「木」で動くV8エンジン?シボレー フリートサイドに搭載された驚きの駆動システム このピックアップトラックはガソリンではなく「木」で走る
2026年7月18日
代替燃料の可能性は、まだまだ尽きていない。このシボレーのピックアップトラックは、ガソリンではなく「木材」を燃料として走行する。V8エンジンはすでに10万km以上を木質ガスだけで走破し、最高速度は125km/hに達するという。
燃料価格の高騰が続くなか、多くのドライバーが従来の内燃機関に代わる選択肢を模索している。とはいえ、ここではEVの話はいったん脇に置いておこう。もっと独創的な方法が存在するからだ。そのひとつが「木質ガス(ウッドガス)」である。一見すると冗談のようなアイデアだが、発明家「JP Prat Projects」が製作したこのシボレーのピックアップは、それが現実に機能することを証明している。
燃料は「木」
実験車両のベースとなったのは1983年式のシボレー フリートサイド(Chevrolet Fleetside)。ボンネットの下には1972年製の5.7リッターV8エンジンが搭載されている。オーナーによれば、このエンジンは10万km以上にわたりガソリンを一滴も使用していないという。その代わりに使用するのが木質ガスだ。
運転席後方の荷台前方には大型のガス化装置が設置されている。ここで木片や木くずを高温で加熱すると、一酸化炭素と水素を主成分とする可燃性ガスが発生する。このガスは冷却・ろ過された後、エンジンへ送られる仕組みだ。煤(すす)や灰は専用フィルターで除去され、最終的にV8エンジン内で燃焼する。
もちろん、このシステムはスイッチひとつで使えるほど簡単ではない。始動前には木くずへ着火する必要があり、製作者は新聞紙と送風ファンを使って火を起こしている。十分な木質ガスが発生し、エンジンを始動できるようになるまで約5〜10分を要するため、多少の待ち時間は避けられない。
大量の薪が必要
必要なのは忍耐だけではない。木材がEVやガソリン車に代わる理想的な燃料だと考える前に、その燃費ならぬ「燃木費」に目を向ける必要がある。
オーナーによれば、このシボレーは100km走行するために約35〜40kgもの木材を消費するという。長距離ドライブでは相当量の薪を積載しなければならない。しかし、その点では巨大な荷台を持つピックアップトラックが有利だ。
一方で、このユニークな燃料にも明確なメリットがある。安価な薪を調達できる環境であれば、ガソリンスタンドに依存することなく走行できる。また、木質ガスは比較的環境負荷が低い燃料とも考えられている。燃焼時に排出されるCO₂は、木が成長過程で吸収した量が中心となるためだ。

最高速度125km/hを記録
このピックアップの魅力は、奇抜な駆動システムだけではない。走行性能も意外なほど優秀だ。
最新のYouTube動画によると、元飛行場で開催された「スタンディングマイルイベント」に参加したこの木質ガス仕様のシボレーは、最高速度125km/hを記録した。少なくとも「木で走るから遅い」というイメージは当てはまらない。
このV8ピックアップは、内燃機関がガソリン以外にも極めてユニークな燃料で動作することを示す技術的な実験車両として非常に興味深い存在である。しかし、一般ユーザーが日常的に使用する手段として考えれば、現実的とは言い難い。発想は実に面白いものの、実用性という点ではまだ多くの課題を抱えている。
※ YouTube動画:https://www.youtube.com/watch?v=dQTuqmOi32s
【編集部コメント】
第二次世界大戦中のヨーロッパでは、燃料不足を補うため木質ガス発生装置を搭載した車両が実際に数多く使われていた。今回紹介したシボレーは、その古い技術を現代のV8エンジンで再現した興味深い一台である。EVか内燃機関かという二元論ではなく、「燃料そのもの」を変えるというアプローチは、自動車技術の奥深さを改めて感じさせる。(Auto Bild Japan)
Text: Nele Klein
Photo: JP Prat Projects / YouTube

