【ショートストーリー】ポルシェ博士の遺産:未完の世界速度記録車メルセデス・ベンツT80(1939年)
2026年10月15日
フェルディナント・ポルシェ博士(Ferdinand Porsche)は1923年から1928年までメルセデス・ベンツの技術部長として活躍したのはご存じだろうか。ポルシェ博士はメルセデス・ベンツの中でも有名なS、SS、SSKをはじめとする名車の大半を手掛け、退社後も大きな技術的影響を与えたのである。
今回は特に、ポルシェ博士の遺産として走行未完に終わった1939年の「メルセデス・ベンツ T80」世界速度記録車にスポットを当て紹介する。

当時のダイムラー・ベンツ社製のメッサーシュミット戦闘機用DB 603エンジン(44.5L 懸架式12気筒、3,500ps)を搭載し、6輪の内、後ろの4輪を駆動する世界速度記録実験車だ。メッサーシュミットがもっていた航空機の速度記録(610km/h)さえ上回る650km/hの世界最高記録樹立を目指して開発されたが、第二次大戦の勃発により一度も走ることはなかった。全長8,240mm/全幅1,740mm(ウイング除く)/全高1,270mm、航空機開発で手にしたエアロダイナミクスと巨大エンジン、そして3,500psを受け止める自動車シャシー技術、この三つの集大成というべき存在であった。もちろんシャシー設計はフェルディナント・ポルシェ博士!

現在、この実車はメルセデス・ベンツ博物館で展示されている。
TEXT;妻谷裕二。
PHOTO;メルセデス・ベンツAG、妻谷コレクション

