【フルテスト】635馬力の怪物ディフェンダー登場!BMW製V8を積んだ「ランドローバー ディフェンダー P635 オクタ」は本当に必要なのか?
2026年3月13日
英国のオフロードアイコンを極限まで高めたモデルが登場した。「ランドローバー ディフェンダー P635 オクタ(Land Rover Defender P635 Octa)」は、BMW X5 Mに搭載されるツインターボV8エンジンを採用。AUTO BILDがその実力をテストした。
時代は大きく変わった。1983年の初代「ランドローバー ディフェンダー」はわずか74馬力しかなく、性能を求めないユーザー向けの純粋なオフローダーだった。だが今や状況は一変している。BMW製ツインターボエンジンから635馬力を発生するモンスターが登場したのだ。
これは本当に必要なのだろうか。メーカーの立場からすれば答えは「イエス」だ。新規開発に十分な資金がないことに加えて、顧客の一定数が常に最強仕様を選ぶことを理解しているジャガーランドローバー(JLR)は、現在高価格の特別仕様車を次々と投入している。これらは、ブレグジットの影響で打撃を受けた英国メーカーにとって、貴重な資金源となっている。
外観からは性能を想像できない
ランドローバーの車にBMW製エンジンが搭載されるのは、実は今回が初めてではない。たとえば1997年に南アフリカ市場向けとして登場した「ディフェンダー 2.8i」には、193馬力のBMW製直列6気筒エンジンが搭載されていた。また2001年に登場した3代目「レンジローバー Td6」も、ベースモデルとして3.0リッターのBMW製直列6気筒ディーゼルエンジンを採用していた。

「ディフェンダー オクタ」の外観は、英国車らしく控えめだ。とりわけワンメイクラリーシリーズのマシンを思わせる20インチホイールを装着している場合でも、その印象は変わらない。価格は19万ユーロ(約3,572万円)に達するが、それと気づくのは事情通くらいだろう。
ディフェンダーらしいインテリア
オクタは単なる高性能版というだけではない。将来的なラリー競技車両のベースとなるモデルであり、ラインナップの頂点に位置する存在でもある。同時に、ユーロ7排出ガス規制に適合できないランドローバー製5.0リッターV8の後継でもある。
車内に入ると、インテリアは基本的に通常のディフェンダーと変わらない。大型ホイールの影響で標準モデルより2.8cm車高が高くなっており、着座位置は非常に高い(床面基準でも高い)。また洗えるハードプラスチックが多用され、操作系はやや複雑だ。皮肉なことに、オフロード機能の多くはセンターメニューの奥深くに配置されている。

センターコンソール左側のロータリーノブは、たとえば3つの機能を兼ねている。温度調整、シートヒーター、そして右側の矢印ボタンを押したあとに選択できるドライブモードだ。
ディファレンシャルロックの操作も、このディフェンダーでは決して直感的とは言えない。専用ボタンが用意されていないためだ。とはいえ多くのドライバーは、グラベル、泥、雪、砂といった路面に対応するプリセットのオフロードモードを利用することになるだろう。

低速ギア(ローレンジ)をデフロックなしで単独で使用できる点は非常に優れている。たとえば、濡れた芝生の上で重いトレーラーを狭い場所で取り回す際には大きな利点となる。また、ステアリングホイール左側のスポークに設けられたボタンからドライバーアシスタンスシステムへ素早くアクセスできるのも好印象だ。
ルームミラーは実際にはモニター式で、距離が実際より遠くに見える。これは人間の自然な視覚感覚とは逆のため距離感をつかみにくいが、問題はない。通常のミラー表示に切り替えることも可能だ。
控えめな存在感のエグゾースト
通常モードでスタートボタンを押すと、V8らしい力強さはあるものの、礼儀正しく抑えられたサウンドが響く。どうやら上流階級の社交界でも目立ちすぎないように配慮されたチューニングのようだ。
しかしダイナミックモードに切り替えると状況は一変する。エグゾーストは明確にV8らしい音を奏で、期待感を高めるサウンドになる。このモードでのみ追加されるドライブプログラムが「Octaモード」だ。

「Octaモード」を選択すると、車内照明は悪魔的な赤色に染まり、専用のローンチコントロール「オフロードローンチ」が作動する。これは未舗装路での発進時にトラクションロスを最小化するシステムだ。同時にトラクションコントロールはより寛容な設定となり、オフロード用に最適化されたABSが作動して、未舗装路でも可能な限り短い制動距離を実現する。ノートパソコンはもう片付けよう。今はただ運転したいだけだ。
| ランドローバー ディフェンダー P635 オクタ | |
| エンジン | V8ツインターボ マイルドハイブリッド |
| 排気量 | 4395㏄ |
| 最高出力 | 467kW (635ps)/6000rpm |
| 最大トルク | 750Nm/1800rpm |
| 最高速度 | 250km/h |
| トランスミッション | 8速オートマチック |
| 駆動 | 全輪駆動 |
| タイヤサイズ | 275/50 R22 W |
| タイヤ銘柄 | ミシュラン プライマシー オールシーズン |
| 牽引(ブレーキ有/無) | 3500kg/750kg |
| 荷室容量 | 786–1875L |
| 全長/全幅/全高 | 4756-5003/2064/1995mm |
| ホイールベース/最大地上高 | 3023/323mm |
| 価格 | 187,600ユーロ(約3470万円) |
2.7トンでも250km/hまで加速
停止状態からアクセルを踏み込むと、エアサスペンションを備えたSUVのフロントがわずかに持ち上がる。その唸るようなサウンドは、映画『Bullitt』でスティーブ マックイーン(Steve McQueen)が駆った「フォード マスタング GT ファストバック(Ford Mustang GT Fastback)」を思わせる。

