【新着情報】ポルシェからの新しいプログラム 各個人にあわせた個性化(カスタマイズ) お望みどおりのポルシェに仕立て上げ

274

ポルシェ エクスクルーシブ マニュファクチャリング(2021): インディヴィジュアライゼーション

700以上のオプションさえも、ポルシェにおけるオプションの一部であり始まりに過ぎない。ポルシェ911ターボS 20イヤーズ ポルシェ チャイナ エディションを含む。スポーツカーメーカーのポルシェは、「ポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥール」の一環として、個性的なオプションの幅を広げることを計画している。100ユーロ(約1万3,300円)の部品から7桁の価格のプロジェクトまで、何でも可能であると発表した。すべての情報をお届けする。

オートクチュールと言うべきか、プレタポルテと言うべきか、悩むところだが、ま、要は天下のポルシェがカスタマイズサービスの拡大を始めたという話だ。

すべてはリアワイパーから始まった!

1955年、ポルシェがマニュファクチャリングで実施した最初のスペシャルリクエストがすべての始まりだった。
現在、自動車を購入する際には、個性化というテーマがますます重要になっている。
ほとんどすべての有名メーカーは、社内の部門を通じて、顧客に車をカスタマイズするための幅広いオプションを提供している。
例えば、BMWの「インディヴィジュアル(Individual)」、フェラーリの「テーラーメード(Tailor Made)」、アウディの「エクスクルーシブ(exclusive)」、ランボルギーニの「アド ペルソナム(Ad Personam)」、メルセデスの「デジーノ マニュファクチュアリング(Designo Manufaktur)」などと呼ばれるプログラムがそうだ。
その中でも、カスタマイズの最先端を行くメーカーがポルシェだ。
このスポーツカーメーカーは、今、カスタマイズ用オプションのラインナップをさらに大幅に拡大しようとしている。

2017年6月の「911ターボSエクスクルーシブシリーズ」の発売に伴い、「ポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥール(Porsche Exclusive Manufaktur)」は誕生した。
しかし、ポルシェにおける個性化の歴史を理解するためには、過去を振り返ってみることに価値がある。
ポルシェは、早くも1978年には、いわゆる「スペシャルウィッシュ部門」が設立され、1986年にはチューニングブームに乗って、「ポルシェエクスクルーシブ」と改称された。
しかし、その礎は1955年にはすでに築かれていた。
最初のスペシャルリクエストは、ドイツの顧客が所有する「ポルシェ356」のリアウィンドシールドワイパーだったと、ポルシェのインディヴィジュアライゼーション&クラシック部門の責任者であるアレクサンダー ファビグは説明する。
つまり、ポルシェは、65年ほど前から顧客の特別なリクエストに応えようとしてきたのだ。
このようによく知られた例は他にもたくさんある。
例えば、1989年にアラブの首長が「ポルシェエクスクルーシブ」に注文した7台の「959」は、それぞれが完全に異なる色で仕上げられた。
ポルシェは2019年に、そのうちの特に目を引く2台の個体を博物館に展示した。

ポルシェでは車両キーのサイドパネルを交換することができる。これが最安値の15,000円。

ポルシェのカスタマイズの秘密は、その膨大な範囲にある。
113.05ユーロ(約1万5千円)で車両の色にペイントされたキーのコンポーネントパーソナライゼーションから、2019年に展示された「オークグリーンメタリック=OakGreen Metallic (22L)」というカラーの「ポルシェ カレラGT」のような完全なコンバージョンまで、ポルシェは顧客の希望に応じたパーソナライゼーションを提供している。
現在、世界中で納車された「911」の約4分の1が、「ポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥール」で多かれ少なかれ手の込んだ仕上げを施されている。

