GMが容量を最大33%増やせるバッテリーを開発中 EVの航続距離は20%延びるのか?
2026年11月4日
米自動車メーカーのGMが、新たなバッテリー化学組成の研究を加速させている。「LMRバッテリー」は、従来の化学組成を使った同サイズのEV用バッテリーに比べ、最大で約3分の1多くのエネルギーを蓄えられる可能性がある。
いま、新しいタイプのEV用バッテリーが注目を集めている。リチウムとマンガンを豊富に使う「LMR(リチウム マンガン リッチ)バッテリー」だ。きっかけは、ゼネラルモーターズ(GM)がテネシー州のアルティウム バッテリー工場でLMRセルを生産する方針を発表したことにある。この新たなバッテリーの化学組成は何をベースにしているのか。そして、従来のバッテリーより優れているのだろうか?
LMRバッテリーはまだほとんど知られていないが、業界では以前から研究開発が進められてきた。GMは近い将来、手頃な価格のEVに搭載できることを期待している。つまり、LMRバッテリーが、比較的安価なリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーに取って代わる可能性があるのだ。あるいは、GM幹部のカート ケルティが先日述べたように、LFPという技術そのものを「飛び越える」ことになるかもしれない。
LFPバッテリーを最大33%上回るエネルギー密度
GMによると、LMRセルのエネルギー密度はLFPセルより最大33%高いという。これは、同じ重量であれば航続距離を大幅に延ばせることも意味する。ただし、この予測はあくまでセル単体での話だ。バッテリー全体の効率にはほかの要因も影響するため、航続距離の向上幅は20~25%程度になると見られる。
さらに、コスト面と地政学的な面を組み合わせたメリットもある。計画が成功すれば、LFPバッテリーと、もうひとつの一般的なタイプであるリチウム マンガン ニッケル コバルト(LMNC)バッテリーの中間的な特性を持つバッテリーが実現することになる。LMRバッテリーは、LFPのように安価で熱に強く、それでいて効率は大幅に高く、LMNCに迫ることが期待されている。
自国の原料資源を活用
同時に、必要な原料の調達もLMNCバッテリーより容易になる。米国には、正極の主要成分となるマンガンの資源が豊富にある。一方、ニッケルやコバルトの資源開発には多額のコストがかかる。世界のコバルト生産は中国企業に握られている。これも、この代替技術が米国企業のGMにとって魅力的な理由のひとつだ。
技術開発の中心を担うのは韓国のLGで、同社はGMとの合弁事業として米テネシー州のバッテリー工場を運営している。ただし、報道によると、フォードやフォルクスワーゲンのバッテリー子会社パワーコー、さらに複数の中国国有企業も、この新たなバッテリー化学組成を研究しているという。
課題は急速な電圧低下
技術的に見ると、LMRバッテリーは未来の夢のバッテリーというわけではなく、もちろん全固体電池でもない。液体電解質を使う従来のリチウムイオンバッテリーに近いもので、負極にも同じくグラファイトを使用する。ただし、正極は主にマンガンで構成され、GMによると、その割合は65%。ニッケルが35%で、コバルトはほとんど使わない。
しかし、この構成には技術的な問題がある。これまでのところ、正極のマンガン含有率が高いセルは、比較的少ない充電サイクルで電圧が急速に低下してしまうのだ。「電圧フェード」とも呼ばれるこの現象は、性能の低下を招く。この化学組成を用いた試作バッテリーは、これまで短い寿命しか実現できていない。
それでもGMとLGは「ブレークスルー」を果たしたと述べ、2028年にテネシー州でLMRセルの量産を開始すると発表した。ただし、セルの電圧低下という壁を乗り越えたのかどうかについて、両社はまだ明言していない。
結論:
新たな有力候補が登場した。LMRバッテリーは、LFPより高効率で、LMNCの化学組成ほどデリケートではなく、手頃な価格と長い航続距離を両立するEVを可能にするかもしれない。だが、エンジニアたちは本当に根本的な問題を解決したのだろうか? その答えは、もう少し待つ必要がある。
Text:Roland Wildberg
Photo:GMC

