このクルマなんぼ? 90年代のスーパーチャージャーを搭載したヤングタイマーがお手頃価格で入手可能
2021年2月12日
VWコラード(G60)やメルセデスベンツSLKといった、スーパーチャージャーが装備されたネオクラシックカーは比較的購入しやすい価格で市場に出回っている その真相
これらのスーパーチャージャー付きのクラシックは少額のお金で手に入る! 90年代に入り、性能を上げるためのエレガントな手段としてスーパーチャージャーが復活した。VWコラードやメルセデスSLKのようなスーパーチャージャーを搭載したヤングタイマーは、まだほとんどが比較的お手頃価格で購入できる。その価格チェック&相場分析&中古市場分析。
スーパーチャージャー。
それは、1930年代の伝説のグランプリレーサー、ルドルフ カラツィオラの駆ったスーパーチャージド「メルセデスSSK」や、ル マンを制した素人レーサー集団「ベントレーボーイズ」の代表、ティム バーキンの駆ったベントレー スーパーチャージャー付き4 1/2リッター「ベントレー ブロワー」のような雄叫びだ。
コレクターはこれらの戦前の戦闘馬のために数百万ユーロ(数億円)を支払う。
しかし、スーパーチャージドモデルを購入することは安価に行うこともできる。
スーパーチャージャーを備えたヤングタイマーなら、4桁の金額(数百万円)でそれらを手に入れることもできるからだ。
VWコラード: 趣味人は市場から消えてしまった
機械式スーパーチャージャーの復活は、1990年代にメルセデスベンツによって予告され実現した。
しかし、それに先駆けて、早くも1988年には、VWがGラーダ―(G-Lader)と呼ばれるスクロールコンプレッサーを搭載した「コラード」を発表している。
これもスーパーチャージャーだが、他の車に使われているものとは構造や機能が異なった。
1988年10月の市場導入時、VWは「コラード」に160馬力、1.8リッター4気筒、スクロールスーパーチャージャーを与えた。
「G60」という呼称は、コンプレッサーの設計に由来する。
しかし、今日では「G」は「需要がある」という意味としても解釈される。
オリジナルの無改造車はファンの間でも高い人気を誇っている。
「コラードG60」の価格は2014年に比べて現在では50~70%上昇している。
しかし、最近では上昇カーブがフラットになってきており、もうすぐ価格的にピークを迎えるとも予想されている。
クラシックデータによれば、コンディション2の個体で12,000ユーロ(約153万円)、コンディション3の個体なら7,200ユーロ(約92万円)で販売されているとする。
自然な状態のオリジナルカーは希少価値が高いため、多くの売り手が高値を提示しているのが現状だ。
しかし実際には、年金生活者が愛用してきたメンテナンスの行き届いた個体が市場に参入してきたり、粗悪な改造業者がどんどん消えていったりしているため、市場での保存&日常使用可能なコラードのシェアと供給量は拡大しており、それにつれて、購入しやすい価格帯の個体が多く見受けられるようにもなってきた。
またGラーダ―装備モデルはコラードだけではなくゴルフにもあったが、こちらも台数は少なく、現在ほとんど流通していない。
VWコラードG60:
市場想定価格:
コンディション2: 12,000ユーロ(約153万円)
コンディション3: 7,200ユーロ(約92万円)
メルセデスSLKは低価格を克服した
メルセデスは1995年、1940年代から休眠状態にあったCクラスのコンプレッサー技術をC230 K(1995~1999)で復活させた。
しかしこのC230 Kは残念ながら190の後継者(2.3リッター/193馬力)としての役割は十分に果たせていない。
したがって、市場価格はとてもリーズナブルだ。
スーパーチャージャー付Cクラスは、コンディション2の個体で5,000ユーロ(約64万円)、コンディション3: 2,700ユーロ(約34万円)という低価格で取引されているのが現状だ。
一方、「メルセデスSLK」は、その価格の低さを克服しつつあり、エンスージャストカーとしての、キャリアの始まりの兆候を示している。
それでも購入にかかる費用は比較的安価で、「C230」として、折り畳み式ルーフのロードスターは、コンディション2で、7800ユーロ(約99万円)で取引されているのが現状だ。
クラシックデータは、安心して使える、「デイリードライバー」なCクラスであれば、4,900ユーロ(約62万円)くらいから見つかるはずだとする。
最も安いスーパーチャージャーは、メルセデスC230 K(1995-1999)だ。
アストンマーティンDB7の中古価格は40,000ユーロ(約512万円)以下
稀に、しかし手頃な価格なスーパーチャージャーモデルとしては、エレガントなランチア トレヴィ(2,600ユーロ=約万円から)や、ベータHPE(5,900ユーロ=約万円から)が在る(もはや市場にはほとんど流通していないが…)。