PTS塗装

個性化の基本要素のひとつに、ボディカラーのペイントフィニッシュがある。
ポルシェの世界では、購入後の特殊な塗装仕上げは「Paint To Sample」として、略して「PTS」と呼んでいる。
このオプションは古くから存在していたが、近年のGTカーの需要が非常に高まったことで、「PTS塗装」は特に米国などの市場で注目を集め、場合によっては5桁ユーロの追加料金が必要となっている。
5ケタユーロということは、つまりは100万円以上であるというわけだ。
一方、「PTS塗装」にまつわる評判は、世界中からPTSカラーのポルシェだけを集めた、約10万人のフォロワーを持つインスタグラムのページがSNS上に存在するまでになっている。

需要に追われたポルシェ

不思議なことに、「996」や「997」といった以前のモデルシリーズにも、特別な塗装仕上げのエクスワークスというオプションが用意されていたが、当時は「PTS」の塗装仕上げを選択する顧客は比較的少なかったという。
ポルシェが予想外のブームを迎えたのは、991世代、特に「GTモデル」の登場からである。
「アイリッシュグリーン(カラーナンバーコードY79)」、「スタールビー(82N)」、「シグナルイエロー(114)」などの「PTS塗装」を希望する顧客が、PTS車には特殊なステアリングが必要なため、ポルシェが供給できる色よりも突然多くなったのだ。
そのため、PTSカラーのポルシェを希望するすべてのお客様に対応できなかった。
その結果、すでに価値が安定していた特別色の「GTモデル」が、中古車市場では新車価格を大幅に上回る価格で取引されていた。

シグナルイエロー(114)」のPTS塗装は、このGT2 RSに約11,300ユーロ(約150万円)の追加費用がかかった。

ポルシェは、今、特別な色のポルシェを注文したいというすべての顧客の希望を叶えたいと考えている。
「そのために、キャパシティを大幅に増やしました」と、アレクサンダー ファビグは説明する。
彼のお気に入りのポルシェカラーは「オスロブルー(Z77)」だ。
「991」シリーズが導入された当初は、1日に最大5台のPTS車両を塗装することしかできなかったたが、現在ではすでに1日20台にまで能力は向上している。
そして、このプロジェクトはまだ始まったばかりだ。
「ポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥール」は、現行モデルシリーズの色や素材のカスタマイズに加えて、将来のスペシャルモデルの製作も担当している。
つい最近では、中国専用の特別モデル「ポルシェ911ターボS 20イヤーズ ポルシェ チャイナ エディション」が、「スタールビー(82N)」、「ガルフォランジェ(019)」、「ミントグリーン(22R)」、「オスロブルー(Z77)」、「バイオレットメタリック(W85)」の5色で発表された。
ポルシェはすでに、992台の「タルガ」の市場投入を記念して、992台限定の特別モデル「タルガ4Sヘリテージデザインエディション」を発売している。

タルガ4Sヘリテージデザインエディション

中古車もカスタマイズ可能

しかし、それでもまだまだこのプロジェクトは終わりではない。
ポルシェのクラシックモデルの精巧な修復作業と並行して、若い中古車のオーナーも、「ポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥール」を利用することができるのだという。
「ポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥール」では、「ポルシェ クラシック」との緊密な協力関係のもと、顧客の所有する車両を、場合によっては精巧に改造することができるようにもなっている。
これらのいわゆる「再委託」プロジェクトの背景にある考え方は、中古車を新車のように仕上げることができるということで、中古ポルシェオーナーたちは、当時の色や素材だけでなく、現在の製品ラインアップからも選ぶことができるようになっている。

