フェラーリが730cvの新型「296 GTモディフィカータ」を発表 296 GT3 Evoよりフィオラノで3秒速い究極のサーキット専用モデル
2026年9月21日
フェラーリは、サーキット走行専用モデル「296 GTモディフィカータ」を発表した。296 GT3 Evoをベースに、レース規則の制約から解放された3.0リッターV6ツインターボは最高出力730cvを発生。世界各地の名門サーキットを舞台とする「クラブ コンペティツィオーニGT」参加者のために、極めて限られた台数のみが生産される。
296 GT3 Evoから生まれた究極のサーキット専用フェラーリ
フェラーリは、ハンガリーのブダペストで開催された「フェラーリ レーシング デイズ」において、新型「フェラーリ 296 GTモディフィカータ(Ferrari 296 GT Modificata)」をデジタル発表した。
296 GTモディフィカータは、公道走行や競技への参戦を目的としたモデルではない。フェラーリの顧客向けプログラム「クラブ コンペティツィオーニGT(Club Competizioni GT)」が開催する非競技形式のサーキットイベントで走行するために開発された、純粋なサーキット専用車である。

ベースとなったのは、2026年シーズンから実戦に投入されたレーシングカー「296 GT3 Evo」だ。そこへフェラーリがGTレース、スポーツプロトタイプ、ロードカーの開発で蓄積してきた技術とノウハウを投入。2020年発表の「488 GTモディフィカータ」に続くモデルとして、規則に縛られない究極のパフォーマンスと、濃密なドライビングプレジャーを追求した。
「296」という車名は、約2.9リッターの排気量と6気筒エンジンを示す。一方の「モディフィカータ」は、既存モデルを基礎としながら専用の改良を施し、性能を新たな領域まで引き上げた特別なフェラーリを意味する。
その速さは明確だ。フェラーリによると、296 GTモディフィカータはフィオラノ サーキットにおいて、296 GT3 Evoを3秒上回るラップタイムを記録できるポテンシャルを持つという。
3.0リッターV6ツインターボは最高出力730cv
ミッドシップに搭載されるエンジンは、排気量2,992cc、バンク角120度のV型6気筒ツインターボだ。基本構造は296 GT3 Evoのエンジンを踏襲するが、クランクトレイン、カムシャフト、吸気系、インタークーラー、ターボチャージャーなどに大幅な変更が加えられた。
ターボチャージャーの外側のハウジング形状は296 GT3 Evoと共通だが、内部部品は296 GTモディフィカータ専用に設計された。その開発には、顧客向けサーキット専用スポーツプロトタイプ「499Pモディフィカータ」で得られた経験も生かされている。

増大した燃料流量に対応するため、燃料供給システムも最適化され、低圧燃料ポンプを追加。さらに、エキゾーストのテールパイプは完全な新設計とされた。
最高出力は7,500rpmで730cv(537kW)、最大トルクは5,000rpmで800Nmを発生する。性能調整規則「BoP(バランス オブ パフォーマンス)」の制限を受ける296 GT3 Evoを130cvも上回り、1リッター当たりの出力は244cvという驚異的な数値に達した。
トランスミッションは、カーボンクラッチを備えた横置き6速シーケンシャルギアボックス。730cvエンジンの新たな回転域を最大限に活用できるよう、ギア比も専用に変更された。競技での効率だけでなく、非競技形式のサーキット走行における速さと楽しさを重視した設定である。
新設計のスロッテッドスプリッターとリヤウイング
空力性能については、フロントとリヤの両方に専用のソリューションが与えられた。
エンジン出力の向上に伴い、冷却系には従来以上の放熱能力が求められた。フロントボンネットには大型化されたメイン開口部と専用の整流板を採用。中央のフロントラジエーターから排出される熱気が、左右のインタークーラーへ悪影響を及ぼさないよう気流を制御する。フロントウインドウ基部付近のベントも再設計され、ボンネット下に収められた各コンポーネントの熱管理を改善した。

