初テスト 新型メルセデスSクラス メルセデスのフラッグシップモデルに初試乗 その実力と評価は?
2021年2月28日
新型メルセデスは単なる自動車以上のものか? 我々のテストがそのことを明らかにする
Sクラスはメルセデスにとってブランドの心臓部であり、メルセデスが掲げる価値観の真髄を長年にわたって具象化したものだ。果たして新型S500 4MATICはその期待に応えることができているだろうか? 我々はラグジュアリーセダンのテストによってそのことを確かめる。
新しいSクラスのデビューは常に一大イベントだ。
実際に「Sクラス」と呼ばれるようになったのは、1972年の「W116」シリーズからのことだ。
今、また新しいモデルのデビューとなった。
新型「Sクラス」、モデルシリーズ「W223」がついに、発売開始したのである。
メルセデスは、「最高か無か」という宣伝スローガンを掲げ、自ら高い目標を設定し、イノベーションや新技術を多数採り入れた。
外見的には、あまり大きくないラジエーターグリル、長いボンネットとバランスのとれたプロポーションと、「W223」は、そのバロック的な旧モデルのいくつかとは異なり、明確で、調和のとれた装いを身にまとっている。
Sクラスのインテリアは、豪華なディスプレーだ。
しかし、インテリアを見てみると、その印象は一変する。
もはやシンプルなインテリアではなく、ラグジュアリーな空間である。
完全にリデザインされ、先代よりも軽やかで、風通しもよくなっている。
先代モデルのごちゃごちゃした画面は消え、2つの独立したディスプレーに置き換わった。
ドライバーの前にある12.3インチの計器類も、3Dテクノロジー(1,178ユーロ=約15万円)を搭載していて、奥行き効果が顕著に発揮されていて、素晴らしい楽しさを提供している。
センターコンソール上部に斜めに設置された12.8インチのディスプレーも鮮やかなグラフィックで機能する。
利点は、腕を遠くまで伸ばす必要のないことだ。
アームをセンターコンソールの上に静かに置いたまま、画面に到達することができるようになっている。
メニューナビゲーションは非の打ちどころのないもので、それでもそれを理解できない場合は、完璧に機能する巧妙な「MBUX(メルセデス ベンツ ユーザー エクスペリエンス)」システムの音声コントロールを使って操作をおこなうことができるようになっている。
6気筒は真の喜び
ボリュームのあるアクティブマルチコンツアーシート(2,380ユーロ=約30万円)は、様々な方法で調整可能(19個のモーター付き)で、10種類のマッサージプログラムが備わっている。
そして、正直に言うなら、実際には自宅にある「ロルフベンツ(Rolf Benz)」の高級ソファよりも快適だ。
リアは十分なスペースを提供し、テストカーでは、電動で調整可能なリアシート(1,856ユーロ=約24万円)の装着で、一層高い快適性を実現していて、非常にカジュアルでもある。
「S500」はV8ではなく、電動コンプレッサー、ターボ、一体型スタータージェネレーターを兼ね備えた素晴らしいエンジニアリングの3.0リッターの直列6気筒を搭載している。
これにより、5900rpmで435馬力、1800rpmで520Nmを発揮する。
スムーズに発進し、スロットルに自然に反応し、快活に回転し、BMWのストレートシックスのような音を奏で、スモーキーでハスキーなサウンドを奏でる。
そして、メルセデス独自の9速オートマチックは、非常に注意深く、スムーズに、ほとんど気づかないうちにシフトしていく。
したがって、2.1トンの新型「Sクラス」は0から100km/hまで4.9秒、200km/hまで18.1秒で十分速く加速する。
そのため、V8エンジンのことを惜しむような感情はさらさらなかった。
「S500」は全輪駆動とエアサスペンションを標準装備している。
我々のテストカーは、19インチピレリPゼロによくマッチした、298ユーロ(約38万円)のより大きなブレーキディスクを装着したブレーキシステムを備えていたので、100km/h走行時から、34.2メートルという、優れて短い距離で完全停止した。
S500 4MATIC – 高価格のための多くのもの
さらに、我々のテスト車には、1,547ユーロ(約20万円)の、10度角リアアクスルステアリングが搭載されていた。
これは、一方で驚くべき便利さを、他方では10.6メートルという非常に小さなターニングサークル(回転円)をもたらしている。
したがって、5.18メートルという長さのSクラスは、この点では小型車にも引けを取らない優秀さだ。
エアサスペンションは非常に敏感に的確に反応し、厄介な舗装の道路や凍った路上でも揺るぎなく、凹凸も非常に自信を持って受け止め、その上を優しくうねるように滑走する。
そして、本当に驚くべきことは、それが切り離されているようにも、吸収性のある綿に包まれているようにも見えず、むしろ地に足がついているように見えることで、「S500」は重厚感はあるが、驚くほど扱いやすい。
リアアクスルステアリングは、ダイレクトで正確なステアリングと、しっかりとした良いフィードバックをもたらす。
また、非常に低いノイズレベルも注目に値するもので、高速走行時にも常に驚くほど静かだ。
130km/h時に測定された64dB(デシベル)は文字通り傑出している。
結論:
自動車以上の存在?
そうとも言える。
メルセデスは、今回の「Sクラス」で高級車クラスのベンチマークを再定義した。
一方で、一種の終着点のようなものである可能性もある。
なぜなら、将来の高級車は、ほぼおそらく電気で走行するからだ。
AUTO BILDテストスコア: 2+
つい数日前、国道一号線の路上で新しい「Sクラス」と並んだ。実のことを言えばその時、いったいメルセデスベンツのなんのモデルなのか瞬間的に判別することができず、渋滞だったこともあるため、横に並んでしばらく並走しながら、マイナーチェンジした「Eクラス」だろうか?なんだろうかと、しげしげと見ているうち、内装を見て初めて新しい(出たばかりの)Sであるということに気が付いた次第である。
それほど今度のSクラスは現在のメルセデスベンツのラインナップの中で違和感がないデザインテイストというか、正直言って「お!新型Sだ!」と感じる部分が少なかったということもでもあるが、威圧感が意外と少なく、柔和なデザインテイストであることは決して悪いことではない。
「W116」や「W140」のような「The S Class」の威圧感は、必要な人には必要かもしれないが、街中や高速道路追い越し車線での「ドケドケ顔」はもはやミニバンや大型SUVに譲り、余裕綽々のハイテク電子デバイス満載の大型セダンとして君臨する方が、メルセデスベンツの最高位として相応しいと思うし、もはやそういう時代なのである。
だから「Eクラス」に似すぎているとか、「Sクラス」らしくないという声も聞かれるが、個人的には今度の「Sクラス」は好感が持てるフルモデルチェンジだ。
Text: Dirk Branke, Berend Sanders
加筆: 大林晃平
Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD