初テスト 果たして新しいフランス製高級サルーンはドイツをはじめとするライバルに勝てるか? 新型DS 9に初試乗&評価
2021年6月14日
ついにフランスにもまた高級サルーンが登場したのか!?
新型DS 9を初チェック!全長4.93メートルのDS 9には、フランス大統領が乗ることになっている。しかし、最初に試乗するのは我々の方だ。
フランス人に拍手を送りたい。
彼らの勇気を称えたい!
昨年、ドイツで販売された96,209台の高級車クラスの94.8%は、アウディA6、BMW 5シリーズ、メルセデスEクラスだった。そして今、DSはそのパイを奪おうとしているのだから。
1955年に発売された「La Déesse」と呼ばれる女神、つまり昔の「DS」は、60年後に独立したブランドになった。昨年は、2,773台の「DS 3」と「DS 7」がここドイツで販売された。
そして今回、満を持して、「DS 9」が登場したのだった。
リアの空間はまさにトップクラス
4.93メートルの車の前に立つと、堂々としたラジエターグリルが見える。ロックを解除すると、2つのLEDヘッドライトの3つのリフレクターが自転して、「もっと見てください!」と言わんばかりだ。「DS 9」はフランス大統領のショーファーを務めることになっているので、まずはリアに乗ってみることにしよう。ホイールベースは2.90mと、実にゆったりしているが、マクロン大統領は1.73メートル、前任者のオランド大統領は1.70メートル、サルコジ大統領は1.66メートルしかないので、「プジョー208」でもいいかもしれない(笑)。リアシートとフロントシートにはオプションでマッサージ機能が付いており、レザーはバイエルンの牛を使用し、フランス人の馬具職人が18カ月かけてシートの形状を調整したという。
エンジン、シャシー、価格、結論
試乗車は、180馬力1.6リッター4気筒+110馬力電動モーターを兼ね備えた「E-TENSE 225」で、システム出力は225馬力だ。プラグインハイブリッドのバッテリーは11.9kWhで、純粋な電気駆動であれば48kmの走行が可能なはずだ。2022年初頭には、航続距離60km、最高出力250馬力のプラグインハイブリッドモデルが登場するほか、プラグと全輪駆動システムを兼ね備えた最高出力360馬力のハイブリッド車の開発も予定されている。その先には、「E」を完全に排除した225馬力の1.6があり、エントリーレベルの価格は47,550ユーロ(約640万円)である。私たちの試乗車は52,810ユーロ(約710万円)で、完全装備であれば64,760ユーロ(約874万円)となっている。果たしてその高価な値段なりの価値はあるだろうか?路面がスムーズで均一であれば、その価値はあると思う。フロントカメラがクルマの前方にある道路の凹凸を検知し、サスペンションがそれに合わせて調整してくれるし、ノイズレベルもトップクラスだからだ。もちろん、ボタンの感触も、このロータリーコントロールの金属面を使った大きな音と静かな音を実現している。
しかし、バンピーでボコボコな道では馬脚をあらわす。そして、スロットルを踏み込みすぎないことも大切だ。エンジンの回転が上がってくると、1.6はうなりを上げ始め、緊張感のあるエンジンとなる。そして残念なことに、荒れた路面では、居心地の良さは終わってしまい、かなり車が揺れるようになる。どうすればいいのか?無理をせず、綺麗に滑るように走らせることが肝心だ。つまり滑らかな道路をゆったりとしたペースで走らせるのに適した高級セダンなのだ。
そして、降りるときにはぜひCピラーを見てほしい。女神のターンシグナルを彷彿とさせるポジションライトが上部に設置されているのだ。
テクニカルデータ: DS 9 E-TENSE 225
● エンジン: 4気筒ターボ、フロント横置き+電動モーター ● 排気量: 1598cc ● エンジン最高出力: 180PS@6000rpm ● システム最高出力: 225PS ● 最大トルク(内燃機関エンジン): 300Nm@3000rpm ● 駆動方式: 前輪駆動、8速AT ● 全長×全幅×全高: 4934×1855×1460mm • 乾燥重量: 1845kg • トランク容量: 510リットル ● 最高速度: 240km/h ● 0-100km/h加速: 8.7秒 ● 燃費: 62.5km/ℓ ● CO2排出量: 37g/ℓ ● 価格: 52,810ユーロ(約710万円)
結論:
この車は、様々な角度からディテール、楽しむための車である。そしてそれらの部分は値段なりの魅力を満たしている。しかし悪い道では馬脚をあらわし、揺れるシャシーと、わずか1.6リッターのエンジンはややパワーが足りない。
AUTO BILDテストスコア: 2-
いよいよという期待を込めてテストドライブしたDS9(もはや、シトロエンと言ってはいけない、というのがなんだか複雑な気持ちだ)だが、なかなか厳しい評価となった。中でも一番残念だったのは、悪路で乗り心地が十分ではない、というくだりで、そもそもフランスの高級サルーンだったら、それは良くなくっちゃいかんでしょう、という部分である。アンダーパワーなのはまあ仕方ないのかもしれないが、乗り心地の悪いフランス車というのはいったいどういうものなのか、せめてその部分くらいは圧倒的に他のドイツ車とかに勝っていてほしい部分であった。数々の魅了的で凝ったディテールは素敵である。しかしそういった表層部分だけがDSの特徴だったとしたら、これから苦戦することは間違いないし、なんとも残念なのだが・・・。
Text: Andreas May
加筆: 大林晃平
Photo: Stellantis