1. ホーム
  2. セダン&ワゴン
  3. 初テスト Sクラスの電動モデル メルセデスEQSのプロトタイプ

初テスト Sクラスの電動モデル メルセデスEQSのプロトタイプ

2021年4月10日

メルセデスEQS 580のプロトタイプをテスト。メルセデスEQSは、Sクラスのような快適さをEVモデルで提供する。そのプロトタイプに乗ってみると、メルセデスベンツの快適さがよくわかる。その動力性能、乗り心地、電気自動車としての性能、航続距離なども含めてレポート。

メルセデスは、「EQS」で新しいアプローチをとっている。
「EQC」や「EQA」とは異なり、「Sクラス」に対抗するこのオールエレクトリックカーは、まったく新しいプラットフォームを採用しているからだ。
我々は、そんな「EQS」のプロトタイプに同乗させてもらい、このハイクラスEVに何ができるのかを明らかにする。

プロトタイプには青黒いカモフラージュが施されているが、「EQS」がすでにビジュアル的に既成概念を打ち破っていることは明らかだ。
ロングホイールベース、ショートオーバーハング、短いフロントフードと流れるようなリアを持つ、「Sクラス」とは異なった、ほとんどバンのようなシルエット。
メルセデスはこのシルエットとともに新たな章を開く。

それにもかかわらず、印象的なサイズは「Sクラス」をも凌ぐものだ。
「EQS」の全長は5.21メートルで、3メートルを超えるホイールベースにより、ゆとりある室内空間を実現している。
航続距離が気流に乗って損なわれないように、「EQS」は風の抵抗を考慮して設計されている。
その結果、Cd値は0.20となっている。
その数値は市販車としては世界記録だとメルセデスは主張する。

EQSのインフォテイメントは、日常の動作を学習し、個々のドライバーに合わせた提案をセンターモニターのショートカットとして重ね合わせるようになっている。

2種類のバッテリーサイズと約800kmの航続距離

「EQA」や「EQC」とは異なり、メルセデスは「EQS」に電気自動車専用の新しいアンダーパーツを採用した。
他の競合車のように800ボルトの技術に頼るのではなく、メルセデスは「EQS」に400ボルトのアーキテクチャを採用している。
このバッテリーには、90kWhと107.8kWhの2つのサイズが用意される。
このバッテリーとリアアクスルの電動モーターを組み合わせることで、最大770kmの航続距離を実現する。
充電装置は最大200kWまで対応可能となっている。
具体的には、15分で300km分の充電が完了する。
充電中にできるだけ早く動作するように、バッテリーの冷却と予熱が行われ、ナビゲーションシステムに充電停止の情報が通知されるようになっている。

現行Sクラスとは明らかに異なったシルエットを持つEQS。そのサイズはかなり大きい。

EQSエンジン、当初は333~524馬力を発揮

性能面では、当初245kW(333馬力)から385kW(524馬力)の電動モーターが用意されている。
「EQS」は、構成に応じて、リアアクスルに電動モーターを搭載した後輪駆動や、フロントに第2の電動モーターを搭載した全輪駆動になる。
いずれにしても、「EQS」の最高速度は210km/hで制御されているので、航続距離が損なわれることはない。

ボタンを押すと、まるで魔法のように助手席のドアが開く。
室内には、十分なスペースと幅1.41メートルの装飾的な要素であるハイパースクリーンがあり、3つのスクリーンが配置されている。
1つは計器類用、もう1つはMBUX(メルセデスベンツユーザーエキスペリエンス)システム用、そして助手席用の3つのスクリーンで、「EQS」のインフォテインメント機能や快適機能にアクセスすることができるようになっている。
例えば、助手席からナビゲーションシステムに新しいルートをセッティングすることができるようになっている。

EQSのドアハンドルは電動式で、ボタンを押すと自動的にドアが開閉するという演出だ。

そして実際に524馬力の「EQS 580」に同乗させてもらうべく、助手席に身を沈める。
静かにパワーがオンになる。
カントリーロードで、2.5トンもの重量を持つ「EQS」が活発なスタートを切る。
エアサスペンションは荒れた段差も平気で飲み込み、騒音レベルも陸路では純粋な静寂を保っている。
それはラグジュアリーな雰囲気にぴったりだ。
その後で、カーブや狭い通路でベンツを操縦する。
「EQS」は、助手席から見た限りでは、機敏で扱いやすい印象を受ける。

ドライブの最後に、「EQS」は何ができるか、その実力を示す必要がある。
私たちが乗っているのは、2基の電動モーターを搭載し、最高出力385kW(524馬力)、最大トルク800Nm以上を発揮するトップモデル「EQS 580」だ。
3つのサウンドプログラムのうち、最もスポーティなものが選択されている。
加速時に膨らむ音響的な要素の力強さを、ドラマチックに輝くアンビエントライティングとともに表現している。
EVなので推力は強力だが、奔放なものではなく、高級電気自動車にふさわしく、上品に制御されている。
ちなみに、AMGはすでに、さらにパワフルな「EQS」ヴァリアントを開発中だという。

結論:
「EQS」は、まさにその名の通り「S」を冠したモデルだ。
大きくて、豪華で、ある種の冷静さも兼ね備えている。
しかし、それが様々なパワートレインを備えた「Sクラス」に勝るかどうかは、近い将来「EQS」と「Sクラス」を同じ条件下で比較するまではまだ分からない。

メルセデスベンツのEVラインナップで最高モデルとなるのがこの「EQS」である。大きく豪華で、ハイテク電子デバイス満載のEVであろうことは最新の「Sクラス」を見れば明らかだ。またその性能も、航続距離も含めて他のEVの中で最高性能とならなくてはいけない運命を、必然的に持った自動車であるともいえる。
なぜならメルセデスベンツの「Sクラス」がそうであったようにこのクラスのトップであることを誰もが当たり前のように期待しているし、ある意味後追いの状態でこれから発表するのだから、それがテスラに負けているような内容であったならば出す意味はないだろう。
価格もかなりのものとなるだろうが、このクラスならば容認されることだし、こういうモデルこそ脱炭素だとか内燃機関廃止を進める層が率先して購入し、乗るべきなのである。

Text: Peter R. Fischer
加筆: 大林晃平
Photo: Daimler AG