18年前にイタリアで盗まれたフェラーリF50がアメリカで見つかる 果たして所有権は誰に帰するのか?

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イタリアで盗まれたフェラーリF50が18年ぶりにアメリカで発見される。2003年、イタリアでフェラーリF50が盗まれた。しかし、その正しい所有者は誰なのか? 所有権をめぐって法廷で争うことになった。

この貴重なフェラーリF50はいったい誰のものか?

2003年に盗まれた「フェラーリF50」が偶然にも発見された。
しかし、200万ユーロ(約2億6千万円)以上する521馬力の「フェラーリF50」の正当な所有者であると主張する2人の人物が現れたために、所有権をめぐって裁判を開かなくてはならなくなってしまった。
この「F50」が盗まれた経緯とは?

時は2003年にさかのぼる。
その年の初め、イタリア人のパオロ プロヴァンツィは、父と兄と一緒に「フェラーリF50」を26万ユーロ(約3,400万円)で購入した。
その価格は「F50」としては、当時でもバーゲンプライスだったが、今ではとんでもない価格で売買されている。
しかし、彼らにとって、349台しか製造されなかった「F50」のうちの1台を所有する喜びは、長くは続かなかった。
2003年3月、購入からわずか1カ月ほどで、イタリアのイモラのホテルのガレージから、その「F50」は盗まれてしまったのだ。
それはプロヴェンツィ父子にとっては非常に辛い出来事だった。
プロヴェンツィの供述によれば、保険会社は今日に至るまで保険金を支払っていないという。

盗まれたフェラーリF50に偶然気がついた当局

その後、この「F50」は、2019年12月まで行方不明のままだった。
しかし、カナダから米国への「フェラーリF50」の輸入検査の際に、当局はフェラーリのVINコード(シリアルナンバー)の一部が黒いタール状の物質で見えなくなっていることに気づく。
疑いを感じた当局は、とりあえずこの「F50」を保管した。
そして、フェラーリ本社をも含めた徹底的な調査の結果、信じられないことが判明する。
アメリカの国境で押収された「フェラーリF50」は、実は2003年にイタリアで盗まれた「F50」そのものだったのだ。

最近、フェラーリF50の価値は非常に高まっている

「F50」は、創業者エンツォ フェラーリの指揮下で開発された最後のフェラーリであるしかしその存在は「F40」の影に隠れてしまっていた。
だが「F50」はフェラーリの魅力を十分に引き出すことができるモデルだった。
4.7リッターV12ミッドエンジン(最高回転数8,500rpm)、6速マニュアルトランスミッション、カーボンファイバー強化プラスチック製のボディ、そしてF1の技術がふんだんに盛り込まれているためだ。
また、349台しか製造されていないため、1,315台製造された「F40」よりも大幅に希少性が高く、また、「F50」の後継モデルである「フェラーリ エンツォ」が合計400台製造されたことと比較しても希少性が高いと言える。
「F50」の新車価格は約38万ユーロ(約5,000万円)相当で、他のほとんどのフェラーリのスペシャルモデルと同様に、一時的に低価格になった後、急速に価格が上昇し始めた。
それまで「F50」は長年、100万ユーロ(1億3千万円)を大きく下回る価格で取引されており、「F40」よりも安い価格で取引されていた。
しかし、ここ3〜4年で「F50」の価格は急激に上昇し、現在では200万ユーロ(約2億6千万円)以下の車を見つけることはほとんどできなくなっている。
希少なカラーや、特別なヒストリーを持つ個体であれば、すでに300万ユーロ(約3億9千万円)の方向に向かっている。

話を盗難に戻そう。
この段階で盗まれた元オーナーは、当時の購入価格の何倍もの価値があるフェラーリを取り戻すことになるはずだ。
元の書類も残っているし、保険会社からの補償も受けていないし、「F50」が手元に戻るのは当たり前のことと思われた。
一件落着?
さにあらず。
そう簡単にはいかなかった。
2019年末に、米国当局が「F50」を押収したとき、その「F50」はすでに新しい所有者のものとなっていたからだ。
マイアミにある「アイコニックコレクション」のオーナーである、「F50」のニューオーナーは、その直前にオンラインで、その「F50」を143万5,000ドル(約1億5,780万円)で購入していたが、その時点ではどうやら盗難品であることを知らなかったようだ。

200万ユーロ(約2億6千万円)のフェラーリはいったい誰のものなのか?

さらに問題を複雑にしているのは、この「F50」が2003年から2019年の間に、世界中で何度も売買され、複数の人の手に渡っていたという事実だ。
一時は日本にあったとさえも言われている。
元所有者のプロヴェンツィによれば、ある日、日本から電話があり、男性が2003年の盗難届けを撤回するように促したという。
なんとも怪しげな話だ。

いずれにしても、1年半ほど押収保管されていた「F50」の所有者は現在2人いることになる。
最終的に「F50」を手にする権利があるのはいったい誰なのか。
今日まで補償を受けていない元イタリア人の所有者か?
それとも、今回、143万5,000ドル(約1億5,780万円)で「F50」を購入した新しいアメリカ人の所有者だろうか?
最終的な判断は、ニューヨークの裁判所が下すことになるが、どういう結論が下されるか、非常に気になるところだ。

なんともまあ今回の事件は不可解な、そして釈然としない話だと思われるかもしれないが、実は美術品の世界では、こういう例が昔から絶えないし、絵画や彫塑の世界ではここに贋作という要件も含まれてくるから、より一層混沌とした状況なのが、なかば普通の世界となっている。
そういう意味では、フェラーリも美術品の一部ととらえられているからこそ、の事件なわけではあるが、なにしろモノが大きい(つまり隠して密輸とかしにくい)のが難点?であるし、ばれやすく今回のような話に発展するわけである。
個人的には元のオーナーに車が戻るか保険料が払われるか(なぜ払われないのかという部分も、実は怪しいのであるが)、というのが妥当な解決だとは思うが、そんなに簡単に進むとも思えず、波瀾万丈な展開となることは必須の様相だ。

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Twitter@CBPbuffalo