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シューティングブレーク対決 VWアルテオン シューティングブレーク対メルセデスCLAシューティングブレーク 勝者は?

2021年4月2日

シューティングブレーク比較テスト: メルセデスCLAがVWアルテオンを迎え撃つ 優れているのはどちらか?

彼らをステーションワゴンと呼ぶのはよそう。メルセデスCLAとVWアルテオンのシューティングブレークはステーションワゴンと呼ぶにはクール過ぎるからだ。比較テストを通じて彼らに何ができるかを確かめた。

メルセデスとVWは、ビッグネームを恐れない

シューティングブレークは過去には伝統的に、2つのドア、クーペのような車高の低さを持ち、大きなテールゲートを備えた、上質でかなり珍しいボディシェイプを意味していた。
そして、それはステーションワゴンと同じ意味では決してない。
シューティングブレークの全盛期には、それは職人や商売人のためのものだった。
最も伝説的なシューティングブレークといえば、「アストンマーティンDB5」をベースにしたものが有名だが、「ボルボP1800 ES(白雪姫の棺)」や「ランチア ベータHPE」、英国らしい「リライアント シミター」などのデザインも人気がある。

アルテオン シューティングブレークは、ライバルよりも高い位置にある

そして今は?
ダイムラーとVWは、Aクラスとパサート(つまりアルテオン)、というお行儀の良いノーマル車を、少しだけドレスアップし、シューティングブレークを作った。
どちらが形式的に正しく、かつ面白いタイプなのかはオープンにしておこう。
基本的にはどちらのクルマもこのままでいいと思う。
外見は、VWの方がベンツよりも一回り大きい。
全長は4.87mで20cm近く長く、全幅は1.87mで4cm広くなっている。ホイールベースもメルセデスの2.73mに対して、VWは2.84mと、かなり大きくなっている。
しかしこれはフロントのスペースには反映されておらず、実質的には同等であり、どちらも気持ちよく広々としている。

しかし、リアでは「アルテオン」がサイズ面での優位性を明確に示している。
「アルテオン」のリアはより広々としていて、長い足でも余裕があり、ゆったりと座ることができる。
明らかに幅の狭いベンツでは、リアシートが床からフラットになりすぎて、背の高い人はなんとも座りづらくなっている。

MBUX(メルセデスベンツユーザーエクスペリエンス)システムを搭載したCLAでは、ドライバーの負担を軽減することができる。
「CLA」のトランクは495~1360リットルで、VWの565~1632リットルに比べてもかなり小さい。
メルセデスでは背もたれを40:20:40の割合で折り畳むことができるが、VWでは左右非対称に2つに分かれており、大きなハッチもある。
ちなみに、両モデルともローディングシルが高いため、重い荷物などの積み込みが大変となっている。
しかし実際には、どちらも多くの荷物を積むことができる。
「アルテオン」の最大積載量は560キロ、「CLA」は537キロだ。
もう1つの特徴は、ベンツの方が細部に至るまでより精巧に作られ、より魅力的であるということだ。
インストルメントはより美しく、より大きく、ナビのタッチスクリーンは反応が早く、メニューも明確で、見た目も魅力的だ。
また、センターコンソールにはスピードダイヤルボタンがあり、MBUXシステム(テスト車はMBUXハイエンドパッケージ付きで3,552ユーロ=約46万円)は、VWの音声入力よりも確実に一世代先を行っている。

操作性の面での勝者: CLAに搭載されているMBUXシステムは、アルテオンに搭載されているシステムを古臭く感じさせるほどだ。

「CLA」とは異なり、「アルテオン」のシステムでは、クライメートやシートヒーターなどの車両機能を操作することはできない。
適切な圧迫点のないステアリングホイールの過神経質なタッチ面や、タッチスライダーと呼ばれるクライメートコントロール用のセンサースライダーは、まったく満足できるものではない。
また、「ディスカバープロ(Discover Pro)」ナビゲーションシステム(1,655ユーロ=約21万円)には、シンプルなボリュームコントロールスイッチも見当たらない。

しかし機構的には「アルテオン」に搭載されているDSG(デュアルクラッチトランスミッション)は、よりスムーズになっている。
VWもベンツも2.0リッター4気筒のディーゼルを搭載している。
VWでは、現行バージョンでおなじみのTDIで、200馬力を発揮する。
比較するとVWのエンジンはベンツのディーゼルよりも、早い段階で力強く始動し、勢いよく走り出し、スムーズな走りを実現している。
以前はギクシャクしていた7速デュアルクラッチトランスミッションも、今ではかなりスムーズになり、ほとんどトルコン式オートマチックのように感じられる。
しかしフレンドリーなマナーの弊害は、若干のレスポンスの遅れだ。
その原因は、今回のテスト車の「アルテオン」には、「4MOTION」全輪駆動システムが搭載されていたためだと思われる。
オプション装備のDCCシャシー(1,200ユーロ=約15万円)のアジャスタブルダンパーを装着すると、よりスムーズな走りと主観的なバネ感が得られるし、またステアリングはダイレクトかつ正確に反応するが、ベンツのそれよりもスムーズに動く一方、フィードバックは少ない。

