大好きなスズキの(ほぼ)全部に一週間ずつ乗りますよ その2 フロントシートふっくら「フロンクス4WD」
2026年10月7日
僕は昔から、生活に即した普通の車が大好きである。いったい何をもって普通というのかは大きな課題ではあるのだが、令和8年の街を見てみると、このフロンクス程度の大きさのSUVとミニバンか、軽自動車あたりが日本における普通の自動車なのではないかと思う。休日のショッピングモールでは、前述の自動車がずらりと並ぶ光景からも間違えではないだろう。

本当にどの車もパキパキにハンドリングがスポーティーで、過剰な性能を持ったクルマである必要はなく、毎日の生活の中で心地よく、お財布に負担も少なく付き合える普通の性能の車は大切だし、この「スズキの車ほとんど全部イッキ乗り企画」も印象を記す際にはそういう観点を絶対に忘れずに、と思っている。だからこそ今回のフロンクスも実用車としてどうなのか、日常生活を中心に1週間ほど使わせていただいた。
実用車とはいってもわが国で発売されているフロンクスはかなり豪華なフル装備で、4気筒に6速オートマチックトランスミッションを組み合わせたモノグレード展開である。駆動方式を前輪駆動モデルか4輪駆動モデルから選べるのみで、本国インドはあるような3気筒ターボや装備の簡素なモデルは存在しない。
アダプティブクルーズコントロール、ナビゲーションシステム、ヘッドアップディスプレイ、本国にはないバーガンティー色のインテリアなどなどすべてがついたFFモデルで2,541,000円、今回の4輪駆動モデルでも2,739,000円(いずれも税込み)という価格は確かにお買い得と言ってよい装備充実ぶりである。

他車にあってフロンクスにないものは、パワーシートとグラスルーフくらいのものであろうか。なおインド生まれなことも影響してかエアコン、特に冷房機能が設定温度控えめでもえらく力強く、秋へと向かう季節には1枚羽織って乗ったほうが良いくらいの冷えっぷりであった。
先日乗らせていただいたeSKY(プロトタイプ)の時にも感じたが、最近のスズキの車のフロントシートはふっくらとソフトで大きさも座り心地もとても心地よい。手動式ではあるがかなり上まで調整幅の大きいリフターも含め、だれもが感じることのできる良い印象の着座感である。


メーターパネルも最近珍しく水温計を含めすべてがアナログ(機械式)だし、エアコンや各種コントローラー類、あるいはオートマチックトランスミッションのセレクターも従来からある形の操作系で、タッチパネルや、わざわざ差別化しようとするあまり戸惑うような形状になってしまうような部分が皆無であることが心地よい。
強いて探せば残念ながらナビゲーションシステムの操作部分とオーディオシステムだけはタッチパネル式になってしまうが、それ以外は妙にこじゃれた最近のヨーロッパ小型車等よりもはるかに馴染みやすく、迷わず使える万人向けであり、実用車の鏡であると言えよう。街中に走りだしてもいい感じの普通感は持続され、乗り心地もパワー感もハンドリングを含めた扱いやすさもなど、誰が乗っても戸惑う部分は見られない。

1765㎜という小さくはないが昨今では使いやすい方に入る全幅を持ち、全長も3995mmと4mを切るし、立体駐車場にもギリギリ入る1550mmの全高も含め、扱いやすいサイズの自動車である。リヤシートも荷室も十分広いし、一般道から高速やそして渋滞路など、一切容赦のない(笑)使い方で14km/lとなった燃費も含め、普通の実用車として街中を中心とした路上での乗り心地や性能には不満は少ない。
それでもちょっとペースをあげた高速道路や山坂道では、もうちょっとだけパワーが欲しいのも正直なところではある。マイルドハイブリッドという名称通りほんのわずかに、ほんのりとモーターでアシストはするものの、基本的には1500㏄4気筒でターボのつかない99馬力エンジン(FFは101馬力)ではまあいっぱいいっぱいという感じで、余裕はあまりない。
さらにわがままを言えば荒れた路面での乗り心地やロードノイズといった部分がさらに良かったらなぁ……な気持ちもあるが、それでも価格を考えればこれでいいか、と自分を納得させる部分がほとんどである。
以前の試乗会で乗ったFFモデルは(今回の四輪駆動モデル1130㎏に対し60㎏ほど軽い1070㎏)もっとハンドリングがすっきり軽やかだったし、荒れた路面における乗り心地ももっと良かった気もするが、おそらくそれは厳密に乗り比べて感じられる程度の差だと思う。

一方、今回は雨天の試乗が多かったこともあってか、195/60 R16のグッドイヤー製タイヤだけはウエットグリップにかけ、しっとり感にも欠けるつっぱった印象も多かったので、同じサイズを保ったまま、他のちょっと良いタイヤに履き替えたならばウエットグリップも、荒れた路面で感じられた乗り心地もかなり改善されると思う。
もう1点気になったことは、試乗した車だけの個体差なのか運転席側のパワーウインドーから、完全に閉まる直前にプラスチックでも折れるかのような、パキっという異音がたまに生じ、それが原因なのかは定かではないが、Bピラーの周辺からビビり音が発生していた。試乗車は登録から2年/11000㎞を走行した個体ではあったが、この程度でやれたり異音が出ることは望ましくない。細かいところではあるが、他の部分の劣化がどうなのか気になった。

フロンクスは出身地のインドを含めてアジア諸国ではなかなかに上級な自動車だからか、そんな部分を強調する必要部分としてダッシュボードにはシルバーとピアノブラックとバーガンティーの複雑な装飾パネルがおごられているが、この部分(特にピアノブラックの部分)に屋外の光やトンネルのライトなどが移り込み、ちらちらすることは気になる部分ではある。
また、複雑なフロントグリルのちょっと怖い顔つきや抑揚の強い全体的なスタイルやディテール処理など、穏やかでシンプルであったら日常の車として無印良品感が高まるのでは、とは思ったものの、出身地の事情や他国での立ち位置を考慮するならば、他車との闘い時に埋没しないように、これぐらいのオシの強さは必須なのかもしれない。

スポーティーでもなく、豪華にもすぎず、シンプルで普通の形の自動車を探す、というのは昨今なんとも難しいものなのである。
Text:大林晃平
Photo:大林晃平/アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)

