さよなら伝説のV12エンジン メルセデスが正式にV型12気筒エンジンの生産中止を発表 米国、中東&中国では引き続き販売が継続される
2026年8月4日
12気筒エンジンの終焉が、いよいよ現実となった。少なくとも欧州ではそうだ。メルセデス・ベンツは、伝説的なV12エンジンをEU市場で廃止することを正式に発表した。
大排気量エンジンを愛するファンにとっては、まさに苦い知らせである。メルセデス・ベンツは、6.0リッターV12ツインターボエンジンの欧州での販売を終了する。このV12は、より厳格化されたEuro 7排出ガス規制への対応が困難となったことから姿を消し、今後は改良型V8エンジンがメルセデス・マイバッハの最上位パワーユニットを担うことになる。
V12エンジンに欧州での未来がないことは以前から予想されていたが、今回メルセデス・ベンツが正式に認めた形だ。同社の広報担当者によれば、新しいEuro 7排出ガス規制のもとでは、V12を経済的に継続販売することができなくなったという。
メルセデス・ベンツがV12を廃止 新たな頂点はV8へ
今回の措置はEU加盟国だけにとどまらない。欧州の車両登録制度であるCoC(Certificate of Conformity:適合証明書)を採用するアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーも対象となる。また、インド市場でもV12エンジンはラインアップから姿を消す。

V12の後継となるのは、改良型4.0リッターV8ツインターボエンジンだ。最高出力は450kW(612PS)を発生し、従来のフラッグシップユニットに迫る性能を実現している。
メルセデス・ベンツは、この新型V8について「マイバッハの顧客が求める静粛性や快適性、そして圧倒的なパフォーマンスを十分に満たしている」と説明しており、欧州市場ではV12の正統な後継ユニットとの位置付けだ。
V12はアメリカ、中国、中東で存続
とはいえ、V12が完全に消滅するわけではない。中国、アメリカ、中東といったマイバッハの主要市場では、「メルセデス・マイバッハ S 680」が今後もV12エンジンを搭載して販売される。
この6.0リッターV12ツインターボは最高出力630PS、最大トルク900Nmを発生。新しいV8を18PS、50Nm上回るスペックを誇る。それでも車名は世界共通で「S 680」が維持される予定だ。
12気筒はますます希少な存在へ
メルセデス・ベンツの決断によって、12気筒モデルはさらに数を減らすことになる。すでにベントレーはW12エンジンの生産を終了し、BMWも現行7シリーズへの世代交代とともにV12へ別れを告げた。
現在も量産車でV12を継続しているメーカーは、ゴーストとファントムに搭載するロールス・ロイスくらいしか存在しない。
欧州では、もはやV12は「絶滅危惧種」どころか歴史の一部になろうとしている。環境規制の強化という時代の流れは止められない。しかし、一方で自動車史を彩ってきた名機がまたひとつ姿を消すことに、寂しさを覚えるエンスージアストは少なくないはずだ。We miss you, V12.
Text: Bianca Garloff
Photo: Mercedes-Benz
編集部より
V12エンジンが消える理由は「技術的に作れない」からではない。「作ろうと思えば作れる」が、「規制をクリアしながら採算を取ることができない」というのが実情だ。これは今後、V10や大排気量V8にも共通する課題となるだろう。皮肉なことに、欧州で姿を消したV12は、中国やアメリカ、中東では今なお求められている。内燃機関の終焉は世界一律ではなく、市場ごとに異なるスピードで進んでいるのだ。AUTO BILDが「いよいよ内燃機関への締め付けが本格化した」と表現したのも、その現実を象徴している。今後数年で、高級車市場の勢力図はさらに大きく変わっていきそうだ。アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)

