これほどシャープなM2はかつてなかった!ドライバーとのよりダイレクトな繋がりを実現する「BMW M2 CS」の魅力とは?
2026年6月5日
「より良いもの」が常に「良いもの」の敵とは限らない。時には、その逆もある。そんなことを少し考えながら、まずはBMWの「CS」について見てみよう。近年の「CS」は、驚異的な実力を持つ「Competition」仕様を前に、その付加価値を示すことに苦戦してきた。
最近の例を挙げるなら「M3 CSツーリング」だろう。技術的にはすべて正しいことをしているが、本当に差をつけるためには極端なタイヤという切り札が必要だった。ノルドシュライフェでは通常の「Competition」より5.5秒速い。しかしその5.5秒は、4万5700ユーロ(約845万円)の追加費用を払う代わりに、2500ユーロ(約46万円)ほどをタイヤショップに支払えば買えるかもしれない。

だが、先に言ってしまうと、今回は話が違う。
そのことは、「M2 CS」が「M2」に対してノルドシュライフェのラップタイムを13秒も短縮したという事実だけでなく、その大幅な進化を支える改良内容からも明らかだ。
50psと50Nmの出力向上。ルーフに加え、ボンネットとトランクリッドにも採用されたカーボンファイバーによる軽量化。通常なら1万4000ユーロ(約259万円)のレーストラックパッケージを標準装備し、さらに本来オプション設定のミシュランCup 2タイヤも標準となる。
そしてもちろん、表からは見えない部分にも手が入っている。特にこのコンパクトスポーツクーペの中核部分だ。エンジンマウントはより剛性の高いものに変更され、車高は8mmダウン。ダンパー、ステアリング、LSDも高性能走行向けに専用チューニングが施されている。
その結果、「M2 CS」は単に速くなっただけではない。明確に「別物」になった。
より硬いマウントに固定された直列6気筒エンジンは、体感的にコクピットへ近づいたように感じられ、アイドリング時にはボディ全体を微細ながらはっきりと振動させる。サスペンションは路面情報をさらに正確に伝え、全体としてダイレクト感が増しているにもかかわらず、快適性が犠牲になった印象はない。
ステアリングは明らかにクイックになったが、それでも比較的軽い操舵力を維持しており、フロントアクスルは実際以上に軽快に感じられる。

これは特に重要なポイントだ。率直に言えば、BMWはかなり重量級の「M2」を作ってしまった。フェイスリフト後にテストした車両は1711kgを記録しており、四輪駆動のアウディRS3より150kgも重かった。
だからこそ、「CS」のカーボンダイエットは実にタイミングが良い。実測で40kgの軽量化を達成しながら、前後重量配分はほぼそのまま維持されている。
| BMW M2 CS | |
| エンジン | 直列6気筒ツインターボ |
| 排気量 | 2,993cc |
| 最高出力 | 390kW (530hp)/6250rpm |
| 最大トルク | 650Nm/2750-5730rpm |
| リッター馬力 | 177馬力/L |
| トランスミッション | 8速オートマチック |
| 駆動方式 | 後輪駆動 |
| 全長/全幅/全高 | 4587/1887/1395 mm |
| ホイールベース | 2,747mm |
| 燃料タンク/トランク容量 | 52/390L |
| 燃費 | 10km/L |
| テスト車両価格 | 123,800ユーロ(約2,290万円) |
中回転域からさらに強烈な加速
全体として、強化された直列6気筒エンジンは周辺環境との付き合いが少し楽になったようだ。もっとも、加速データを見る限り、増加したパワーが本領を発揮するのは中回転域からであることが分かる。そして、その暴れ方は予想以上だ。
100km/hまではベースの「M2」とほぼ互角。両車とも最適なトラクション領域を巧みに使い切っているからだ。しかし一度パワーが全面的に解放されると、ツインターボ直6はまるで溢れ出すように回転を上げていく。
200km/h到達は10.7秒。250km/hまでは18.3秒。この数字は事実上「M3 CS」と肩を並べるレベルだ。
さらに印象的なのは8速ATの働きである。ツインターボの猛攻に見事についていき、パドルシフト操作にもほぼ遅れなく反応する。

減速性能でも、その動きはまるで時計仕掛けのようだ。100km/hからの制動距離30.9mは、気温の低い条件を考えればすでに見事な数字である。しかし本当に驚くのは200km/hからだ。ここで「CS」は、これまでどの「M2」も実現できなかったレベルで車両を停止させる。
しかも当初の計画とは異なり、今回のテスト車は極端な性能を持つピレリ トロフェオ RS(2500ユーロ(約46万円)のオプション)ではなく、比較的穏やかなセミスリックであるCup 2を装着していた。
つまり、まだグリップ面には大きな伸びしろが残されているということだ。
タイヤ頼みではない、本物の運動性能
標準のCupタイヤによる比較は、「M2 CS」の運動性能向上がタイヤによる“ごまかし”ではなく、クルマ全体の総合的な進化であることも示している。率直に言って、これほどレスポンスの良い量産「M2」を私たちは経験したことがない。
ドライバーのあらゆる入力に対して、極めて繊細かつ正確、そして俊敏に反応する。選んだラインを一切ためらうことなくトレースし、横Gを受けても揺るぎない安定性を維持。常にボディへ適度な緊張感を持たせながら、その高精度さにもかかわらず扱いやすい敏捷性を実現している。

その秘密はどこにあるのか。答えは、一貫して遊び心を残したハンドリング特性にある。ブレーキング時も加速時も、このクルマは驚くほど安定しており、ほとんどアンダーステアと言っていいほどだ。しかし、その基本特性のおかげで、公道へ出た瞬間から誰でも性能を引き出しやすい。
特に10段階調整式トラクションコントロールによって、ハンドリングとグリップの関係をほぼ理想的なレベルまで細かく調整できることが大きい。
その結果、通常の「M2」に対して1.5秒のアドバンテージを獲得する。その差はおおよそ3分の1ずつ、パワー、タイヤ、そしてハンドリングによって生み出されている。
力の配分としてほぼ完璧なバランス。それはこのクルマの優れたエンジニアリングを象徴しているかのようだ。
結論:
ラジカルトラックタイヤを装着しなくても、「M2 CS」は最終的に「M2」をかなり大きく引き離した。それは数字にも表れているし、何よりドライビングフィールが証明している。精度と輪郭は大きく向上した。しかし神経質になったり、無理に尖らせたりした印象はない。これまでで最もシャープで、最も完成度の高い「M2」。それが「M2 CS」である。
Text: Manuel Iglisch
Photo: Lena Willgalis

