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新型メルセデス・ベンツ Sクラス日本上陸 140年にわたる技術革新が生んだ「AIと共に進化するフラッグシップ」

2026年6月16日

メルセデス・ベンツ日本はメルセデス・ベンツのフラッグシップモデル新型Sクラス(W223)の販売を開始すると発表した。ABSやESPがそうだったように、自動車の未来はいつもSクラスから始まる。140周年を迎えたメルセデス・ベンツが送り出す新型Sクラスは、AIとクラウドを取り込んだ“学習するフラッグシップ”として、新たな時代の基準を示そうとしている。

140年の技術革新が生んだ「AIと共に進化するフラッグシップ」

自動車業界では近年、「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」という言葉が頻繁に語られるようになった。クルマの価値をハードウェアではなくソフトウェアが決める時代である。だが、その理想像を最も明確な形で提示したのは、EV専用車でも中国メーカーでもなく、メルセデス・ベンツのフラッグシップである新型Sクラスだった。

1886年に世界初の自動車を誕生させてから140年。メルセデス・ベンツはその節目の年に、過去最大規模の改良を受けた新型Sクラスを日本市場へ投入した。

プレスカンファレンスではメルセデス・ベンツ日本のゲルティンガー 剛CEOとドイツからフランク ヴィンドラックSクラス開発責任者が説明を行った。

今回の改良はフェイスリフトという言葉では説明できない。車両全体の50%以上、約2,700点もの部品が新規開発または再設計されている。もはやフルモデルチェンジ級のアップデートといっても過言ではない。フロントグリルは従来比約20%拡大され、4本ルーバーとスターパターンを組み合わせたデザインへ進化。さらにSクラス史上初となるイルミネーテッドグリルが採用された。

テールランプのスター3つがSクラスの証。

しかし、本質的な進化は外観ではない。このクルマは「学習し続けるSクラス」へと生まれ変わったのである。

AIがクルマの頭脳になる時代

新型Sクラス最大のトピックは、第4世代MBUXと新開発のMB.OS(Mercedes-Benz Operating System)だ。

従来のインフォテインメントシステムの枠を超え、ナビゲーション、運転支援、車両制御、クラウドサービスまでをひとつの統合システムとして管理する。

大きくアップデートされたインテリアデザイン。
「Manufaktur Made to Measure」という特別なパーソナライゼーションプログラムが採用される。
14.4インチのセンターディスプレイと12.3インチの助手席側ディスプレイで構成されるスーパースクリーンは、すべてのSクラスに標準装備されている。

第4世代MBUXにはGoogle Mapsベースのナビゲーションに加え、ChatGPT、Microsoft Bing、Google Geminiを統合した生成AIアシスタントが搭載された。単なる音声認識ではない。会話の流れを記憶し、文脈を理解しながら対話を続ける。

発表会でSクラス開発責任者のフランク ヴンドラック(Frank Wundrak)氏は、AI導入について次のような趣旨を語っていた。

「これまでクルマはドライバーが使い方を覚えるものでした。しかし今後はクルマがユーザーを理解し、学習し、最適な体験を提供する存在になります。Sクラスはその変化を最初に体現するモデルです」

各メディアからの質問に丁寧に答えてくれたSクラス開発責任者のフランク ヴンドラック氏。

まさに新型Sクラスは“移動するコンピューター”ではなく、“成長するパートナー”を目指しているのである。

日本仕様の主力となるS 450 d 4MATIC

日本でまず導入される主力モデルはS 450 d 4MATICだ。搭載されるのは新世代の3.0リッター直列6気筒ディーゼル「OM656 Evo」。量産車として世界初となる電気加熱式触媒コンバーターを採用し、排出ガス浄化性能を大幅に向上させている。さらに17kWのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)が低回転域をアシストし、発進時から滑らかで力強い加速を実現する。

新型3.0リッター直列6気筒ディーゼル「OM656 Evo」。

欧州で高く評価されるロングディスタンス性能と燃費性能を両立したパワートレインは、日本の高速道路事情との相性も極めて良い。価格は1,598万円。

後席重視のユーザー向けにリアコンフォートパッケージも新設定されており、ショーファーカーとしての魅力も一段と高まった。

S 580 4MATIC longが示す究極のSクラス

もうひとつの主役がS 580 4MATIC longである。搭載されるのは改良型4.0リッターV8ツインターボ「M177 Evo」。元々AMG製で、フラットプレーンクランクシャフトを採用している。クランクピンは、標準的なクロスプレーンV8エンジン(2つの平面で90度オフセット)とは異なり、1つの平面で180度オフセットされている。最高出力は537馬力(395kW)、最大トルク750Nmを発揮しながら、マイルドハイブリッド技術によって驚くほど滑らかな走行フィールを実現している。

メルセデス・ベンツ S 580 4MATIC long
Photo:メルセデス・ベンツ日本

このモデルにはヒーテッドシートベルトやブランドロゴプロジェクターライトなど上級装備が標準設定されるほか、E-ACTIVE BODY CONTROLや後席用エアバッグなど、Sクラスの最先端技術が集中的に投入される。価格は2,365万円。

高額であることは間違いない。

しかし歴代Sクラスが常にそうであったように、このクルマの価値は価格ではなく「未来の技術をいち早く体験できること」にある。

Sクラスは依然として業界の指標である

興味深いのは、今回のSクラスが単に豪華になったわけではないことだ。AIによる音声アシスタント。OTAアップデート。クラウドと連携するサスペンション。学習型運転支援システム。これらは数年後、多くの量販車へ降りていく技術だろう。かつてABS、エアバッグ、ESPがそうだったように、Sクラスは常に自動車業界の未来を先取りしてきた。140周年を迎えたメルセデス・ベンツは、再びその役割を担おうとしている。

日本でまず導入されるのはS 450 d 4MATICだ。
Photo:メルセデス・ベンツ日本

新型Sクラスは単なる高級セダンではない。「AI時代のクルマはどうあるべきか」その答えを世界で最も早く提示した一台なのである。

Text&Photo:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)