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AMG史に燦然と名を残す伝説の1台「メルセデス 300 CE 6.0 AMG」“ハンマー”がオークションへ 伝説の“ガルディ クーペ”は1億円超えなるか?

2026年6月29日

米国で開催されるRMサザビーズのオークションに、極めて希少な「メルセデス 300 CE 6.0 AMG“ハンマー”」が出品される。わずか12~13台しか製作されなかったとされる「ハンマー クーペ」の1台であり、その希少性と来歴から、100万ドル(約1億6,000万円)超えの落札も期待されている。

フェラーリ テスタロッサより高価だったAMG

現在では初期AMGの人気は衰える気配を見せない。特にアメリカでは1980~90年代のAMGモデルに驚くような価格が付けられており、希少性や由緒ある個体であれば、その価値はさらに跳ね上がる。今回出品される「メルセデス300 CE 6.0 AMG」は、その両方を兼ね備えた存在だ。

AMG北米進出の象徴となった「ウェストモントカー」

このブラックのC124が特別視される理由は、まず“ハンマー(Hummer)”が世界でも12~13台しか存在しない極めて希少なモデルであることだ。さらにシャシーナンバー「624567」には、AMGノースアメリカ展開の歴史が刻まれている。

1981年、AMG創業者ハンス ヴェルナー アウフレヒト(Hans Werner Aufrecht)は、米イリノイ州のリチャード バックスバウム(Richard Buxbaum)と提携し、「AMGノースアメリカ」の礎を築いた。ウェストモントに拠点を構えたバックスバウムは、高品質なAMGコンプリートカーの製作で名声を確立。彼が手掛けた車両は”ウェストモントカー(Westmont cars)”と呼ばれ、現在でもコレクター垂涎の存在となっている。

1987~1991年にわずか4台だけ製作されたウェストモント(Westmont)製“ハンマー(Hummer)”。その中でも“ガルディクーペ(Galdi Coupé)”は金属製で一体成形されたダックテールスポイラーを備える唯一の個体とされる。

1986年にW124ベースの「300 E 5.6 AMG」が登場すると、その人気はアメリカで爆発的に高まった。フェラーリ テスタロッサやランボルギーニ カウンタック、ポルシェ930ターボに匹敵する性能を持ちながら、4人乗りで日常使いもできるセダンという存在は、それまで前例がなかったのである。そのことから、ファンはこのモデルを親しみを込めて「ハンマー」と呼ぶようになった。

385馬力を発生する6.0リッターV8

セダンの成功を受け、AMGは翌年にワゴン(S124)とクーペ(C124)にも同様のコンバージョンを展開。さらに5.6リッターV8を6.0リッターまで拡大し、32バルブ仕様のM117エンジンを完成させた。最高出力は385馬力、最大トルク565Nm。当時のイタリア製スーパースポーツと肩を並べるスペックだった。今回の個体は1988年に製作された4台のウェストモント製ハンマー クーペのうちの1台である。外観はワイドボディ化されず控えめな印象。しかし17インチAMG Aero Iホイールや専用エアロが本物のハンマーであることを物語る。

最初のオーナーはアリゾナ州ツーソンの実業家兼ジェントルマンレーサー、ジョセフ C ガルディ2世(Joseph C. Galdi II)。米国誌『Car and Driver』の記事を読んで購入を決意し、当初は5.6リッターモデルを希望していたものの、最終的に最高速度289km/hを誇る6.0リッターモデルを選択したという。

AMGはM117型V8を5,967ccまで拡大。385馬力を発生し、最高速度289km/hを誇った当時世界最速級のロードカーだった。

見た目は控えめ、価格はフェラーリの約2倍

この「ガルディクーペ」はフルAMG仕様ながら、ワイドボディキットは装着されていない。ダックテールスポイラーや17インチAMG Aero Iホイールは備えるものの、見た目はあくまで上品なメルセデスそのもの。テスタロッサやカウンタックのような派手さはなく、知らない人には普通の高級クーペにしか見えないだろう。

