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ランボルギーニのクラシックカー部門がドイツ仕様のランボルギーニ ミウラSVのレストアを完了 このランボに見る5つのディティールとは?

2026年6月1日

Lamborghini Polo Storico(ランボルギーニ ポロ ストリコ)が3年の歳月をかけてドイツ仕様のランボルギーニ ミウラSVをレストアした。我々AUTO BILDはその完成発表会にゲスト参加した。

このLamborghini Miura SV(ランボルギーニ ミウラ SV)は、1972年に新車としてドイツへ納車された個体だ。―そのことは5つのディテールから読み取ることができる。

ランボルギーニのクラシックカー部門は、このミウラSVをファクトリーでレストアし、完成車を華やかなセレモニーで公開した。AUTO BILD(アウトビルト)もその場に立ち会っている。

舞台はローマで開催されたエリートクラシックカーイベント「Anantara Concorso Roma」。そこには、自動車史家Adolfo Orsi(アドルフォ オルシ)、元ピニンファリーナデザイナーのLorenzo Ramaciotti(ロレンツォ ラマチオッティ)、元F1チーム代表、元フェラーリ代表、元FIA会長のJean Todt(ジャン トッド)、そしてクラシックカーディーラー兼プレゼンターのSimon Kidston(サイモン キッドストン)といった著名人が出席していた。

ランボルギーニがローマでドイツ仕様ミウラを公開

ランボルギーニは2026年4月、ローマで開催されたAnantara Concorso Romaのビューティコンテストで、このドイツ向けミウラを公開した。
マルチェロ ガンディーニは27歳のとき、Bertone(ベルトーネ)に在籍しながらミウラのスタイリングを生み出した。ヘッドライトは点灯時、後方がわずかに持ち上がる構造になっている。

ミウラSVは完全レストアされた

ランボルギーニ ポロ ストリコ(※VWポロとは無関係。Polo Storicoはヒストリカルセンターの意味)は、このミウラを3年かけて作業した。

徹底的な調査を行い、1972年式ランボルギーニ ミウラSVを新車納車時の状態へと復元している。

ミウラのリアエンド、筋肉質なフェンダー、ベルトーネロゴ、ルーフアンテナ……じっくり見ること自体が喜びになるデザインだ。

ドイツ仕様ミウラを特徴づける5つのディテール

我々AUTO BILD(ドイツからのゲストとして)は特に5つのディテールに注目した。

このミウラSVは新車時にデュッセルドルフへ輸出されたとされている。そしてドイツ登録のために、複数箇所が改修されている。つまり、ドイツ当局がイタリアンデザインに影響を与えたということになる。

ディテール1:フロントのベンチレーショングリル

オリジナルのミウラは、ヘッドライト間のボンネットに2つのエアベントを持ち、それぞれ54本の細い金属スラットを備えていた。まるで卵スライサーのような構造だ。そのため、ドイツ仕様ではより安全性の高い設計が求められた。

ミウラは1966年にまつげ付きヘッドライトと薄い金属スラットのグリルで登場した。ドイツ市場向け仕様は…..
Photo:Roman Rätzke / AUTO BILD
ドイツ市場向けは、36本のフレーム付きルーバーに変更された。まつげ状のデザインはSVフェイスリフトで廃止されている。

ドイツ当局は、ランボルギーニに対しより危険性の低い構造を要求した。その結果、復元された1972年式ミウラSVには、上部が丸められた36本の太いルーバーが装着されている。もちろん、ミウラの鋭く尖ったフロントエンドは依然として“脚を切り裂く危険物の代表格”のままだった。しかし、このことから分かるのは、当時すでにドイツでは歩行者保護に目が向けられていたということである。これはおそらく、消費者保護活動家で弁護士のRalph Nader(ラルフ ネーダー)が明るみに出したChevrolet Corvair scandal(シボレー コルヴェア スキャンダル)の影響だったのだろう。

ディテール2:ホイールのセンターロック機構

フロントの通気グリルだけでなく、当時一般的だったホイールのセンターロック機構もまた“調理器具的”な印象を与える。3枚羽構造は大型ミキサーのようにも見える。

1927年には、ダンサー兼振付師Isadora Duncan(イサドラ ダンカン)が、長いスカーフが後輪スポークに巻き込まれて死亡する事故も発生している。

左:イタリア仕様のセンターロック/右:ドイツ仕様の八角形ハブキャップ。
Photo:Roman Rätzke / AUTO BILD; Thomas Starck / AUTO BILD

