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初テスト 320馬力高性能バージョンのアルテオン 新型VWアルテオンRの実力を試す

2021年6月9日

VWアルテオンRは、スポーツ性と日常生活への適合性を兼ね備えているモデルだ。

このクルマはかなり速い。新型VWアルテオンRは、最高270km/hに達することができる。320馬力の出力、全輪駆動、7速DSGなど、機能も充実している。他にはどんな特徴があるだろうか? 初試乗レポート。

総体的に判断して、「アルテオン」はVWのトップモデルだ。
2016年に生産中止となった素晴らしい「フェートン」の跡を継ぐのは、SUVの「トゥアレグ」ではなく、アルテオンだといえる。
320馬力の新型「アルテオンR」の技術はMQBモジュラーシステム、つまりゴルフから来ている。
それは4.87mのセダンで活かせるのか?
早速、試してみよう。

全長4.87mのアルテオンは、十分なスペースを確保している

アルテオンの外観は、特にこの「R」バージョンで非常に優れたものになっている。
ワイドなグリル、ワイドなボンネット、伸びやかなシルエット、そしてロングテール。
フラットで、スクワット(低姿勢)で、エレガントだ。
しかし、このハッチバックはかなり実用性の高い船だ。
それに応じて、提供されるスペースもゆったりとしている。
お勧めは運転席のエルゴコンフォート(ErgoComfort)シートだ。
大きくて形がよく、横方向のサポートも充実している。
リアも風通しがよく、足元のスペースも広いのだが、背の高い人は少し頭を倒さなければならない。
それに反して、かつてVWの不動の強みであった操作系は、批判を我慢しなければならないだろう。
タッチスクリーン(Discover Pro)は反応が遅く、ボリューム用の回転式ノブはなく、操作メニューも控えめに言っても分かりづらく、音声コントロールはBMWやベンツに比べて1世代遅れている。

フラットで、スクワットで、エレガント。VWはアルテオンRに非常に魅力的なボディを与えた。

スポーツカーと同等のパフォーマンス

また、ステアリングホイール上の多くのボタンは単純に実用的ではなく、操作ミスも珍しくない。
加えて、クライメートコントロールなどの感度の悪いスライダーも操作しづらい。
「アルテオンR」には、2.0リッターTSIが搭載されている。
最新の進化段階にある「EA 888」シリーズの4気筒で、最高出力320馬力、2100rpm時から、420Nmという最大トルクを発揮する。
これにより、「アルテオンR」は、0から4.9秒で100km/hに到達する。
これは速い、とても速い。
5秒という時間は、昔も今も、急加速の一種のバリアだ。
長い間、それを超えることはスーパースポーツカーでのみ可能だった。
しかしVWは驚くほど簡単にそれをクリアしてのけた。
そして、最高速度は標準で250km/hだが、1,500ユーロ(約20万円)の追加料金と試乗車の20インチホイール(タイヤ245/35、1,310ユーロ=約17万円)を装着すると、実際には270km/hまで加速できる。

とても速い。アルテオンRは、0から4.9秒で、100km/hに到達し、最高速度は270km/hだ。

VWはレジでしっかりと稼ぐ

「TSI」は、力強く、回転数が高く、キビキビしていて、温かみのある音がし、回転数を上げても決してうるさくなく、うっとうしいとは思わない、優れたエンジンである。
7速デュアルクラッチトランスミッションは、発進時には古き良き伝統にのっとった動きをするが、移動時には迅速かつ丁寧に反応する。
VWは「R」をノーマルの「アルテオン」よりも、硬めにチューニングしており、ボディは20ミリ低くなっている。
そのため、特に20インチホイールを装着したサスペンションは、かなりドライで、横方向のジョイントを、言ってみれば元気よく受け止めてくれる。
まあそれは好みの問題だが・・・。
スムーズで流れるようなハンドリングだが、トルクベクタリング(駆動力をリアアクスルに選択的に配分する機能)を含む全輪駆動システムにもかかわらず、全体的にはおそらく期待していたほどの機敏さはない。
しかし、ロングホイールベースと広大なリアエンドのおかげで、コーナリングは滑らかなものに仕上がっている。

高価。アルテオンRは63,095ユーロ(約845万円)から販売されているが、試乗車はなんと71,065ユーロ(約952万円)もするものだった。

その価格に気づくまでに時間がかかった。
「アルテオンR」は60,095ユーロ((約845万円))からとなっている。
我々の試乗したテストカーの装備では、71,065ユーロ(約952万円)という値段だ。
残念ながら、その価格には正直驚かされた。

結論:
「アルテオンR」は、卓越した走行性能と日常生活への適合性を両立させている。
だから、MQBをベースにしたのだ。
そしてそれは正解となっていると言える。
しかし、何よりも驚くべきは、その価格の高さだ。
AUTO BILDテストスコア: 2-

文中に「フォルクスワーゲン フェートンの後を継ぐのがアルテオン」だということは賛同しかねるが、「アルテオン」がフォルクスワーゲン最上級セダン(といってもハッチバックモデルではあるが)ということは確かである。
性能もその内容も、最上級モデルに相応しいものだと思うし、街で見かけるとそのルックスは確かに他のフォルクスワーゲンモデルとはかなり異なった存在感を醸し出している。だがやはり驚いたのはその価格で、なんだかんだで日本円にして1,000万円という価格は、フォルクスワーゲン(国民車あるいは大衆車)という名前を授かった自動車として、いったいどうなのだろう、と思ってしまう。
そもそもそういうプレミアムブランドとしてアウディがあるんじゃないのか、とも思うし、民衆のための自動車が1,000万と聞くと、なんとも複雑な気持ちになってしまう。
「アルテオン」を余裕で購入できる方や、メーカーにとってみれば、そんなこと大きなお世話なのかもしれないが、やはりフォルクスワーゲンというのは、だれのためのどんな自動車なのか、もう一度再考してもよいのではないか。つくづくブランディングというものは難しいものである。

Text: Dirk Branke, Berend Sanders
加筆: 大林晃平
Photo: Toni Bader / AUTO BILD