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老舗の意地「BMW iX3 50 xDrive M Sport」ノイエ クラッセ第一弾モデルが日本上陸

2026年8月24日

BMW iX3はノイエ クラッセ(Neue Klasse)というニックネームを与えられた最初の一台である。そのBMW iX3に東京で試乗する日がやってきた。「今後のBMWの新たな時代を切り拓く象徴と位置付けられている」(広報資料のまま)とまで言われるクルマに、大林晃平が試乗した。

のっけから結論を言ってしまえば、老舗の自動車メーカーが本気で作った(はず)の自動車というのは、やっぱりタイシタものだ、と思った。おじさん(か、おじいさん)には懐かしい響きのノイエ クラッセ(新しいクラス)」という言葉、僕もその昔「カーグラフィック」などで知って以来、実に久しぶりに聞いて懐かしかった。なんでもその昔、1960年代に経営危機に直面したBMWが大きく変革し、基盤を作ったBMW1500などの新時代のクルマに与えられた愛称がノイエクラッセなのである。

そんなころから60年以上が経過し、BMWにもあらたな危機感が生まれたのか、ここで今またノイエ クラッセという言葉を前面に出した展開を始めている。

“ノイエクラッセ顔”が斬新なフロントマスク。ホイールアーチに無塗装プラスチックがないこともあって洗練された印象を与える。
面で光るテールランプが新しさを印象付ける。ドアハンドルはポップアップ式を採用。

特に3シリーズになるはずのセダンタイプのモデルと、今回のiX3がその先鋒で、まずは日本においてiX3が発売されることになった。先日乗ったメルセデスベンツのCLAが最初に内燃機関のモデルを日本で発売し、その次にBEVという展開をしているのに対し、BMWは最初に電気自動車(今後は内燃機関の発売予定がある)というのが対照的で興味深い。これは上野金太郎さんの作戦なのだろうか?

我らがAuto Bildが主催する「ゴールデンステアリングホイール2025(Das Goldene Lenkrad 2025)」でBMW iX3が「イノベーション賞」を受賞している:https://autobild.jp/59704/

という話はさておき、わが国で販売されるiX3はiX3 50 xDriveとiX3 50 xDrive M Sportの二車種で、それぞれ価格は982万円と1034万円。今回試乗することになったのはMスポーツの方であった。どちらも前の電動モーター(167PS 255Nm)と後ろのモーター(326PS 435Nm)の2モーターを持つことに変わりなく、これはアウトビルトジャパン代表の元愛車生誕50周年を迎えた635CSi(E24)よりもずっとパワフルだ。主な差異は、普通のが20インチ、Mスポが21インチとなることであろう。

“ブタっぱな(豚鼻)”復活!

個人的にはMスポーツではない、普通の方が好みなのだが、「売れ筋はMスポですから」と言われれば返す言葉はない。炎天下の都内で試乗することになったのはMスポーツにパノラミックガラスサンルーフ(219,000円)とパーキングアシストプロフェッショナル(64,000円)のオプション装備が加わり、10,623,000円のクルマであった。

BMWのエンブレム部分を凹ませた複雑な線で構成されたテールゲート。赤くないリアビューを演出する新しいタイプのテールランプが斬新。

最近の広報車のオプション洪水にマヒしているのか、意外とオプション少なくて安いじゃん、とは思ったが、かつての633CSiAや733iAの価格より高い3シリーズということにあらためて時代の移り変わりを感じさせられる。

テクニカルデータBMW iX3 50 xDrive
モーター 前/後誘導モーター(ASM)/巻き線界磁式動機モーター(EESM)
システム最高出力345kW/469PS
システム最大トルク645Nm
バッテリー容量109.1kWh
最大受電容量 DC320kW
航続距離(WLTC モード)835km
全長/全幅/全高4,780/1,895/1,635mm
ホイールベース2,895mm
車両重量2,330kg
トランク容量 前/後58/520-1,750L
0-100km加速4.9秒
最高速度210km
価格1,034万円(税込)
フロントガラス下の「BMWパノラミックビジョン」は素晴らしい。各種操作性は高い。各所に斜線デザインがちりばめられている。

大きく重くしっかりしたドアを開けて乗り込むと、今までのBMWというか自動車とはかなり異なったディテールと雰囲気の室内である。特にフロントガラス下部に広がるBMWパノラミックビジョンと平行四辺形のフリーカットデザインコントロールディスプレイは繊細で美しく、かつ新しい時代感満載である。先日のCLAの室内がちょっと安っぽいカラオケスナック的な雰囲気であったのに対し、こちらはハイテクオフィスみたいな空間である。よくよく観察してみると、ダッシュボードの手前部分が布地風処理となっており、その中が青く光るイルミネーションが目に入った。行ったことはないが、クラブっていうこういう感じなのだろうかとも思うが、せっかく洗練された広大なディスプレイを持っているのだから、これは余計に感じられた。

メーターパネルが前方に移動したことで実現したユニークな形状のステアリングホイール。ダッシュボード左右のクロスの部分にイルミネーションがある。
床ははほぼフラットで、ゆとりある後席スペースを確保。シートの掛け心地も申し分ない。

室内検証も終わり、さあ走りだそうと思ってまず違和感を覚えたのはステアリング形状である。握りが太かったり、なんとも言えない四角っぽい形状はまあ良しにするとしても、上下2本スポークのステアリングは戦前のブガッティやイスパノスイザについていたような(笑)ステアリングに慣れている方ならともかく、運転中ずっと気になって仕方なかった。斬新なデザインとも言えるが個人的にはあまり好きではない。

さて、走りに関して言うと、iX3は静かで滑らかでとにかく速い。特に余計な人工サウンドや余興のような音を出さないため、無音ともいえる空間はひたすら快適に都内の道路を滑る。荒れた路面では255/40 R21というサイズの大きなタイヤ(嗚呼Mスポ……普通の仕様は20インチとなる)と2330㎏(やっぱり重い)の車重が仇となってやや乗り心地がどたつく印象はあるものの、走り曲がり止まる部分においては駆け抜ける喜びの老舗の看板に偽りはない。航続距離も圧倒的に長い835㎞(普通のは906㎞)なので、どのような条件下でも700㎞はちゃんと走行可能であろう。

スリークな印象のサイドビュー。

というわけで、現段階においてiX3はBEVとしても一台の自動車としても、大変完成度が高く、ノイエ クラッセという言葉が決して誇張に感じられない作品であると思う。

と、やや褒めすぎた感もあるので、気になった部分も記しておくと、太さと形状からなのか、AピラーとC/Dピラー部分の死角が大きく、なんとなく周囲がスカッと見えない印象が強い。全長4780㎜、全幅に至っては1895㎜もあるので物理的な大きさは如何ともしがたいが、それでももっとくっきりさっぱり、視界少なく見せてくれたなら、と思うことは多かった。

ナンバープレートの「1960」はBMWの会社の立て直しと新たな方向性を示した重要な年を表している。

昔話をして申し訳ないが、ちょっと昔のBMWというのはとにかく明るく周囲が見え、バイエルンの青空とアルプスの白い雪のようにくっきりと晴れた車だった。このiX3に続いてやってくるはずのセダン(今回のより軽いはず、ですよね)が、もっともっと明るくBMWの未来をくっきり描くようなさわやかな自動車でありますように。日本上陸を心待ちにしていたい。

Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)