このクルマなんぼ 走行距離たったの995km 80年代の高品質ベンツ W124型Eクラス 果たしてその値段は?

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今、走行距離わずか995kmのメルセデス230Eが販売されている。

1987年式のメルセデス230E? それは別に珍しくはない。しかし、それはオドメーター上の数字が1,000km未満の実質的に新車というのはまったく別の話だ。

一見すると何の変哲もないこのシルバーの「メルセデス230E」は、ある種、本当の意味でのコレクターズアイテムであることがわかった。
この「W124」は何十年も保管されていたため、実質的に新車のような状態だ。
34年の時を経て、アナログ式メーター上の走行距離はわずか995km。
このタイムカプセルが、今、メルセデスのエキスパート、メカトロニック社によって販売されている。

地味で退屈な(?)「メルセデス230E」の「アストラルシルバー(735)」は、世の中では決して珍しい個体ではない。
1984年末から1997年にかけて(1995年半ばまではセダンのみ)、「W124」は何百万台も製造・販売された。
当初、「ミッドクラス」と命名されたこのモデルは、数多くのバリエーション(セダン、エステート、クーペ、コンバーチブル)と、多種多様なエンジンが用意されていた。
その中には、500E(1993年まで)、E500(1993年から)といった、人気の高いトップモデルや、希少なAMGバージョンである「300E-24 3.4 AMG」、「E36 AMG」、「E60 AMG」などがあった。
1987年に製造されたシルバーの「230E」は、一般的にはコレクターカーではない。
しかし、それが34年前の新車であれば話は別だ!

理論的には、W124は今すぐにでも使える。しかし、コレクターズアイテムは、日常的に使うにはあまりにももったいない。

この「230E」は33年間も保管されていた

ここで紹介する「メルセデスベンツ230E」がまさにそうだ。
シュトゥットガルト近郊のプレイデルスハイムにあるメルセデスのスペシャリスト、メカトロニック社が、最近販売開始した「W124」のような状態の個体は極めて珍しいはずだ。
驚くべきことに、この「230E」は1987年に製造されたもので、メーター上の走行距離は995kmしかない。
この「W124」に、メルセデスが「Eクラス」という名称をシリーズに与えたのが1993年半ばであった。
それまでは「ミドルクラス」として扱われていた。
1987年5月27日、ブラウンシュヴァイクのメルセデスベンツ支店に納められ、ショールームに置かれた。
目立たないセダンはショールームに置かれていたが、明らかに装備の少ない「W124」には誰ひとりとして興味を示さず、約1年後には倉庫に置かれることになった。

インテリアは昔の格調高いベンツらしいたたずまいだ。34年間ほとんど使われていなかった。マニュアルトランスミッション、手回しのウインドー、エアバックなしというシンプルさである。

「W124」の価格は5万ユーロ(約665万円)弱の予定。
結局、この保管期間は33年に及んだ。
33年という長い年月の間、メルセデスは安全かつ乾燥した状態で、しかも使われることなく放置されていたのである。
そして2021年3月、再びディーラーに発見され、メカトロニック社に購入を持ち掛けたのであった。
この132馬力の「230E」は、マニュアルトランスミッションが装着されており、最高のコンディションを保っている。
アストラルシルバーの塗装は新品同様で、プラスチックバンパーは色褪せておらず、グレーの布製インテリアはほとんど使用されていない。
この素晴らしい状態には、装備の少なさにもかかわらず、購入希望者を納得させるはずだ。
トレーラーヒッチ、ABS、電動サンルーフ、オートマチックアンテナ、ラジオMBオーディオ以外は搭載されていない。
純粋に理論的に考えれば、メカトロニック社が新鮮な顧客サービスを施し、新しく検査も受けているので、「W124」はすぐにでも新しいオーナーのもとへと旅立てる準備は整っている。
一方で、このワンオフの「230E」は、日常的に使うには間違いなくもったいなさすぎるし、おそらく高すぎる。
メカトロニック社の提示する49,500ユーロ(約658万円)は、この「W124」が、マニアかコレクター用のものだということを明確に示している。
ドイツでは現在、この「W124」と同等の状態と走行距離の個体は他には提供されていないので、比較価格を探すことはできない。

658万円というのはこの当時の新車価格(日本における)とほとんど同じであり、この期間の年月の保管料と考えれば望外に安い。そしてその程度も、内容も文句はない。「まごうかたなきメルセデスベンツ」というのは、本当はこういうもののことを言うのだ。
しかし、それだけの金額を払って手元に来るのは、手回し式のウインドーで、シンプルな手動調整のシートで、なんとも地味で飾り気のない「W124」である。
もちろん「W124」というのは名車だし、230Eでも十分良く走り、メルセデスベンツの本質をついた一台である、ということは個人的に20年近く、「W124」を乗った経験からわかっているつもりである。そしてその車のスペックとしては、MT、手回しウインドー、布のシート、アルミホイールではない普通のホイール、ABS、サンルーフ付き、という内容は、「実にもののわかったエンスージャスト向け」のものであることも確かである。そしてそんな地味だが、本質をついたスペックの「W124」を新車で買うことができる、というのは奇跡に近い。
だが…、そんな部分を理解してくれる人は世の中にどれだけいるのだろうか。あまりにもツウで、あまりにもマイナーな趣味人のための一台。そう考えると、この「W124」に700万円を払うという行為は、ものすごくレベルとハードルの高い話でもある。

Text: Jan Goetze
加筆: 大林晃平
Photo: Mechatronik