1. ホーム
  2. 特集
  3. ZFの12速AMT「TraXon 2」を新型日野セレガが採用 インターダー統合で安全性と快適性を向上

ZFの12速AMT「TraXon 2」を新型日野セレガが採用 インターダー統合で安全性と快適性を向上

2026年9月23日

ZFは、流体式リターダー「Intarder(インターダー)」を統合した最新世代の12速AMT「TraXon 2 Coach」が、日野自動車の新型大型観光バス「日野セレガ」に採用されたと発表した。

ZFはトランスミッションだけでなく、電子制御ブレーキやサスペンション、先進運転支援システム(ADAS)を支えるレーダーセンサーも供給。安全性、快適性、運行効率を幅広い技術で支える。これまでトラック分野を中心に築いてきた日野自動車との協力関係を、日本のプレミアム観光バス市場へ本格的に広げる重要な一歩となる。

新型日野セレガに「TraXon 2 Coach」を初採用

ZFの最新世代自動マニュアルトランスミッション(AMT)「TraXon 2」が、流体式リターダー「Intarder」と組み合わされ、2026年に発売された新型日野セレガに採用された。日野自動車が「TraXon 2 Coach」を採用するのは今回が初めてである。

新型セレガは、長距離旅客輸送に求められる安全性や運転のしやすさ、乗客の快適性を高めながら、滑らかで効率的な運行を目指して開発されたプレミアム観光バスだ。今回の採用は、ZFと日野自動車がトラック分野で長年培ってきた協力関係を、観光バス分野へ拡大するものでもある。

日野自動車プロダクト推進部部長の向里 憲二氏は、「TraXon 2 CoachとIntarderが生み出す静粛で滑らかな走りと安全性が、新型セレガを新次元へと引き上げました。この感動をお客様へ届けられる喜びと、実現を支えたZF関係者の皆様への深い感謝を胸に刻みます」とコメントしている。

世界累計150万基超の実績を持つ次世代12速AMT

「TraXon」シリーズは世界累計販売台数が150万基を超え、信頼性と性能の高さから、ZFの商用車向けAMTを代表する製品となっている。その実績あるプラットフォームを基盤に開発されたTraXon 2は、大型トラックおよび観光バス向けAMTの最新世代モデルだ。

ZF の「TraXon 2 with Intarder 」は、観光バス用途において、滑らかな変速性能、高効率な運行、そして摩耗のない補助制動機能を実現する。

12速AMTにはZFが独自開発した電子制御ユニット(ECU)とシフトアクチュエーターを搭載し、走行状況に応じた最適なギア選択と高精度な変速制御を行う。滑らかな加速と変速により、ドライバーの負担軽減と乗客の快適性向上に貢献する。

次世代マイクロプロセッサーと統合セキュリティモジュールも採用し、演算処理能力とサイバーセキュリティ機能を強化した。さらに、包括的なソフトウェアパッケージやブレーキとの連携機能によって、性能と効率を高めている。用途や運行条件によっては、従来世代のTraXonと比べて燃料消費量とCO2排出量を最大1.7%削減できるという。燃料費が運行コストを大きく左右する長距離バスにとって、見逃せない改善である。

サービスブレーキの使用頻度を最大90%低減

新型セレガのTraXon 2には、トランスミッション一体型の流体式補助制動装置「Intarder」が組み込まれる。限られた搭載スペースに対応しながら、エンジン回転数に左右されない強力な補助制動力を発揮するのが特徴だ。

長い下り坂や高速走行時にも安定した減速力を確保できるため、乗員の安心感を高めるとともに、フットブレーキにかかる負担を軽減する。サービスブレーキの使用頻度を最大90%減らすことが可能で、ブレーキ部品の摩耗を抑えてメンテナンスコストを低減。ブレーキダストの排出削減にもつながる。

高速道路での長距離移動に加え、山岳路や観光地へ乗り入れる機会も多い日本の観光バスでは、下り勾配で安定した制動力を維持できる補助ブレーキの役割は大きい。摩耗を伴わないIntarderは、安全性と経済性の双方に効果をもたらす装備といえる。

ゼット・エフ・CVソリューションズ・ジャパン代表取締役社長の丹野 宏臣氏は、Intarderを統合したTraXon 2について、高い運行効率と滑らかな変速性能、優れた信頼性を兼ね備え、起伏に富む道路を含む多様な環境で快適かつ安全な長距離輸送を支えると説明する。フリート事業者の運行効率向上やサステナビリティ目標の達成にも寄与するとしている。

ブレーキ、電子制御サスペンション、ADASにもZF技術

新型セレガに採用されたZFの技術は、ドライブラインにとどまらない。ブレーキ分野では電子制御ブレーキシステム(EBS)を採用。サスペンションには、走行状況に応じてショックアブソーバーの減衰力を連続的に調整する電子制御ショックアブソーバー制御「ESAC/CDC」と、電子制御エアサスペンション「OptiRide ECAS」が用いられ、走行安定性と乗り心地の向上を図っている。

先進運転支援システムにはZF製近距離レーダーセンサーを搭載する。左折時に自転車や歩行者を検知して巻き込み事故の防止を支援する側方死角情報システム(BSIS)、死角に接近する車両を検知して警報する死角警報(BSW)、前方を横切る交通を検知する前方交差交通警報(FCTA)などをサポート。乗客とドライバーだけでなく、周辺車両や歩行者を含む道路利用者全体の安全性向上を目指す。

トランスミッション、補助制動、ブレーキ、サスペンション、ADAS用センサーまでを一社でカバーする今回の採用は、ZFが持つ総合的なシステム開発力を示す事例といえる。日本特有の道路環境やバス事業者の要求に応えながら、安全性、効率性、快適性、持続可能性を同時に引き上げる構成だ。

なお、新型日野セレガは、日野自動車といすゞ自動車の合弁会社であるジェイ・バスが生産している。今回セレガに採用されたZFの商用車技術は、兄弟車の「いすゞガーラ」にも搭載される。

Text:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)
Photo:ZF