フロントには、開発陣が「スロッテッドスプリッター」と呼ぶ新しい空力パーツを装備する。車体下面へ流れる空気をより効果的に制御し、車両全体が生み出すダウンフォースを増大させるものだ。
リヤウイングも完全に刷新された。中央のシングルパイロン、5mmの大型ガーニーフラップ、そしてル・マン24時間レースを制した499Pに着想を得た構造式エンドプレートを採用。エンドプレートはウイングを支えるだけでなく、周囲に発生する渦を制御し、空力性能と前後の空力バランスを高い次元で両立させる。
ブレーキの冷却能力と安定性も強化
730cvの性能を安全かつ安定して引き出すため、ブレーキシステムも296 GT3 Evoおよび296 GT3ビポストのシステムから進化した。
フロントには、直径400mm、厚さ26mmの新しいスチール製ディスクを採用し、内部ベンチレーションと冷却性能を向上。フロントバンパー下部にはブレーキ冷却用のエアインテークを追加し、冷却ダクトの形状も最適化した。リヤディスクのサイズは直径332mm、厚さ32mmである。

熱管理能力の向上により、ブレーキへの負荷が大きいサーキットで長時間走行した場合でも、安定した制動性能と信頼性を維持する。ABSはGT3モデルと同様に装備され、ドライバーの経験や技量を問わず、高い性能を引き出しやすいよう専用のキャリブレーションが施された。
コーチが同乗できる2シーターを採用
296 GTモディフィカータは、極限のサーキット性能を追求しながら、あえて2シーターを採用した。
その目的は、オーナーがドライビング技術を磨くだけでなく、助手席の乗員と走行体験を共有できるようにすることだ。ロールバーの構造を変更することで2座化を実現し、コーチを同乗させたトレーニングにも対応。計測走行中にリアルタイムでアドバイスを受けられる。


助手席には専用フットレストを備え、車内にはドライバーと同乗者が常時会話できるインターコムシステムも組み込まれた。
データ収集機器を標準装備
296 GTモディフィカータには、296 GT3 Evoではオプションとなる数多くの装備が標準化されている。
「データ アクイジション システム ステップ1&2」には、対気速度を計測するピトー管、ダンパーポテンショメーター、ブレーキ温度センサーなどを含む。「VideoBox Premium」は走行中のドライバーを撮影し、コーチと映像を確認しながら運転技術を分析するためのシステムだ。
このほか、「Rear Camera Premium」、タイヤの空気圧と温度を監視する「IRTPMS Step 2」、プロ仕様のシートハーネス、カーボンクラッチ、車内冷却性能を高める追加ファンも装備される。
オプションでは、後方から高速で接近する車両を知らせるリヤレーダーを選択可能。ボディカラーとリバリーは、フェラーリ デザインスタジオが用意する幅広いカラーから選べる。
1970年の512 Mから続く「モディフィカータ」の歴史
「モディフィカータ」の名称が初めて使用されたのは、1970年発表の「512 M」だった。512 Sを発展させたモデルで、軽量化と高出力化が施されたV12エンジンは610cvを発生。新設計の4バルブヘッドと、より流麗で空力性能に優れたボディを採用し、1971年のメーカー世界選手権に参戦した。
その後、フェラーリは公道走行モデルにもモディフィカータを意味する「M」を用いた。1994年のF512 M、1998年の456M GT、2002年の575Mマラネロ、2020年のポルトフィーノMなどがその代表例である。

サーキット専用車では、2020年の488 GTモディフィカータに続き、2023年には499Pモディフィカータが登場。499PはFIA世界耐久選手権で戦い、2023年から2025年までル・マン24時間レースを3連覇。2025年にはフェラーリへ53年ぶりとなる世界耐久選手権のマニュファクチャラーズおよびドライバーズタイトルをもたらした。
2027年には富士スピードウェイでも走行
296 GTモディフィカータを購入すると、「クラブ コンペティツィオーニGT」への2年間、または12ラウンド分の参加資格が含まれる。
2027年シーズンは、スペインのヘレス、イタリアのミサノ、富士スピードウェイ、米国のインディアナポリス、フランスのポールリカール、ベルギーのスパ フランコルシャンで開催。シーズンの最後には、開催地と日程が今後発表される「フィナーリ モンディアーリ フェラーリ」も予定されている。

全長5,033mm、全幅2,050mm(ミラーを含む場合は2,230mm)、全高1,082mm、ホイールベース2,660mm。乾燥重量は1,330kgで、燃料タンク容量は120リッター。タイヤはフロントが325/680 R18、リヤが325/705 R18となる。
730cvのV6ツインターボ、GTレース直系のシャシー、499Pから着想を得た空力技術、そしてコーチを乗せられる2シーター。296 GTモディフィカータは、レーシングカーの速さと顧客向けサーキットモデルならではの自由を融合した、現代フェラーリの技術を象徴する1台である。
Text:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)
Photo:Ferrari

