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【Brembo調査】道路は本当に安全なのか?「10人中9人が安全と感じる」一方、専門家の半数以上が危機感。交通安全に潜む”信頼ギャップ”が明らかに

2026年7月16日

イタリアのブレーキシステムメーカー、Brembo(ブレンボ)の支援を受けてEconomist Enterpriseが実施した最新調査「Safety in Motion: Driving Trust in Modern Mobility」によって、世界10か国の道路利用者と交通分野の専門家の間に、道路交通の安全性に対する認識の大きな隔たりが存在することが明らかになった。

道路は本当に安全なのか? 一般ドライバーと専門家の認識に大きな隔たり

調査結果で最も注目すべき点は、「道路は安全だ」と感じている一般利用者が約90%に達したのに対し、同じ認識を持つ交通分野の専門家はわずか45%だったことだ。つまり、私たちが日常的に感じている「安心感」と、交通安全を専門的に分析する人々の評価との間には大きなギャップが存在しているのである。

世界では毎年約120万人が交通事故で命を落としている。そのような現実がある中で、「実際以上に安全だ」と感じる過信こそが、交通事故削減を妨げる見落とされがちな要因になっていると調査は警鐘を鳴らしている。

世界10か国・6,000人以上を対象に実施

今回の調査は、日本を含むブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、韓国、英国、米国の世界主要10市場で実施された。

対象となったのは一般道路利用者5,135人と、交通政策、自動車メーカー、インフラ、テクノロジー分野などで働く専門家1,022人、合計6,157人。対象国は世界の自動車生産のおよそ75%を占める主要市場であり、現在のモビリティを取り巻く意識を示す貴重なデータとなっている。

最も危険な国ほど「安全だ」と感じている

今回の調査で興味深いのは、道路事情が必ずしも良くない国ほど、利用者の安全への信頼が高いという逆説的な結果だ。

ブラジル、中国、インドでは94%もの利用者が「道路は安全」と回答した。一方、同地域の専門家で同じ回答をしたのは18%しかいない。

さらに、この3か国の交通事故死亡率は人口10万人あたり16.2人と、調査対象国平均の約2倍に達している。それにもかかわらず利用者は高い安全意識を持っていることから、Economist Enterpriseは「インフラ整備や先進技術の普及が、人々に実際以上の安心感を与えている可能性がある」と分析している。

日本は”信頼ギャップ”が最も小さい国の一つ

一方、日本と韓国は調査の中でも特徴的な存在だった。

日本では一般利用者の84%が道路を安全だと感じており、専門家も70%が同様の認識を示した。この差は14ポイントで、調査対象国の中では最も小さいグループに分類されている。

調査では日本と韓国を「トラスト・ガーディアン」と位置付け、厳格な安全基準や第三者認証制度、高品質な製品づくりが社会全体の信頼を支えていると分析している。

その一方で、高い信頼が長期間続くことで、安全性が徐々に低下しても変化に気付きにくくなるリスクも指摘されている。

問題は機械ではなく「人」と運転支援システム

現在のモビリティでは、ブレーキやサスペンションなどの機械的故障よりも、人と電子制御システムとの関係が大きな課題になっている。

交通分野の専門家のうち、機械的故障を主要な安全要因と考える人はわずか3%だった。

それに対し、

30%が運転支援システム(ADAS)の誤使用・誤解
24%がドライバーの注意をそらす車載機能

を最大のリスクとして挙げている。

さらに専門家の65%は、「運転支援システムの広告が性能を実際以上に伝えている」と回答。62%は「ドライバーが注意を払わなくてもよい」という誤解を招いている可能性を指摘し、60%はシステムの限界が十分に説明されていないと考えている。

高度な運転支援機能が普及する現在だからこそ、「クルマが守ってくれる」という過信が新たな事故要因になりかねないという見方だ。

市民はより厳しい交通安全対策を支持

興味深いことに、安全だと感じながらも、多くの市民はさらなる安全対策を望んでいる。

回答者の88%は制限速度の引き下げや交通取り締まり強化など、より厳格な交通安全施策を支持。また、安全性向上のためなら追加コストを負担してもよいと回答している。

しかし専門家の68%は、安全性向上が進まない最大の要因として「行政と産業界の連携不足」を挙げた。技術開発だけでは交通事故ゼロは実現せず、制度設計や社会全体での協力が不可欠だという認識が示されている。

Brembo「交通事故ゼロの未来には社会全体の協力が必要」

Bremboエグゼクティブ・チェアマンのマッテオ・ティラボスキ氏は、「この信頼ギャップを埋めるには、自動車業界、政策立案者、社会全体が協力し、新技術の利点だけでなく限界についても正しく理解してもらう必要がある」とコメントしている。

また、国連事務総長道路安全担当特使のジャン・トッド氏は、「道路安全への信頼は与えられるものではなく、自ら築くものだ。研究や議論だけでは人命は救えない。行動こそが重要である」と締めくくっている。

【編集部コメント】
自動車はADASや自動運転技術の進化によって、かつてないほど安全性能を高めている。しかし今回の調査が示したのは、「技術が進歩するほど、人は安心しすぎる」という皮肉な現実だ。

特に日本は世界でも交通安全への信頼が高い国だが、その信頼を維持するには、技術への過信ではなく、ドライバー自身が常に安全意識を持ち続けることが欠かせない。ブレンボが掲げる「Zero Accident Future(交通事故ゼロの未来)」は、高性能なブレーキだけで実現できるものではない。クルマをつくるメーカー、制度を整える行政、そしてハンドルを握る私たち一人ひとりが責任を共有して初めて実現できる未来と言えるだろう。

Text:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)
Photo:Brembo