しかし、もしも、あなたに金銭的余裕があって、30,000ユーロ(約384万円)ほど使えるお金を持っている場合、あなたもアストンマーティンの所有者になることもできる。
90年代、アストンマーティンは、フォードグループの一部だった。
姉妹ブランドのジャガーの助けを借りて、XJSからプラットフォーム、XJ40からエンジンを転用することによって、DB7(1994~1999)を創り出した。
しかしその過給機自体は、アストンだけの持つ特権のままだった。
市場では、状態の良いクーペは、コンディション2で34,000ユーロ(約435万円)、コンディション3で23,000ユーロ(約294万円)の価格が設定されている。
このように、スーパーチャージド6気筒を搭載した「DB7」は、ボンドをイメージした車に乗るには最も安いチャンスと言えるだろう。
ただし、注意しなければならないのは、メンテナンスが女王様によって支払われていない(定期的に正しく行われていない)場合、それは後々、高価な代償を強いられることがあるということだ。
特にアストンマーティンのパーツが高価なことは、悪名高いので当然のことながらご注意されたい…。
アストンマーティンDB7:
市場想定価格:
コンディション2: 34,000ユーロ(約435万円)
コンディション3: 23,000ユーロ(約294万円)
Photo: Peter Fischer / Auto Bild
以下に、その他の、手頃な価格のスーパーチャージドクラシックを4台ご紹介する。
メルセデスC230 K(1995-1999):
190に比べて人気がなく、スーパーチャージドCクラスの価格は低迷している。それは言うまでもなくW201ほどの完成度をこのクルマは持っていないからである。
市場想定価格:
コンディション2: 5,000ユーロ(約64万円)
コンディション3: 2,700ユーロ(約34万円)
Photo: Mercedes-Benz AG
フィアットは、スパイダーにヴォルメックス(Volumex)スーパーチャージドエンジンを搭載したモデルをたった2年間だけ提供し、500台を生産した。
スーパーチャージャーを搭載したイタロのロードスターは、コレクターの間でも人気が高い。
価値の成長という点では、30馬力弱い自然吸気モデルを凌駕し、現在では100~140パーセントのコストアップを実現している。探すことは困難だが希少であることは間違いない。
135馬力フィアット124ユーロパ スパイダー ヴォルメックス(1983~85):
市場想定価格:
コンディション2: 33,500ユーロ(約428万円)
コンディション3: 19,100ユーロ(約244万円)
ジャガーXJR 4.0(X300):
短命だった「X300」シリーズ中、320馬力のスポーティなトップモデル(1995~1997)は、総生産台数6,547台中7.1%(460台弱)しか占めていない希少なモデルだ。
ジャガー愛好家でスーパーチャージャー好きな人たちの中では、手入れの行き届いた状態とその歴史が評価され、平均的な車は、むしろ良い車よりも人気が高い状態にある。
市場想定価格:
コンディション2: 12,400ユーロ(約158万円)
コンディション3: 8,100ユーロ(約103万円)
最も高いスーパーチャージドクラシック。
ベントレー4.5リッター ブロワー(1928~1932):
ル マン24時間耐久レースのホモロゲーション用に作成された55台のシャーシ。メルセデスSSKの次に、今日、最も貴重なスーパーチャージドカーとして、コレクター、愛好家、ファンにいつまでも人気のあるオブジェクトだ。
価格: 要応談(おそらく数億円以上 最近メーカー自身によって再販売された)
Photo: Bentley Motors
日本でも一時期はスーパーチャージャーの搭載されたモデルは結構多くあり、軽自動車にも、ディーゼルエンジンモデルにも、旦那セダンにもスーパーチャージャーが搭載されて相次いで発表されていた時代があった。
すっかり市民権を得たばかりか、普及して一般的な技術になったターボチャージャーとくらべ、スーパーチャージャーモデルの話題は昨今すっかり聞かなくなった。その理由はいくつか考えられるが、結局は効率などなどの問題のようにも思える。
それでもスーパーチャージャーという名前の響きには、力強さと歴史の重みのある部分を感じるのは贔屓すぎるだろうか。そういえば大ヒット映画「マッドマックス」にもスーパーチャージャー付の車輛がいくつも登場するし、強力なパワーの象徴という意味ではスーパーチャージャーの存在感はターボ以上のものがあった。
かつては「キャラコを引き裂くような音で」と形容されたスーパーチャージャー。もうこれからは装着された自動車は出てこないのだろうか。そう思うとちょっと切ない。
Text: Martin G. Puthz
加筆: 大林晃平
Photo: Roman Raetzke