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今、スズキで一番売れている車はスペーシア ギア! 大好きなスズキの(ほぼ)全車種乗ります その5

2026年11月5日

自身ジムニーを乗り継ぎ、現在はノマドを愛車にする大林晃平が、大好きなスズキの(ほぼ)全部に1週間オーナー目線で乗るという企画。ワゴンRに続く5台目はスペーシア ギア。晴れたカントリーロードを生き生きと走るスペーシア ギアの姿が印象的だった。

今一番スズキで売れている車はなにかというと、それが今回ご紹介するスペーシアなのであった。普通のスペーシアと試乗車である楽しそうなコスメティックスを施したギアを足した毎月の販売台数数はざっと13,500台(2026年8月が13,624台)。これは前回レポートをお届けしたワゴンR(スマイルを含む)の約4,000台(2026年8月)の3倍以上、ハスラーと比較しても2倍以上の販売台数を誇る稼ぎ頭である。

力強い感じのデザインが頼もしい道具のイメージを一層引き立てる。

やっぱり今のわが国ではスペーシアのような両側スライドドアを持つスーパーハイトワゴンが最重要売れ筋商品なんだなぁ、と改めて痛感しつつ良い感じの明るい色に塗られたスペーシアギアに乗り込む。こういう色がワゴンRにもあったらなぁ、とつい思うような優しくて良い色だ。

広い、そして装備満載である。目の前と頭上に広がる広大な空間になんだか大きい家に引っ越ししたような気分にさせられながら内装をぐるりと見まわすと、そこには考えつくされた数々の便利装備が散りばめられ、まるでニトリやイケアのショールーム感満載である。

助手席の前の大型ティッシュボックスもすっぽり収まる引き出し(!)や、なんとも複雑な動きをするからくり仕様のカップホルダーは序の口で、デジタルスピードメーター&マルチインフォメーションディスプレーはカラーのTFT液晶、さらにその上にはこれまたカラーのヘッドアップディスプレイまで装備され、満漢全席のような眺めである。

スペーシアギアのトレーと引き出しは便利だ。

リアシートに座ってみても、とにかくその空間は広大だ。足元も頭上もガラガラに広い空間は所在なげに感じるほどで、これがワゴンRやジムニーと外寸同じ自動車とはにわかに信じがたい。

リアシートがスライド&リクライニングするのは当たり前の話で、ここにさらにオットマンが備わり、さらにそのオットマン部分が回転してリアシートに置いた荷物がブレーキング時などに転がり落ちるのを防止する……ともう考えられる限りのフル装備である。

後席を目いっぱい後ろにすると広い空間が生まれる。

頭上には空気を循環させるサーキュレーターが備わり、フロントシートのバックレストにはスマートフォンを入れるポケットと収納式テーブル。さらにそのテーブルにはカップホルダーだけでなく、タブレットを立てかけるためのミゾが備わるなど、スズキの開発陣が思い浮かべることのできる限りの工夫が散りばめられている。僕は開発者のこういう気配りが嬉しいタイプなので見つけるたびにちょっと笑顔になってしまう。

老若男女問わず良い座り心地を提供するシート。手抜き無し。

こういうモノを単なるギミックと考えるか良心と考えるかは人それぞれだが、僕には浜松からの暖かい知恵袋をいただいたように感じられ、こういうことの積み重ねが毎月13,000台余り(毎日400台、ですよ!)の成果につながっているのだと思う。

走り出してみてもスペーシアギアは直前まで乗っていたワゴンRとは、もう全く別世界の広さと空間を運んでいる感の強い乗り物である。なんというか、大きく重いものを運転している感がひしひしと感じられる。とはいっても軽自動車のディメンションは言うまでもなく制約ギチギチなので、ワゴンRもスペーシアもアルトでさえ同じはずなのだが、それが信じられないほど広い、とにかく大きい感が強い。

このステアリングがまた良くできているのだ。

一方、重いという感覚は間違えなく正解で、ワゴンRと比較して100㎏以上は重い。両側スライドドア+1800㎜の全高+装備満載で生まれた100㎏を補完するために、スペーシアギアのエンジンにはインタークーラーターボが備わり、64馬力と98Nmを生み出してはいるが、それでもやはりワゴンRの軽快でスッと走り出すあの感じとはまるで違う。

トランクスペースは前後長に限界があるのでこれ以上は望めない。だが車内空間の広さは特筆もの。スーパーハイトは面白い!

さらに乗り心地も、トントン、っと軽やかに凹凸をいなしていたワゴンRと比べると、ドッタンドッタンといかにも重く大きい質量が動いています感がものすごく強い。乗り心地そのものは通常の路面では悪くはないが、路面が荒れていたり、凹凸のあるところでは、がさっと車が反応する。

ブレーキもあと3歩くらい剛性感やかっちりした感じが欲しいし、今回の試乗では13km/l程度にとどまった燃費も含め、910㎏という重い車重がこれほど効いているのかと思うほどワゴンRとは別物の運転感覚であった。

スペーシアギアのエンジンはインタークーラーターボ付きで軽自動車MAXの64馬力を発生する。

そんなの当たり前だろう、こちらは広大な室内空間を持つことが命題のスーパーハイトワゴンなのだから、と言ってしまえばそれまでで話は終わりだが、正直言うと似たような成り立ちでおそらく最大にして最強の好敵手であるはずのN-BOXはもう少し走りにも乗り心地にも洗練さやかっちり感が高い。そしてそう言った部分の積み重ねが、あちらが長年ナンバーワンな理由なのかもしれないが、同じようなサイズと成り立ちの向こうが達成できている、半歩以上先の乗り心地とハンドリングとブレーキなのだから、浜松のエンジニアにできないわけなどない(はず)である。

最後になったが今回の試乗車はスペーシアギアのXZ(モノグレードで、ターボのあるなし、2輪駆動・4輪駆動がそれぞれに設定され、都合4車種)の中の、XZターボで価格は2,037,200円(税込み)。そこに全方位モニター付きメモリーナビゲーション(195,800円)、フロアマット27,060円、ETC(22,400円)、ドライブレコーダー(47,740円)さらにツートンカラールーフ(60,500円)が加算され、合計2,390,740円の車輛であった。

スーパーハイト、両側スライドドア、便利装備満載でワゴンRと比較して100㎏以上は重いためキビキビ感はスポイルされるが仕方ない。工具箱は重くなりがちだ。

高いと言えば高いのかもしれないが、これだけの室内空間と満漢全席の装備、そして計算されつくしたパッケージングなどを考えれば決して高価すぎではなく、スズキの努力の賜物の価格であるとは思う。そしてその辺が理解されているが故の13,000台/月なのであるとは思う。おそらく次のモデルを鋭意開発中だと思うが、優しい心や配慮を持ったまま、あと少しブレーキや乗り心地の部分で、ライバルに負けないぞというエンジニア魂を見せてくれることを期待して待っている。

Text&Photo:大林晃平