1. ホーム
  2. セダン&ワゴン
  3. V12からV8へ 大幅なマイナーチェンジが施されたV8メルセデス・マイバッハSクラスに初試乗&チェック その走りとは?

V12からV8へ 大幅なマイナーチェンジが施されたV8メルセデス・マイバッハSクラスに初試乗&チェック その走りとは?

2026年7月31日

メルセデスはマイバッハSクラスに大幅な改良を施した。そして欧州市場ではV12エンジンが姿を消すことになった。我々は、V8を搭載した新型マイバッハSクラスを試乗した。

メルセデス・マイバッハSクラスのフェイスリフトは、発表当初から大きな話題を呼んだ。ラグジュアリーセダンのモデルチェンジに伴い、欧州市場ではV12エンジンが廃止されるからだ。その背景にあるのが、より厳格なEuro 7排出ガス規制である。

今後、最上級のパワーユニットを担うのは、最高出力612psを発揮するV8マイルドハイブリッドとなる。V12は防弾仕様の「S 680 Guard」と、欧州以外の一部市場でのみ引き続き設定される。

名門V12が姿を消したとはいえ、マイバッハはSクラスファミリーの頂点に立つモデルとして、その圧倒的なラグジュアリー性を維持する。今回のモデルチェンジでも、さらなるパワーアップより、快適性の向上、最新テクノロジーの採用、そしてパーソナライゼーションの拡充に重点が置かれている。

大型化したグリルと充実したカスタマイズ

外観では、ラジエーターグリルが大型化され、新しいライティンググラフィックを採用。さらに、カスタマイズの選択肢も大幅に増やされた。

インテリアでは、カラー、素材、専用仕立てのバリエーションがさらに拡充されている。加えて、新世代のメルセデス・オペレーティングシステム「MB.OS」が導入され、デジタル機能も強化された。

フェイスリフトを機に、ラジエーターグリルの周囲と「Maybach」のレタリングがイルミネーションで輝く。オプションの「ナイトシリーズ」では、「ダーククローム」のトリムエレメントも選択できる。

フェイスリフトを受けたマイバッハSクラス。グリル周辺と「Maybach」のレタリングがイルミネーションで輝く。オプションの「ナイトシリーズ」ではダーククロームのアクセントも選択可能だ。

ここまでは順当な進化だ。初代マイバッハ62とは異なり、このラグジュアリーSクラスは、単なるショーファードリブンのリムジンとして設計されているわけではない。自らステアリングを握る「ドライバーズカー」としての性格も持ち合わせている。メルセデスによれば、実際に顧客のおよそ半数が自分で運転しているという。

とはいえ、マイバッハSクラスの主役がラグジュアリーと快適性であることに変わりはない。そして、その任務をこのクルマは見事なまでにこなしている。

全長5.48mという堂々たるボディサイズにもかかわらず、マイバッハSクラスは驚くほど身軽だ。最大10度まで操舵する後輪操舵のおかげで、最小回転半径も非常に小さい。

全長5.48mの巨体とは思えない俊敏な身のこなしを見せるマイバッハSクラス。後輪操舵によって取り回し性能も大きく向上している。

V8になっても力強さと余裕は健在

4気筒分を失ったマイバッハS 680だが、残された8気筒は十分すぎるほどの力強さと余裕を感じさせる。

コンフォート志向のセッティングでありながら、エンジンはそのキャラクターを失っていない。V8は普段、実に控えめで上品な存在感を示す。しかしアクセルを強く踏み込めば、この形式ならではのわずかにメタリックなサウンドが顔を出す。

遮音は完璧に近い。それでいて、感情まで完全に消し去っているわけではない。この絶妙なバランスがいい。

マイバッハのエアサスペンションもまた、見事な仕事をする。

9速オートマチックトランスミッションは、変速をほとんど感じさせることなくギアを切り替えていく。それでいて、決して反応が鈍いわけではない。同時に4輪駆動システムは、V8が生み出すパワーを確実に路面へと伝えていく。

マイバッハでは、ボディカラーだけでも150色以上が用意される。2トーンカラーを選択すると、約1万5000ユーロ(約280万円)の追加料金が必要になる。

ボディカラーは150色以上から選択可能。2トーンカラーも用意されるが、追加料金は約1万5000ユーロ(約280万円)と、さすがマイバッハという設定だ。

しかし、最も印象的なのはサスペンションだ。標準装備の「AIRMATIC」エアサスペンションは、路面の大きなうねりを滑るように乗り越え、マイバッハならではの快適性を提供する。路面の凹凸はほぼ完全に吸収され、車内に伝わってくるのは、しばしば「音」だけだ。

それでも、さらに上を求めるなら、オプションの「eABC(エアクティブ・ボディ・コントロール)」も選択できる。

5.48mの巨体を感じさせないステアリング

ステアリングフィールも印象的だ。正確でありながら、クルマに不安定な挙動を与えることがない。とりわけ注目したいのが、驚くほど小さな回転半径だ。その秘密は、最大10度まで操舵する後輪にある。

全長5.48mというサイズは、標準仕様のSクラスよりもはるかに長い。それにもかかわらず、街中ではその巨大さを意識させられる場面が少ない。

オプションの「ファーストクラス・リア」では、2脚の独立したシートと、後席左右を分ける一体型センターコンソールを備える。また、「マヌファクトゥーア」パッケージを選べば、インテリアカラーは400色以上から組み合わせることができる。

「ファーストクラス・リア」では2脚の独立シートを用意。マヌファクトゥーアではインテリアカラーだけでも400色以上から選択できる。

快適性のベンチマーク

インテリアにおいて、マイバッハSクラスは快適性のベンチマークという役割を今も守り続けている。多方向に電動調整できるシートには、充実したマッサージ機能を搭載。長距離移動における快適性は最高レベルだ。さらに、ブルメスターのサウンドシステムや厳選された高品質素材が、室内全体のラグジュアリーな雰囲気を引き立てている。

ただし、ショーファードリブンの定位置ともいえる右後席については、身長の高い乗員にとって必ずしも理想的とはいえない。筆者も残念ながら、脚を完全に伸ばすことができなかった。

ベース価格は約20万ユーロ(約320万円)

結論からいえば、マイバッハSクラスは完全な成功作だ。ドライバーも乗員も、まるで大統領専用車のような快適性と、優れたハンドリングを享受できる。ただし、それを購入できるだけの資金があれば、の話だ。

マイバッハを自宅のガレージに収めたいなら、最低でも19万7,481ユーロ(約3,675万円)が必要になる。メルセデス・マイバッハS 680なら、最低価格は23万4954ユーロ。オプションを惜しみなく選べば、30万ユーロを超えるのは簡単だ。

結論:
メルセデス・マイバッハSクラスは、究極のラグジュアリーと快適性を提供する。そのうえ、無数ともいえるパーソナライゼーションの選択肢が用意され、ほとんど望むものがないほどの充実ぶりだ。

V12が廃止されるのは残念でならない。しかし、滑らかな回転フィールと圧倒的なトルクを備えたV8は、十分に説得力のある代替エンジンだ。V12を失っても、マイバッハの本質まで失われたわけではない。

Text: Sebastian Friemel
Photo: Mercedes-Benz AG