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真打登場!スマートフォン世代の自動車「テスラ モデルY L」

2026年5月11日

テスラ自身が「究極のファミリーカー」を謳う、テスラ モデル Y Lの試乗会が東京有明で行われた。モデル Yのホイールベースを150㎜延長し、6人が悠々と乗ることのできる最新のテスラに試乗した大林晃平のレポートをお届け。

今回有明で行われた試乗会において、プレゼンテーションで流された画像は、かなり衝撃的なものであった。テキサスの工場に新たに建設中のロボット工場の大きさにも驚いたが、そのあとに流された「モデル Y」の生産ラインの動画である。

それは工場内で、ほぼ完成した車両が、自ら勝手に(?)自動運転で工場内を無人で走り、最終的にはアッセンブリーラインから抜け出して、屋外の駐車場まで自分で走り、駐車スペースを見つけて止まる、という”今”のテスラ工場の様子を撮影したものだった。車同士が衝突しそうなヒヤッとする場面もあったがもちろんぶつかるわけはなく、人が運転するよりもスムーズに各々が駐車スペースに納まる様子にはビックリであった。

動画:「Self-Driving from the factory to the loading dock」:https://www.youtube.com/watch?v=BO1XXRwp3mc

これはFSDと呼ばれる自動運転(日本ではまだ未承認ながら、80万円+ほどの費用でオプション装備することも可能)が搭載されているがゆえに可能なものである。もちろんラインオフの最終段階での画像で、当たり前ながら工場内ですべての工程でこのように「自動的に」進行しているわけではないが、それでも新しい何かを感じさせるには十分な動画であった。

そう、テスラとは、今までの価値観とは異なり、こういう新しい何かを感じさせる自動車なのである。

グラマラスなヒップにシャープなスポーラーと赤いイルミネーションがきれいにまとまったリアセクション。

「モデル YL」もそうだが、テスラは走り出すまでの儀式も一般的な内燃機関自動車とも多くのBEVとも大きく異なる。正直言って、使いにくい形状のドアハンドルを開けて乗り込むところだけは妙に古臭いのだが、そこからあとはもうなんというか今までの自動車に慣れたドライバーには戸惑うことが多い。

テスラのシートは座り心地が良い。

目の前にある物理的なスイッチはウインカーレバーと天井のミラー前にあるハザードスイッチだけで(これがどちらも使いにくい)、他はステアリングホイールに備わった玉コロのような、親指でくりくりする前後左右に動く小さなマルチユーススイッチしかない。シート横に備わるパワーシートのスイッチも物理スイッチだったが、視界からは見えないので実に目の前はすっきりというか、従来までの価値観に毒された還暦ジジイには殺風景で寂しく感じられる眺めである。

殺風景だが、むしろ運転に集中できる。

だが生まれた時から無印良品に囲まれて育った世代には、こういうシンプルな空間の方が落ち着くかもしれないし、そもそもテスラの狙いはそういう旧来の価値観を壊すところにあるのだから、ああだこうだいちゃもんを言わず走りだすことにしたい……のだがここでもまた普通の自動車に慣れ親しんだ運転者を脅かすのに十分な仕掛けに出逢うことになる。

2列目シートのひじ掛けが意外と快適だった。

ワイヤレスキー(というかカード)を持参していればキーをひねったり(笑)、スイッチを押さなくとも勝手にスタンバイになる部分まではボルボなどのBEVと同じだが、テスラの場合セレクターでDやRを選択しなくとも、今の自分の状況を判断し勝手に前に進むべきかバックするべきかを判断して自ら進行方向を選んでくれるのである。

2人の身長は170cm。3列目も快適と言える。

さすがに小心者の私は、そこまで初見の自動車君に任せることなどできないため、自分でDポジション(というか前進ポジション)を選択することにしたが、それもブレーキを踏みながらディスプレー内に表示されている前進か後進を選ぶ部分を、指でシュッとスワイプするようにしなくてはいけない。

