【AIキャンパス】未来の自動車のための人工知能 VWがAI専門知識強化のためベルリンにAIキャンパスを開設 全ブランドの新型車の未来を導く
2026年7月11日
フォルクスワーゲングループのソフトウェア開発会社「Cariad(カリアド)」は、グループ全ブランドの次世代モデルをソフトウェア面から支える中核企業だ。今回、ベルリンに新たなAIキャンパスを開設したことで、フォルクスワーゲンは人工知能分野への本格投資を明確に打ち出した。
フォルクスワーゲンは人工知能(AI)への取り組みをさらに加速させる。
2026年6月24日(木)、同社はベルリンで「Automotive Software Campus(オートモーティブ ソフトウェア キャンパス)」を華々しくオープンした。ベルリン中央駅北側に位置する11階建ての新施設には、約1,000人の専門家が集結し、「未来のクルマ」のためのAI技術開発に取り組む。
オープニングセレモニーで、Cariadのスタッフを前にグループCEOのオリバー ブルーメ(Oliver Blume)は、新拠点の役割について次のように語った。
「フォルクスワーゲングループにとって明確なのは、AIによって定義されるクルマこそが、次世代モビリティを象徴する存在だということだ。」
グループ共通ソフトウェアを開発
その実現を担うのが、ソフトウェア子会社のCariad(カリアド)だ。
同社が目指すのは、フォルクスワーゲングループ全体で共通のソフトウェア基盤を開発し、最終段階で各ブランド向けに最適化するという開発体制である。これにより、ブランド横断でソフトウェア開発を効率化し、シナジー効果を生み出すことで、開発スピードの向上とコスト削減を実現しようとしている。
「ドイツに必要なのは、まさにこれだ」
開所式には政財界の主要人物も多数出席した。ドイツ連邦議会(CDU)議長のユリア クレックナー氏(Julia Klöckner)、ドイツ自動車工業会(VDA)会長ヒルデガルト ミュラー氏(Hildegard Müller)、そしてドイツIT業界団体Bitkom会長ラルフ ヴィンターゲルスト氏(Ralf Wintergerst)らが顔を揃えた。

クレックナー議長は、フォルクスワーゲン経営陣による将来への投資とベルリンでのAI開発を高く評価し、「ドイツに必要なのは、まさにこうした取り組みだ」と語った。
また、VDAのミュラー会長は「AIは今後、イノベーションを生み出す決定的な原動力になる」と強調。Bitkomのヴィンター ゲルスト会長も、このキャンパスを「VWだけでなく、ドイツ全体にとっても極めて重要な資産だ」と評価した。
「From Code to Car」
ベルリンの新キャンパスでは、「Caridians(カリディアンズ)」と呼ばれるCariadのソフトウェアエンジニアたちが、将来の車両をより安全で、より快適、そしてより魅力的なものにする技術を開発している。
オリバー ブルーメCEOは、この施設をフォルクスワーゲン変革戦略の重要な柱と位置付け、「世界をリードするテクノロジーカンパニー」への進化に欠かせない存在だと説明する。

CariadはAI開発の中核機能をベルリンに集約する一方で、各ブランドの開発拠点とも密接に連携しながら開発を進める体制を維持する。
Cariad CEOのピーター ボッシュ氏(Peter Bosch)は、次のように説明する。
「未来のクルマは、話し、聞き、自ら運転するようになります。Automotive Software Campusでは、そのために必要な『感覚』と『頭脳』を生み出しています。周囲の環境認識から、車内の乗員との知的なコミュニケーションまで、そのすべてを担います。」
その開発思想を象徴するキーワードが、
「From Code to Car(コードからクルマへ)」
である。ソフトウェアコードを、そのまま実際の道路を走るクルマへとつなげるという考え方だ。

すでに量産化が始まるAI技術
AI開発はすでに実用段階へ入り始めている。Cariadは現在、量産化目前の2つの重要なAIプロジェクトを進めている。
ひとつはAIを活用した自動運転システムで、2027年に発売予定のフォルクスワーゲンのエントリーEV「ID. Every1」へ搭載される予定だ。
もうひとつは、ドライバーの意図や要望を理解し、走行中のルート検索や旅行計画といった複雑な作業までサポートするデジタル音声アシスタントである。
この技術はすでに現行モデルのポルシェ「マカン エレクトリック」と「カイエン エレクトリック」に、「Voice Pilot(ボイス・パイロット)」として採用されており、今後はフォルクスワーゲングループ各ブランドへ順次展開される予定だ。
例えば、カイエンに「ベルリン・テレビ塔へ行く価値はある?」と質問すると、システムは最新の天気情報を取得し、目的地までのルートを案内するだけでなく、入場チケットの料金まで案内してくれるという。
結論:
Cariadには現在、確かな前向きな空気が流れている。それは歓迎すべきことだ。ソフトウェア開発競争が激化するなか、フォルクスワーゲンには国際競争で後れを取る余裕はない。今回開設されたベルリンのAIキャンパスは、その巻き返しに向けた重要な第一歩と言えるだろう。
Text: Raphael Schuderer
Photo: Cariad
【編集後記】
自動車業界では「Software Defined Vehicle(SDV)」という言葉が定着したが、今後はさらにその先にある「AI Defined Vehicle」が競争の焦点になっていく。フォルクスワーゲンがCariadを通じて進めるAI開発は、自動運転だけではなく、車内での対話や情報提供、ドライバーとのコミュニケーションまで含めた「知能」をクルマに与えることを目指している。EV開発で出遅れが指摘された同社だが、ソフトウェアとAIの分野では巻き返しへの本気度がうかがえる。ベルリンの新キャンパスは、その決意を象徴する拠点となりそうだ。