より安全な解決策として、突出部のない八角形キャップが採用された。これは簡単に脱着可能な実用的な設計である。

ディテール3:サイドのベンチレーショングリル

ミウラは世界初の横置きミッドシップV12市販車として知られるだけでなく、マルチェロ ガンディーニによる革新的デザインでも有名だ。

サイドウィンドウ後方の立ち上がりと垂直ルーバーは象徴的な要素である。ただし、これらの薄いルーバーは鋭く、先端形状はドイツのTÜV(技術検査)担当者を悩ませるレベルだった。結果的にドイツ仕様では、厚みを増し角を丸めたパーツに変更されることとなる。

サイドルーバーの形状と先端部はドイツ仕様で丸められた。
Photo:Roman Rätzke / AUTO BILD; Lamborghini

ディテール4:ハザードランプスイッチ

皮肉屋たちは、ランボルギーニ ミウラにハザードランプのスイッチなど必要ないと言う。ミウラが路上で止まれば、周囲は嫌でも気づくからだ―たいていの場合、エンジンルームから炎が上がっているのだから。

だが、そんな説明ではドイツの技術検査官たちは納得しなかった。そこでランボルギーニは、コックピット左側、トリップメーターのクローム製リセットボタンのすぐ横に、いかにも実用本位な黒いハザードスイッチを取り付けた。

コックピットはほぼそのままだが、左端にハザードスイッチが追加されている。
Photo:Thomas Starck / AUTO BILD

ディテール5:リアの“キャットステップ”

ミウラのリアルーバー(通称キャットステップ)もまた鋭利な問題を抱えていた。急制動時にはスクーターライダーを“カツレツ化”しかねない危険性があった。

左:鋭利なオリジナル/右:丸められたドイツ仕様。
Photo:Roman Rätzke / AUTO BILD; Thomas Starck / AUTO BILD

ドイツ仕様では、角のない厚い金属スラットが採用されている。枚数は6枚のままだ。

ドイツ人の顧客が注文した仕様

ランボルギーニはこのミウラSVを、当時の納車状態を忠実に再現してレストアした。

ボディの前後が大きく開閉する構造も健在だ。

外装はメタリックブラウンとブロンズ、内装はベージュ。当時の典型的な70年代カラーである。カラー名も詩的で、外装は「イタリア語で”Luci del Bosco,”英語だと “the lights of the forest.”(森に差し込む光)」、内装レザーは「”Senape.”(マスタード)」と呼ばれる。つまり、車内では“カラシナに座り、森の中に立つ”感覚になる。

オーナーは小径ステアリングとエアコンも注文している。

エアコンの装備は3つのダクトで識別可能
Photo:Thomas Starck / AUTO BILD

アンダーフロアには特別なエキゾースト“Bob”が装着されている。テストドライバー兼エンジニアのBob Wallace(ボブ ウォレス)に由来し、1970年のMiura Jota(ミウラ イオタ)開発に関わった人物だ。

“Bob”と呼ばれるテールパイプ構造
Photo:Thomas Starck / AUTO BILD

これは最も効果的な歩行者保護装置だった可能性もある。轟音により人々が逃げるからだ。

ミウラは、フロントシート後方に横置きV12エンジンを搭載した世界初の量産車として登場した。最終進化型のミウラSVでは、4.0リッターV12から385馬力を発揮した。

Frank B. Meyer(フランク B マイヤー)のコメント
ランボルギーニのクラシックカー部門は、このミウラSVを1972年に工場の生産ラインから送り出された当時とまったく同じ姿へと復元した。彼らはほとんどの場合、そうしている。それは十分にもっともらしい考え方に聞こえる。しかし、オリジナルの仕様が常に最も望ましい状態なのだろうか。

多くの場合、クルマの歴史を最も雄弁に物語るのは、新車として納車されたときの状態ではない。例えば、1952年のメルセデス300 SLがメキシコの「カレラ パナメリカーナ」に参戦した際、ハゲワシがフロントウインドウに衝突したため、メルセデスのレーシングチームがフロントガラス前方に取り付けた金属製の補強バー。あるいは、ファンがオリジナルの白い塗装に口紅のキスマークを残し続けたため、エルヴィス プレスリーが自らのBMW 507を赤く塗り替えさせたこと。あるいは、1962年のプティ=クラマール暗殺未遂事件を生き延びたシャルル ド・ゴールのシトロエンDSに残る銃弾の痕跡などの歴史の足跡である。

私はレストアラーたちの仕事を高く評価し、敬意も抱いている。しかし、多くのオーナーや職人たちは行き過ぎてしまう。過度なレストアによって、歴史を物語る痕跡を取り返しのつかない形で消し去ってしまうのだ。

Text:Frank B. Meyer
Photo:Lamborghini