良くなった。VWはDSGのギクシャク感は解消したが、反応が少し遅れることはまだ残っている。

一方、アダプティブダンパーを装着した「CLA」は、かなりしっかりとした走りを実現している。
「CLA 220d」は、190馬力の2リッターエンジンを搭載している。
パワフルなエンジンで、特に中速のエンジン回転では大きく強く唸るが、全体的には穏やかにチューニングされている。
燃費についても同様で、テストではベンツがリッターあたり15.8km、VWがリッターあたり15.3kmを達成している。
「CLA」に搭載されているデュアルクラッチトランスミッションは8速で可動するため、操縦時や市街地ではギクシャクすることもあるが、負荷がかかったときの反応はVWのDSGよりも速く、的確だ。
「アルテオン」との直接比較では、「CLA」は車重が125キロ軽いため、より機敏で軽快な走りを実現している。
試乗した「CLA」は、アダプティブダンパー(3,558ユーロ=約46万円で、大径ブレーキを含むテクノロジーパッケージに含まれる)を装備していたので、かなりしっかりしていて、足回りはとても良い。
また、正確に作動し、フィードバックの良いウォームステアリングも高い評価が与えられる。

よりダイナミック。CLAはアルテオンよりも軽量で、その通り軽快にドライブすることができる。特にそのステアリングは素晴らしい。

どちらのモデルもブレーキは驚くほど安定している。
ミシュラン製パイロットスポーツ4を装着した「CLA」は、強力なブレーキで100km/h走行時からわずか33.7mで停止する。
とても優秀だ。
しかし、ピレリPゼロを装着した「アルテオン」も、34.1メートルという数値で、決して劣ってはいない。

最後になってしまったが、我々はVWとメルセデスの提示する価格にも驚かされる。
「CLA 220dシューティングブレーク」は、評価済みのテストカーの装備を含めて53,818ユーロ(約700万円)となっている。
高い?
いや、結論付けるにはまだ早すぎる。
驚くなかれ、「VWアルテオン2.0 TDIシューティングブレーク」は、前述したように全輪駆動システム「4MOTION」付きで、62,185ユーロ(約814万円)という、8,400(約110万円)近くもベンツより高い価格である。
シューティングブレークとは、やはり常に特別な存在なのだと実感させられる価格だ。

800点満点中537点で第2位: VWアルテオン シューティングブレーク2.0 TDI 4MOTION
リアのスペースが広く、トランクも大きい。バランスのとれた調和のとれた走り。でも驚くほど高価だ。

800点満点中、550点で1位: メルセデス CLA 220d シューティングブレーク
VWよりもわずかに幅が狭く、より愛情のこもった内装、トップレベルのマルチメディア。扱いやすく、そしてVWよりも1万ユーロ(約130万円)近く安い。

結論:
どちらのシューティングブレークも、2.0リッターのディーゼルエンジンを搭載しているため、見た目は刺激的で、人目を惹くし、速くて経済的でもある。
最終的には、やや小ぶりながらも、より魅力的で、価格も安いメルセデスベンツが今回は勝利を得た。

そもそもシューティングブレークというものは、英国の広大な領地を持つ貴族が、愛用のホーランド&ホーランドのライフルと、ポインターみたいな狩猟犬を積み込んで、ハンティングに行くための自動車であり、「ジャガーXJ-S」とか「メルセデスベンツ450SLC」あたりを強引にワゴンに改造した写真を見た記憶がある。
つまり本来はなんとも刹那的なクルマなわけだが、今やそういうシューティングブレークさえも普通の車種のひとつとして展開する時代になっているのであった。つまりシューティングブレークというのは、ワゴンのように荷室スペースの広さを云々かんぬんするものではなく、実用性よりもお洒落さを求める層に訴求するクルマだから、正直言ってしまえば自分の好きなブランド、スタイルで選べばいいのだと思う。今回はメルセデスの勝ちではあるが、実際には「CLA」にハードウェアの面で劣る顕著な部分などないとも思う。
今回の勝敗の多くは価格に起因するもので、確かに800万円という「VWアルテオン シューティングブレーク」の価格は驚くほど高く、普通のパサートヴァリアントの2台分近い高価格だ。
だが一方の「メルセデスCLAシューティングブレーク」だって700万円という価格であり、「Eクラス」に手が届こうというこの価格は決して安くはない。だが本来シューティングブレークというのは前にも書いた通り、お金持ちのための存在であり、こういう部分にツッコミを入れる世界の自動車ではないのかもしれない。
そういう意味では希少性とか、お洒落さを楽しむための金額ととらえるべきなのだろうし、そういうことを気にする無粋な(私のような)人間は、普通のワゴンを最初から選ぶべきなのである。

Text: Dirk Branke, Berend Sanders
加筆: 大林晃平
Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD