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新生アルピナ誕生 ヴィラ・デステで「Vision BMW Alpina」を公開 BMW傘下でアルピナはここまでラグジュアリーになる

2026年5月20日

「Vision BMW Alpina」は、単なる美しいコンセプトカーではない。その背景には、多くの人がよく知るブランドの新たな幕開けがある。

ミュンヘンがブッフローエに代わり、地方都市からメトロポリスへ――しかし、話はそれほど単純ではない。アルピナはBMWグループの傘下で新たなスタートを切る。これまで以上にスポーティで、ラグジュアリーで、そしてエクスクルーシブな存在としてだ。チェルノッビオの名門ヴィラ・デステの庭園で、BMWはその最新サブブランドを公開した。BMW M GmbHよりも洗練され、BMW Individualよりもさらに特別な存在として位置づけられている。

アルピナはロールス・ロイスとのギャップを埋めることを目指している。ブランド再編は容易ではない。とはいえ、最初のコンセプトカーは近年でもっともスペクタクルな作品のひとつと言える。ショーカーの名は「Vision BMW Alpina」。全長5.20mのラグジュアリークーペだ。

「Vision BMW Alpinaによって、私たちはブランドの本質を抽出し、それを極めてモダンかつ洗練された形で再解釈しました」と、大型モデルシリーズのBMWデザイン責任者であるマキシミリアン ミッソーニ(Maximilian Missoni)は説明する。
「すべてのディテールが本質を体現しています。エンジニアリング、素材、そしてそこに込められたストーリーにおいてです」

ショーカーはクラシックな2ドアクーペ
Photo:BMW Group。

流麗なフォルム、力強い面構成、そしてスポークホイールやクリア塗装で覆われたアルピナロゴといったディテールが、招待客たちを魅了した。

ヴィラ・デステ2025:ザガートがBMWアルピナから主役を奪う

しかし1年前のBMWにとって、コンコルソデレガンツァ2025での衝撃は非常に大きかった。ヴィラデステでのクラシックカーイベント開幕直前、BMW幹部は、数km南のコモ湖畔で「ボーフェンジーペン ザガート(Bovensiepen Zagato)」が公開されるという情報を掴んでいた。

現行BMW 4シリーズ コンバーチブルをベースにした、高性能グランツーリスモである。ボーフェンジーペン オートモーティブ(Bovensiepen Automotive)は、BMWが2022年に名称使用権を取得した元BMWチューナー「アルピナ」の後継企業だ。

ボーフェンジーペン ザガートには611馬力の直列6気筒3リッターエンジンを搭載
Photo:Bovensiepen Automobile GmbH

「Fine Driving」というスローガンを掲げた「ボーフェンジーペン ザガート(Bovensiepen Zagato)」の登場は、新生アルピナがまだ姿を見せる前だっただけに、BMWにとって痛手だった。

アルピナはBMWモデルをより速く、より特別な存在にしてきた

アルピナは数十年にわたり、BMWファンのみならず高い評価を獲得してきた。多くの人にとって“最高のBMW”は、ミュンヘンでもスパータンバーグでもディンゴルフィングでもなく、アルゴイ地方の玄関口ブッフローエから生まれていた。

もちろん、それらはBMW車をベースに改造したモデルだった。場所もバイエルン州都の西約70kmに過ぎない。しかし、ダイナミクス、エクスクルーシブ性、長距離巡航性能において、「Alpina B3/D3」「B4/D4」「XD3」、さらには「B7/B12」などは圧倒的な存在感を誇り、アウトバーン追い越し車線最速級のモデルとして知られていた。

アルピナブランドはダイナミズム、エクスクルーシブ性、長距離性能を象徴していた。
Photo:Stefan Grundhoff

数十年にわたり、メルセデスAMGのようにBMWがアルピナを買収するのではないかという噂は繰り返されてきた。しかし実現することはなかった。転機となったのは2022年。BMWは会社自体ではなく、2026年以降の名称使用権を取得すると発表したのである。既存アルピナモデルのクラシックカー事業は、ボーフェンジーペン家のもとブッフローエに残された。

