、「CL700 AMG」のどれになろうと、2台だけだろうと、最終的に25台だけだろうと、ひとつだけ確かなことがある。
この特別なカラーコンビネーションは、おそらくAMGモデルの中でも最も希少なモデルのひとつだということだ。
もちろん、これだけの希少性には、それなりの価格が付いてくる。
メルセデスのスペシャリストである、「エドワード ホール」社は、この元王室所有の希少なAMGに、現在89,995ポンド(約1,400万円)という価格を提示しているという。
2019年に、エッセンで白の「CL600 7.0 AMG」が43,700ユーロ(約590万円)で競売にかけられたことを考えれば、お買い得とは決して言えない。
しかし、それ以来、価格は上昇し続け、「CL600 7.0 AMG」であれ、「CL70 AMG」であれ、「CL700 AMG」であれ、中古車市場には他にはほぼ存在しないのが現状だ。

こういったどこかの王様のクルマの話題というのは、定期的に?登場し、たいていは驚くようなカラーリングとスペックの特注されたモデルだったり、フェラーリの限定モデルが埃だらけになって発見されたりとか、そういう感じの話題である。
そういう中では今回の「CL」は意外と地味、というか、ちゃんと実用にも使えそうな車輛であり、クルマとしての趣味も、特に内装の趣味などは悪くはない感じの一台だ。

それが証拠に、この「CL」は王様のあとのオーナーがガンガン乗ったらしく、かなり過走行の一台となっている。価格に関しては、いくら王様が乗った希少車とはいえ、「高いなぁ」と正直思うが、「このクルマ、もともとは王様のクルマだったんだぜ」と吹聴することができるので、その割り増し料金と考えるべきなのだろう。
21世紀の現在も世界の王様のガレージには、毎月特注車が増え続けているかどうかはわからないが、たまにはこうして一般人の目の前に登場して、楽しい話題を提供してほしいと願う。

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Edward Hall