このクルマなんぼ? え? この6輪メルセデス ピックアップトラックが165万円? 安くないですか?
2021年6月10日
ユニークな2001年製メルセデスML320 6×6。
唯一無二のメルセデスML320 6×6のピックアップトラックは、非常に低価格で販売されている。現在、eBayでは、3アクスルのモンスターピックアップが、たったの15,000ドル(約165万円)だそうだ。
ひょっとして6×6トレンドが生まれ始めているのだろうか?
つい先日、「メルセデスX350d 6×6」に関してレポートしたばかりだが、今度は3アクスルのメルセデスSUVがeBayで販売されている。
この2001年式「メルセデスML320」は、6×6のモンスターピックアップとして改造されている。
とはいえ、3軸目は駆動されていないので、あくまでも4×6であることを明記しておかなければならない。
「X350d 6×6」が10万ユーロ(約1,350万円)以上するのに比べれば、このMLは本当にお買い得だ。
何よりも朗報なのは、このモンスターピックアップの価格が、わずか1万5千USドル(約165万円)だということだ。
しかし、ドイツや日本で車検にすんなりと通るかどうかは、少なくとも疑わしい。
特に、広告には実際の変換に関する多くの情報が記載されていないからだ。
ベースとなっているのは、オリジナルのAMGパッケージを装着した2001年式の「メルセデスML320」で、搭載されている3.2リッターV6(M112)が218馬力を発揮する。
標準的な状態でも、この6気筒は100kmあたり約14リットル(7.1km/ℓ)のガソリンを消費する。
それが、アクスルや荷台を追加し、数百kgの荷物が増えれば、燃料消費量は大幅に増えているはずだ。
そのため、この「ML」はLPG車(LPガス使用車)に改造され、コスト削減が図られている。
「メルセデスMクラス」は、最初のSUVのひとつだ。
1997年に発表された「メルセデスMクラス」は、SUVの先駆けとなった。
ヨーロッパでは、1998年3月からメルセデスの社内で「W163」と呼ばれるモデルが提供され、2005年には後継モデルが登場した。
アメリカのタスカルーサ工場で生産されていたこのシリーズは、特に当初、品質面で大きな問題を抱えていたため、1998年には早くも最初のマイナーチェンジが行われた。
2002年に行われた大規模なマイナーチェンジでは、1,000点を超える部品が交換され、メルセデスはこの問題に本格的に取り組むこととなった。
「Mクラス」のエンジンレンジは、5速マニュアルトランスミッションのみの4気筒エンジンを搭載した「ML230」から、V8を搭載した347馬力の「ML55 AMG(M113)」まであり、2種類のディーゼルエンジンを搭載した「ML270 CDI」と「ML400 CDI」も含まれていた。
英国ノッティンガムで販売されている、この「ML320」の走行距離は23万5千km弱と表示されているが、残念ながらメンテナンス履歴や改造の有無などの具体的な情報はない。
ただ、このピックアップは6×6と宣伝されていても、説明文では第3車軸が駆動されていないため、実際には4×6であると解説されている。
少なくともピックアップへの改造は、一見して中途半端に合理的な印象を与える。
市松模様の荷台にはロールバーが設置され、排気口は第1リアアクスル前の後方から右ハンドルの運転席側に移されている。
さらに、オリジナルの18インチAMGホイールに、新たに6本のがっしりしたオフロードタイヤが装着されている。
一見、15,000ドル(約165万円)が妥当な価格に見えても、購入者は高額な修理やメンテナンスに直面する可能性は十分あるから真剣に購入を考えている人は、この3アクスルの「ML」を購入する前によく見ておくべきだろう。
愛用している方か、大ファンがいたら申し訳ないが、この最初の「ML」はなんともメルセデスベンツらしくない、魅力のない自動車だった。ポリバケツのように質感のない内装、フガフガでとりとめのないサスペンションセッティング、ぶかぶかでダイレクト感のないオートマチックトランスミッションとハンドリング、そしてあまりにも色気にも機能性にもかけたスタイリング。おそらくメルセデスベンツ史上でもこれほどの駄作SUVはこの「ML」か、ラクダのような「Rクラス」なのではないか、と言えるほどの自動車だった。
このころに「ML」が出演した映画「ジュラシックパーク」ではティラノサウルスに蹴っ飛ばされて、転がりながら大破していたが、そういう役柄がピッタリのようなクルマだったといえる。
それが6輪になって魅了あふれるクルマに変貌したかというと、そんなことはまるでない。うしろの2輪はダミーだし、無理やりニコイチにした姿も違和感と不可思議感満載のスタイリングである。内装もあのポリバケツのような、質感というものをどこかに置き忘れてしまったままだから、イイモノ感はゼロだ。だから165万円というのは妥当なところ、というか、欲しい人がいるのだろうか、と思ってしまうというのが正直なところだ。
街で見かけるものすごく変な存在感を醸し出すファッションとそういうものを好む生き方のヒト…。触らぬ神に祟りなしと、そっと離れて見守ってあげて欲しい。
Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: ebay.de/miro1606