それまでアルピナ車は独自メーカー扱いで、専用のメーカーコードとKBA番号を持つ独立車種だった。ただし主要市場である米国では例外で、高性能モデルは常にBMWを通じて販売され、公式なBMWラインアップのトップモデルとして扱われていた。

そして2027年から、この体制が世界規模で導入される。アルピナはMINI、ロールス・ロイス、BMW Motorrad、M GmbHと並ぶBMW Group AGの正式サブブランドとなる。

最初の市販モデルは2027年登場予定

リローンチを象徴するため、従来のアルピナロゴはカラーを廃し、モダンに刷新された。2027年投入予定の最初の2モデルの開発は、すでに本格化している。

BMWが狙うのは、メルセデスが「マイバッハ」で築いたポジションだ。Sクラス、SL、EQSのマイバッハ仕様はブランド最上級モデルとして、特に中国市場で大きな成功を収めている。同様にアルピナも、BMW本体ブランドより上位に位置づけられる。しかしBMWはこれまでショーファードリブン需要をあまり重視してこなかった。中国市場への注力によって、そこが変化すると見られている。

ブランドポジションと25万ユーロ(約4,625万円)という価格帯を見れば、当初はBMW 7シリーズやX7の超高級仕様が中心になることは明らかだ。

旧アルピナ時代最後のモデルは、2026年3月のアメリア・アイランド・クラシックカーイベントで公開された。「Alpina XB7 Manufaktur」の最終特別仕様で、北米専用モデルとして18万ドル(約2,844万円)超の価格が設定されていた。新生アルピナのラインアップが中期的にどのような構成になるのかは、まだ不透明だ。

旧アルピナ時代最後のモデル:SUV「XB7 Manufaktur」は米国専用モデルだった
Photo:Stefan Grundhoff

以前のアルピナは、3シリーズ、4シリーズ、X3/X4といった比較的小型のモデルにも高性能仕様を用意し、価格は10万ユーロ(約1,850万円)超に達していた。しかしブランドの中心は、B5、B7、B8、XB7といった上級モデル群だった。もっともBMWは近年、クーペ、4ドア グランクーペ、カブリオレを展開していた高級8シリーズを終了させている。

後継車の登場は今世紀末近くになる見込みで、それも4ドアモデルのみになる可能性が高い。そうしたモデルこそ、アルピナブランドに理想的な存在となるだろう。また、BMW Z4も生産終了が予定されている。

アルピナは今後も内燃機関を重視か

最近の流れを見る限り、少なくとも当面はBEV専用モデルは導入されない可能性が高い。「Vision BMW Alpina」もV8ターボエンジンを搭載しているからだ。しかし、BMW i7 M70やM760i xDrive、さらには豪華装備を満載したX7といった既存ラインアップとの差別化は、アルピナブランドのもとでもこれまで以上に難しく見える。

BMW初のアルピナコンセプトカーのインテリアは極めてクリーンな印象だ。
Photo:BMW Group

では、高い人気を誇った「Alpina B5」はどうなるのか。現行BMW M5のようなレーシングDNAこそ持たなかったが、長距離移動で快適性を求める顧客層には強く支持されていたモデルだ。

特にミュンヘン近郊ガルヒングでは、アルピナブランド再編に対して複雑な見方も存在している。XMによるメルセデスGクラス対抗策が失敗に終わったとはいえ、BMW M部門はかつてないほど好調だ。しかしMモデルがどれだけサーキット性能を強調しようとも、M5やM3の実態は異なる。これらのモデルは、将来のアルピナ同様、高速長距離移動の王者であり、それぞれのシリーズを象徴するフラッグシップなのである。

Text: Stefan Grundhoff