最も手の込んだプロジェクトのひとつ、カレラGT

この種のプロジェクトの中で最も有名で、間違いなく最も手の込んだプロジェクトのひとつが、「オークグリーンメタリック(22L)」の2019年の「ポルシェ カレラGT」だ。
この個体は、アメリカ人のオーナーのために完全にリビルドされたものだ。
612馬力の自然吸気V10エンジン、トランスミッション、およびすべてのシャシーコンポーネントをオーバーホールする技術的なオーバーホールに加えて、1270台しか製造されなかった「カレラGT」は、新しい塗装と完全に再設計されたインテリアというカスタマイズを受けた。
「カレラGT」は、オリジナルカラーの「GTシルバーメタリック」に代わり、このモデルでは公式には設定されていなかったカラー、「オークグリーンメタリック(22L)」が輝きを放っている。
特に印象的なのは、オリジナルのマグネシウム製ホイールに、ゴールドにペイントされたスターとポリッシュされたホイールリングが装着されていることだ。
しかし、このホイールの加工には問題があった。
マグネシウムを研磨すると、素材の密度が下がり、強度が低くなってしまうのだ。
そこでポルシェは、ホイールリングを本物の銀でコーティングすることにした。
クリアラッカーは、素材の金属が変色しないように保護するのである。
イエローだったブレーキキャリパーはブラックに塗装され、ゴールドの「Porsche」の文字が入っている。
リアの「カレラGT」のレタリングもゴールドだ。

公式にはカレラGTに「オークグリーンメタリック(22L)」というカラーは存在しなかったが、ポルシェはそれを実現した。

コックピットもとても特別なものだ。
以前はブラウン/ブラックだったインテリアは、大幅にリファインされた。
オーナーは、ルビーレッドのレザーに、印象的なペピータパターンのインサートを選んだ。
また、様々なパーツがボディカラーに塗装され、ステアリングホイールには12時方向のマーキングが施されている。
さらに、すべてのカーボンパーツを徹底的にリファインし、新車同様の状態でオーナーに引き渡すことに成功している。
なお、この改造にかかった費用(当然、相当かかったと思われるが)については明らかにされていない。

年に3~5件のカスタマープロジェクトを予定

このユニークなカスタマープロジェクトは、ポルシェファンの間で大きな反響を呼んだため、ポルシェも将来的にはこのセグメントを拡大していきたいと考えている。
努力次第ではあるが、「先着順」というシンプルな信条に基づき、年間3~5件のカスタマープロジェクトを実施する予定だ。
本当に人間の欲望と想像力には限界がない。
適用される安全規制をすべて満たすことを条件に、ポルシェと相談して新しいコンポーネントを開発することも可能だ。
ポルシェは、道路認可を受けていないプロジェクトにも尻込みしない。
そのことは、オークションに出品されたこの車(LC13990463: 270万ユーロ=約3億6千万円)が証明している(下の写真)。
新車としては最後の「空冷ポルシェ911ターボ」であり、500台限定の「ポルシェ911ターボSエクスクルーシブ」シリーズをベースにしたものだ。

現存するオリジナルのボディシェルをベースに、「プロジェクトゴールド」が再構築された。

ポルシェでは、唯一、限定スペシャルモデルの再構築ということをしないことになっている。
つまり、251台目の「911スポーツクラシック」や601台目の「911 GT3 RS 4.0」は存在しないのである。
結局のところ、現実の問題として、個性化には若干の限界があるものの、ポルシェはすでに顧客に可能な限りの自由を十分以上に提供している。
今後もこうしたセグメントを拡大していくことだろう。

ポルシェのオプション価格にはいつも驚かされる。今や100万円とか200万円のオプション費用というのはそれほど珍しくもなくなったし、いつの間にか免疫がついたからなのか、それほど驚くことではなくなってしまった。メディアに貸し出すいわゆる「広報車」には400万とか600万円とか驚くような金額の総額オプションリスト一覧がついてくるし、普通に輸入されている車にも150万くらいは普通のことなのだという。
それでも十分驚く金額だというのに、今回発表されたこのプログラムは、まさに上限もなければ制約もほとんどない。そしておそらく金額の上限もあれやこれやで、やりたい放題のことをすればウン億円のレベルに達すると思われる。ここまで自由で選択の幅が広いと、オーナーのセンスそのものが問われるし、あまりにも自由過ぎて好きなものにたどり着くことのできない心配さえしてしまう。そう、人間はある程度条件が与えられ、制約があってこそ選択するという行為を楽しめるのではないか、と考えてしまうのだ。
そんなポルシェの良心は、「かつての限定スペシャルモデルの再構築はしない」という点で、これはオーナーにとっても、メーカーにとっても、お互いの価値を保つという意味で重要なポイントであろう。

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Porsche AG