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大好きなスズキの(ほぼ)全車種乗ります その3 キザシの後任車にぜひ!「eVITARA(eビターラ) Z 2WD」

2026年10月20日

スズキ自動車の横浜研究所の駐車場に置かれた今回の試乗車は上級モデルのZの2輪駆動、色は88,000円のオプション価格となる白と黒のツートンカラー(ブラック以外はどのに色を選んでも、このオプション価格88000円が必要なのはちょっと残念)で、見た瞬間、ロボコップみたいだと思った。白と黒というカラーリングでそう感じたのかもしれないが、とにかくストームトルーパーというか、やっぱりロボコップみたいなご面相の自動車で、それまで1週間乗っていたフロンクスとはずいぶん大きさと存在感が違う。

乗って路上に走り出してみても感じたことは、フロンクスよりはるかに大きく重いということで、似たような、でもやっぱり似ていないような姿かたちとは裏腹にフロンクスとは違うセグメントのクルマであることが乗った瞬間にわかる。何しろ全幅が1800㎜、全長も4275㎜、車重に至っては1790㎏(フロンクスよりもアルト一台分ほども重い)もあるのだからフロンクス比べれば大きく重いのは自明の理ではある。

それでも人間の感覚なんて言うのはあてにならないものなのか筆者の順応性が高いのか、走り始めて10分もすると大きく重いことよりも、静かでスムーズで力強い印象だけがうわずみのように残り、実にいい車なのではないかとすぐににこやかになるのだから現金なものである。残念ながら荒れた路面や高速領域では乗り心地のフラットさに欠けてきてしまう部分もあるが、市街地や幹線道路では好印象を抱きながらのスタートとなった。

静かで滑らかでオーディオ良し

なぜかシートに関してはフロンクスのようなほっこり柔らかく体になじむシートではなく、張りが強くかなり固めの着座感でちょっとしたドイツ車風味な座り心地である。こちらにはパワーシートが運転席側に備わり、操作類もフロンクスよりタッチ式が多いが、それでもエアコンの操作系は最小限度にはスイッチ類が残されているし、円形のセレクターを除けば乗った人を戸惑わせる処理が少ないのは好感が持てる。

細かく文句を言えば(笑)センターコンソールのピアノブラック処理は手あかがつきやすいし、フロンクスと違い完全液晶ディスプレイのメーター類なども、もう少し整理されてシンプルだったらいいのにとも思うけれど、見にくいというモノでは決してない。

個人的に感動したのはインフィニティのオーディオで、おそらくスズキの自動車の中でこれほど良い音のオーディオが装備された自動車は、このeビターラが最初なのではないだろうか。特にアコースティックのピアノなどが素晴らしく明瞭で、武部聡志先生が目の前で弾いてくれているかのようである。BEV独特の静かで滑らかな空間で、インフィニティの奏でる音楽を聴きながら走っていると、好きか嫌いかはまったく別として、BEVの自動車の持つ可能性やこれからの進化・浸透はこの辺に鍵があるのではないかと思ってしまう。

現段階ではまだまだ過渡期(というかまだ始まったばかりだと思う)にある我が国のBEV浸透度ではあるが、この秋に発表されるeSKYも含めて、スズキの担っている可能性と責任は決して少なくない。もちろんインフラストラクチャーの問題やバッテリーの問題(このeビターラもeSKYもBYDのリン酸鉄バッテリーを使用している、という部分になんとなく違和感を覚える方がいるだろうことは予想がつく)補助金の不透明さなどなど、現時点ではすっきりさっぱりしない部分は多いものの、これからの時代は好きか嫌いか乗るか乗らないかにかかわらず、BEVの普及が進むことは間違えないだろう。

室内空間も広く大きな不満と言えば、前述の悪路・高速路で今一つフラットさに欠ける乗り心地や、Cピラーの太さに起因する死角の多さ、ピアノブラックで手垢の目立ちやすい内装素材と言った部分がeビターラの不満点で、走行性能に関しては文句はない。 

普通の恰好だったらなぁ

1週間eビターラに乗りながら、たまに自分の内燃機関のクルマに戻った瞬間、なんとなく古い懐メロ喫茶のドアを開けた瞬間のように感じてしまったこともある。事程左様にBEVというのは新しい価値観を乗った者に与える部分があることは確かであると思う。言うまでもなく、そんな懐メロ喫茶が大好きで、一生内燃機関の車で自分の自動車人生を全うする、という方がいても全くおかしくないし、そんな一本筋の通った生き方に賛同はしても絶対反対はしない。

12色から選べるLEDアンビエントライトも自動防眩式ルームミラーも、ナノイーX搭載のフルエアコンも含め、フロンクスに輪をかけたようなフル装備ぶりで、4,488,000円(に今回の試乗車は2トーン塗装が88,000円かかるが)という価格も高すぎる感じはしない。

生活に即した自動車という観点から考えてみると、BEVの方が自分の生活条件、自動車使用条件に合致しているという方も世の中に多くいるはず。かくいう僕もそろそろ次のクルマに関してはBEVを導入しようと思っている一人で、内燃機関の自動車は今所有している車が最後になるかもしれないなぁ。とeビターラの快適な室内で思った。幸せなことに自宅で充電できるし、これだけ楽に移動できるのであれば良いじゃないかとつぶやきながら車から降りると……ロボコップのような自動車がそこにはあって、少し現実に戻されてしまう。

もう少し普通で馴染みのよいスタイルだったらいいのになぁ、せっかくデザイナーが一生懸命作ってくれた未来的なeビターラのデザインなのに、フロンクス同様、還暦過ぎの私にはちょっと馴染めない部分が多い。普通のスタイルながらもセンス良く、日々の生活に溶け込むeビターラくらいの性能を持ったBEV、というのを出してくれないものだろうか。

ちなみに電費もなかなかで、市街地・渋滞・高速など一切容赦のない試乗で6.2km/kWhという数値となった。とはいってもこれは秋の安定した気候の下での数値なので、あらためて真冬の一番厳しい時期に、再度試乗し電費を再度観察してみたい。

Text&Photo:大林晃平