物入れが多いのもテスラの特長。

個人的に自動車のような人を傷つけたり事故を起こす可能性がある、非常に大きな物体がこれほどまでに簡単に指先だけで走行可能状態になったり、自動的に前に進んだりバックしたりを選択するような機構には、かなり違和感と疑問はあるのだが、それほど遠くない間に、そんなこと時代遅れさ、という感じの世界になるのかもしれない。スマートフォンがあっという間に普及したように。

そう、今回一番感じたことは、テスラはスマートフォンだということだった。そしてこの世界に慣れてしまったら、旧来の自動車に簡単に戻れるかどうかはわからないと思ってしまった。

6人が快適に乗車できるSUVタイプではないスタイルのBEV「テスラ モデル Y L」のトータルパフォーマンスは非常に高い。

操作系のことばかり語ってしまったが、一台の自動車としてその快適さや走行性能はどうかというと、「モデル YL」はかなり優秀な自動車である。まず走り始めるとその静かなことが嬉しい。BEVなのだから静かで当たり前、と言い切れないのが昨今の電気自動車事情で、妙に合成音や(そのほとんどは不気味だ)、インバーター・モーター音などが響くBEVが多い中で「モデル YL」はひたすら無音であろうとする。個人的にはこういう無音の方で良いと思うし、無理に変な音を作り上げて添加物を盛り込んだ料理にすることはない、と思う。

数年前にJAIAの試乗会で乗ったテスラ各車と比較すると今回の「モデル Y L」は、乗り心地もかなり良い。さすがに2400㎏以上の重さを路面の凹凸によっては感じる時もあるが、基本的には終始フラットで滑らか。静かで優しい乗り心地をもたらすコンチネンタル エココンタクトとの相性も良く、フロント255/45 19、リヤ275/45 19の太くて大きいタイヤを履いていると感じることもなく快適であった。

テスラと言えばその加速性能も含め、すごく速い自動車という印象が強いが、今回の「モデル Y L」も加速は強烈で、最高速度も201km/hと乗っている人の体力と動体視力が追いついていかないほどの性能を持つ。

全長がほぼ5mには見えないアピアランス。

しかもそれだけの性能を持ちながら6人が大変快適に過ごせる室内スペースと座り心地の良いシート(運転席と、2列目の席はソフトで心地よかったし、3列目のスペースも十分以上)が備わり、巨大なグラスルーフのおかげで室内は明るく鬱陶しさはみじんもない。試乗車のホワイトのシートカラーだけは126,000円の追加料金がかかるが、他の様々な装備はすべて標準装備で749万円。そこから補助金の127万円と、さらに自治体による補助金を足して考えると、実際にはだいたい600万円を切る感じで購入できるというのが現状のようだが、国内外の6人乗りのSUVやミニバンの昨今の価格を考慮すると、この「モデル Y L」はかなり魅了的で競争力も高い、というのが試乗した後の率直な結論である。尚、満充電で走行可能な航続距離は788㎞、0~100km/h加速は5.0秒と発表されている。

サイズ:
全長:4980mm
全幅:1920mm
全高:1670mm
ホイールベース:3040mm

下はモデル Y。Bピラーから後ろは全くの別物であることがわかる。

驚きと戸惑いと感心が入り混じった試乗会もそろそろ終わるという夕暮れの時間、偶然に信号待ちで隣には妙齢な女性が運転するキャデラックCT5が並んだ。残念ながらリリックではなかったが、それはそれで魅力的でエレガントな感じの構図ではあったし、決して内燃機関のキャデラックに2026年の東京で乗ることは時代遅れではないと思う。そして、同じアメリカのクルマ(試乗した「モデル Y L」は上海生まれではあるが)なのに、全く違う世界観の自動車が混在し、それを自由に選ぶことができるという”今”は楽しく、幸せな時代なのではないかと思いつつ、一刻も早く世界情勢が平和になることを願った。

Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)