F1アゼルバイジャンGPレポート 最終盤ラスト3周での大ドラマ フェルスタッペンの悲劇
2021年6月8日
F1 バクーGP, 結果
フェルスタッペン、悲劇のドラマ。マックス フェルスタッペンは、トップを走っていたバクーでのレースで、パンクし、無念のリタイアを喫した。一方で、ベッテルはアストンマーティン移籍後初の表彰台、チームに2位フィニッシュの贈り物。
アゼルバイジャンGPでのマックス フェルスタッペン(レッドブル)の悲惨なドラマは何だったのか!?
フライングダッチマン(空飛ぶオランダ人)は、終了4周前までレースを支配していたが、その後、左リアタイヤが吹き飛んでしまい、スタート・フィニッシュラインの直前で、320km/hのスピードで右の壁に激突し、ふてくされながらも無傷でレッドブルを降り、怒りに任せて左タイヤを蹴り上げたあと無念のリタイア、更にファステストラップの追加ポイントも失ってしまった。
これを受けてレースは一時中断された。
レース再開後、チームメイトのセルジオ ペレスが、セバスチャン ベッテル(アストンマーティン)とピエール ガスリー(アルファタウリ)を抑えて勝利し、ファステストラップのポイントも獲得した。
レッドブルも怒りは収まらない。
「何の警告もなかった」とチームマネージャーのジョナサン ウィートリーはピット無線で語る。
フェルスタッペンのハードタイヤは33周目で破裂した。
しかし、レースの神様は完全にレッドブルに不公平ではなかった。
終了まで2周となるスタンディングリスタートで、2位につけていたハミルトンが第1コーナーの手前でブレーキポイントを外し、非常口に突っ込んでしまう。
メルセデスのスターは、ニキータ マゼピンに続く15位でフィニッシュし、その結果、セルジオ ペレスがF1での2勝目、移籍後、初勝利をレッドブルにもたらした。
こうしてフェルスタッペンは、少なくともF1ドライバー世界選手権のトップの地位を維持したが、レース後、「トップの座を維持できたのはよかったが、本当は優勝してその差を広げたかった」と、本音で悔しさをあらわにしていた。
フェルスタッペンは、不運にもリタイアしたが、今回もまた、見事なパフォーマンスで世界選手権タイトルへの野心を強調した。
ポールポジションからスタートしたシャルル ルクレールのフェラーリを追い抜き、さらにピットストップでの幸運にも恵まれて、それまで首位に立っていたルイス ハミルトンをも追い抜いた。
初のF1チャンピオンへの彼のモチベーションは高い。
このようにして、レッドブルは初めて2人の強力なドライバーを活かすことに成功した。
メルセデスのバルテリ ボッタスとは異なり、メキシコ人のペレスは予選でもフェルスタッペンに続き、好成績を挙げた。
決勝では、そのおかげで、ペレスは再スタート時にミスをすることなく、ハミルトンから重要なポイントを奪うことができ、最後には勝利することもできた。
つまり、レッドブルにとっては、結果的にはすべてがうまくいったのだ。
一方、2台目のメルセデスのバルテリ ボッタスは12位にとどまった。
ブラックアローにとっては真っ暗な一日となった。
一方、タイヤサプライヤーのピレリは、批判を我慢しなければならない。
ベッテルのチームメイトであるランス ストロールも、ピレリのハードタイヤで32周を走った後、彼の左リアタイヤもバースト。
カナダ人レーサーはアストンマーティンのコントロールを失い、メインストレートでフェルスタッペンと同じように時速320kmで壁に激突した。
TVの解説者、元F1レーサー、ラルフ シューマッハは、「これらは、タイヤの独占供給メーカーとしてはあってはならないことだ」とピレリを厳しく諌める。「そこにチームのミスは見当たらない。突然の破裂は、むしろタイヤそのものの製造に過大な負荷がかかっていたことを示している。」
ピレリは、どうやらリアタイヤの問題を知っていたようだ。
イタリア人は以前から、リアタイヤのゴムの空気圧を19PSIから20PSIに引き上げていた。
ある人の悲しみは、別の人の喜び。
セバスチャン ベッテルは、フェルスタッペンのタイヤブローアウトとチームメイトのタイヤブローアウトの両方から恩恵を受けた。
11番グリッドからスタートしたアストンマーティンのスタードライバーは、長い第1スティント(19周目まで)で、2位にまで浮上した。
2019年ブラジルGP以来のことだ。
そして、ベッテルは、最初のセーフティカー導入後の再スタートを利用して、シャルル ルクレールのオーバーテイクにも成功した。
ベッテルにとって、これは特別な満足感だったに違いない。
彼の元チームであるフェラーリは、ルクレールがレースでポールポジションを獲得したにもかかわらず、前走者たちのスピードに合わせることができないで苦戦していた。
ベッテル自身、ピットラジオで喜びを自由に表現している。
「これは本当に素晴らしいことだよ。僕は今、雲の上の存在だよ」と、ファンからの「ドライバー・オブ・ザ・レース」に選ばれた彼は言う。
3位に入ったピエール ガスリー(アルファタウリ)も健闘した。そして、彼のチームメイトである、F1新人の日本人レーサー、角田裕毅も自己最高となる7位フィニッシュ、開幕戦以来の入賞となり、ガスリーとともに、チームに貴重なポイントをもたらした。
フェルスタッペンは残念だったが、ホンダエンジンを搭載した3台のマシンは、1位、3位、7位フィニッシュという、上々の成績を収めた。
次回は、6月20日におこなわれる第7戦、カナダGP(ジル ヴィルヌーヴ サーキット)だ。
アゼルバイジャンGP(6.003kmのコース×51周: 合計306.153km)
2021年6月6日
優勝: セルジオ ペレス(メキシコ) – レッドブル 2時間13分36秒41
2位: セバスチャン ベッテル(独) – アストンマーティン +1.385秒
3位: ピエール ガスリー(仏) – アルファタウリ +2.762秒
4位: チャールス ルクレール(モナコ) – フェラーリ +3.828秒
5位: ランドー ノリス(英) – マクラーレン +4.754秒
6位: フェルナンド アロンソ(スペイン) – アルピーヌ +6.382秒
7位: 角田裕毅(日本) – アルファタウリ +6.624秒
8位: カルロス サインツ Jr(スペイン) – フェラーリ +7.709秒
9位: ダニエル リチャルド(豪) – マクラーレン +8.874秒
10位: キミ ライコネン(フィンランド) – アルファロメオ +9.576秒
Text: Bianca Garloff
Photo: AUTO BILD