しかし価格は驚異的だった。ベースとなる300 CEの価格は4万7,250ドル(約760万円)だったが、完成したAMGコンプリートカーは19万2,000ドル(約3,090万円)。当時のフェラーリ テスタロッサの約2倍という破格の価格で販売されていた。現在の貨幣価値では約53万6,000ドル(約4,700万円)に相当するとRMサザビーズは説明している。

走行距離はわずか約5万8,000km

走行距離約5万8,000km(3万6,000マイル未満)、さらに完全な履歴が残されていることから、予想落札価格は65万~78万5,000ユーロ(約1億2,000万円~1億4,500万円)とされている。

非常に高額ではあるものの、2022年8月には別の300 CE 6.0 ハンマー クーペが74万9,649ユーロ(約8,873万円)で落札されている。その個体は今回出品される車両よりも状態が劣っていた。

このAMG史に残る1台は、最終的に100万ドル(約1億6,000万円)の大台を突破するかもしれない。

走行距離は38年間でわずか3万6,000マイル(約5万8,000km)。このAMGはほとんど走らせることなく大切に保管されてきた。

その後、ガルディは7年間所有したのち、1995年10月にハンマーを手放し、メルセデスコレクターのアーロン ラスキン(Aaron Ruskin)へ売却した。ラスキンはすでにハンマー ワゴンとハンマー セダンも所有していた。

ラスキンは2010年1月までこの高性能メルセデスを所有。その後いくつかのオーナーを経て、「ガルディクーペ」はAMGスペシャリストのジョナサン ホッジマン(Jonathan Hodgman)のもとへ渡った。

ホッジマンは、この希少なAMGを最高の状態へ戻すために費用を惜しまなかった。2016年以降だけでも、整備とレストアに約14万ユーロ(約2,590万円)を投じたとされている。

最後のオーナーはハンマーを完璧な状態へ仕上げるため費用を惜しまなかった。そのためインテリアは新車のような美しさを保っている。

ちょっとしたエピソードもある。2025年6月に開催されたAMGミーティングで、リチャード バックスバウムは数十年ぶりに「ガルディクーペ」と再会した。自らが手掛けたクーペについて、バックスバウムは次のように語っている。「今でも信じられないクルマだ。サウンドは素晴らしく、いつだってもっと速く走りたがっている(…)。」

「ガルディクーペ」はいくらになるのか?

走行距離は約5万8,000km(3万6,000マイル未満)で、履歴も完全に記録されていることから、予想落札価格は65万~78万5,000ユーロ(約1億2,000万円~1億4,500万円)と見積もられている。もちろん非常に高額だ。しかし2022年8月には、状態が今回の個体よりも劣る300 CE 6.0 ハンマー クーペが74万9,649ユーロ(約8,873万円)で落札されている。

そう考えると、このAMG史を象徴する1台が最終的に100万ドル(約1億6,000万円)の壁を突破したとしても、不思議ではない。

結論:
アメリカでは現在もプレマージャーAMGの人気が衰える気配はない。この「ガルディクーペ」は、その希少性と由緒ある来歴を考えれば、過去最高額で落札される可能性は十分にあるだろう。結果が今から楽しみだ。

Text:Jan Götze
Photo:Keenan Eugenio ©2026 Courtesy of RM Sotheby’s

【AUTO BILD JAPAN編集部】
この「ハンマー」は単なる希少車ではない。AMGがまだメルセデス・ベンツ傘下に入る以前、職人たちが顧客のためだけに製作していた”プレマージャーAMG”を象徴する1台であり、AMG北米進出の歴史そのものを物語る存在だ。しかも4台しか存在しないウェストモント製ハンマー クーペの中でも、「ガルディクーペ」は唯一、金属で一体成形されたダックテールスポイラーを備える特別な個体とされる。市場価値だけでなく歴史的価値まで考えれば、100万ドル(約1億6,000万円)突破というシナリオも十分に現実味がある。今後のオークション結果に注目したい。