【特許出願】EVのバッテリー火災対策に新特許!ステランティスは燃える電池を切り離す
2026年10月26日
燃え上がる電気自動車。まさに悪夢のような状況だ。ステランティスは新たな特許で、この危険を意外な方法によって軽減しようとしている。その詳細を紹介する!
電気自動車は、ひとたびバッテリーが発火すると消火が極めて難しい。乗員にとっても救助隊にとっても、悪夢のような状況である。個々のバッテリーセルが次々と互いに発火を引き起こす、恐ろしい連鎖反応「熱暴走(サーマルランアウェイ)」に対処する手段は少ない。多くの場合、クルマに残されるのは焼け焦げた金属くずの山だけだ。
複数の自動車ブランドを傘下に持つステランティスの米国特許出願「US20240317062A1」は、燃えるバッテリーの危険に独特の方法で対処しようとしている。燃えているバッテリーを、丸ごと車体から切り離してしまうのだ!
米国の自動車情報サイト「Carscoops」が報じた「車両用高電圧バッテリー急速切り離しシステム」の特許出願書類で、メーカーはこの仕組みを説明している。狙いは、バッテリーに異常が発生した際、火元を車両から安全に切り離すことだ。さらに、12Vの始動用バッテリーを使い、クルマ自体が危険区域から「脱出」できるようにするという。
機械式のロック解除、あるいは小型火薬による切り離し
これには、いくつかの手順が必要となる。火災が発生したら、まず車両とバッテリーの電気的な接続を遮断する。続いて、バッテリーと車体の機械的な結合を解除する。これは解除機構を使うか、あらかじめ設定した破断箇所に配置された少量の火薬を作動させることで行う。
その後、燃えているバッテリーは路面に落下するか、下方へ降ろされる。いずれにしても、車両から切り離されるわけだ。

Photo:Stellantis
続いて、電圧変換器を介して12Vバッテリーを駆動用モーターに接続する。クルマはこの「非常用電源」を使い、切り離したバッテリーから自力で離れることができる。
どこまで走れるのか? ステランティスは具体的な距離を示していない。ただし、危険区域から脱出するには十分な距離を確保する想定だ。
乗員や救助隊が作動させる
この安全機構を作動させる方法には、いくつかの選択肢が考えられる。最もわかりやすいのは、乗員が車内のスイッチを操作する方法だ。
ただし、状況によっては、救助隊や事故の目撃者などが車外から作動させる必要もあるだろう。そのため、車内と車外の双方から操作できる仕組みが合理的に思える。もちろん、誤作動を防ぐための十分な対策が必要となる。

Photo:Rosenbauer
バッテリーを切り離す仕組みに潜む課題
現時点では特許出願の段階にとどまっており、ステランティスは車両への採用計画を発表していない。そして、このアイデアにはいくつかの疑問も残る。
本当に、それほど簡単に切り離せるのか?
現代の電気自動車では、バッテリーが車体の荷重を支える構造の一部を担う場合がある。いわゆる「セル トゥ シャシー」構造では、衝突安全性を確保するためにも、バッテリーは車体に極めて強固に組み込まれている。切り離すために設けた箇所には、車両の使用期間を通じて大きな負荷がかかることになる。車体構造の強度も、おそらく低下するだろう。加えて、この仕組みに必要な部品によって車両重量も増加する。
切り離したバッテリーはどうなるのか?「見えなくなれば、それでよし」ということなのだろうか?電気自動車のバッテリーは数百kgもの重量があり、サイズも大きい。そんな巨大な物体が道路の真ん中にあれば、後続車にとって極めて危険だ。燃えているため目につきやすく、故障した車両の運転者や同乗者は助かるかもしれない。しかし、対向車にとっても、制御不能な危険物を道路上に残すことになる。
結論:
多くの疑問が残るとはいえ、意表を突くアイデアである。バッテリーの材料や化学組成の改良によって火災の危険を解消できない限り、メーカーは、発生し得る火災を封じ込めるために創意工夫を凝らさなければならない。
ただし、燃えるバッテリーを道路上の危険物として残すような仕組みが、規制当局や交通安全当局の承認を得られる可能性は低そうだ。
Text:Raphael Schuderer