車重2.7トンにもかかわらず、250km/hまでの加速は驚くほど effortless(容易)だ。背の高いボディとワイドタイヤを持ちながらも高速域での直進安定性は高く、電子制御リミッターが作動する250km/hまでドライバーが恐怖を感じることはない。
スポーツカー並みのパフォーマンス
最大トルクはわずか1800rpmから発生し、BMW X5 Mにも搭載されるBMW製V8は6000rpmまで750Nmのトルクをフラットに維持する。まさに余裕に満ちたパフォーマンスだ。0-100km/h加速はメーカー公称4.0秒だが、今回のテストでは4.6秒を記録。それでも体感はまるで大型バイクのように強烈だ。テスト車はすでに1万6000kmを走行していたため、この差が生じた可能性がある。

走りは意外に落ち着いている
通常モードではステアリングの手応えはやや曖昧だが、ダイナミックモードでは適度な重さでバランスが良くなる。2020年に現行「ディフェンダー(L663)」登場時に、それまでのランドローバー伝統だったリジッドアクスルを廃し、四輪独立懸架を採用した判断はオンロードで大きな効果を発揮している。
コーナリング性能も良好
「オクタ」は軽々とコーナーをこなす。とはいえ、パワートレインを共有する「BMW X5 M」のような神経質さはない。また「ポルシェ カイエン(Porsche Cayenne)」のようにスポーツカーのような錯覚を生むわけでもないが、路面状況はしっかり伝わってくる。190km/hを超えると背の高いボディの影響で風圧は強く感じるが、風切り音が不快になるほどではない。

石畳では各所から多少のきしみ音が聞こえるものの、レザーで覆われたアルミ製モノコック構造の作りは全体として堅牢だ。内装が均等に軋むのは、テスト時の氷点下の気温の影響もあるかもしれない。
都市では少し扱いづらい
高速道路を離れ、大都市の日常へ戻る。奇妙なことにこの英国車は、速度制限標識の自動反映機能をアダプティブクルーズコントロールのリミッター機能と併用した場合にのみ利用できる。しかも予測型ではなく、標識を認識して反応するだけだ。
地下駐車場では360度カメラが役立つ。さらに、オフロード用機能である「透明ボンネット」表示も便利だ。急坂で空しか見えなくなるような状況でも、前方の路面を映し出してくれる。ただし全幅2.06m(ミラー除く)の「ディフェンダー オクタ」は、標準のディフェンダーでも大柄なのにさらに扱いにくく、地下駐車場ではかなり神経を使う。

エアサスペンションは優秀
荒れた田舎道では、よく調整されたエアサスペンションが印象的だ。コンフォートモードでは多くの段差を巧みに吸収し、大きなうねりも余裕で処理する。シャシーは「レンジローバー スポーツ(Range Rover Sport)」から派生したもので、サイズと重量を考えれば避けられないピッチングやロールを見事に抑えている。油圧連結式で連続可変ダンパーが車体を安定させているのだ。

都市向けの22インチホイールを装着すると乗り味は変わり、増えたバネ下重量が影響して段差でホイールが沈み込む感覚が出る。むしろラリー風デザインの20インチホイールのほうが快適で、厚いタイヤのおかげでまるで“魔法の絨毯”のような乗り心地になる。
特別なシート
部分負荷でのドライブは実に楽しい。低回転から大排気量V8が唸りながら坂を登る感覚、低音を伴った余裕ある走り―この体験は電気自動車では決して味わえない。

標準装備の「Body & Soul」シートもユニークだ。センターメニューで選択すると、シートフレーム自体がサブウーファーとして機能し、マッサージプログラムや音楽と連動する。まるで好きなバンドのドラムセットの後ろに座っているような感覚だ。
燃費とブレーキ
もちろんツインターボV8は環境に優しいとは言えない。しかし性能と3.5トンの牽引能力を考えれば、テスト燃費15.6L/100kmは妥当だろう。
100km/hからの制動距離は約37m(温間時)。スポーツカー並みではないが、400mmディスクとブレンボ(Brembo)製キャリパーは十分に効果的だ。
価格は非常に高い
問題は価格だ。購入価格は18万7600ユーロ(約3470万円)。一般人には手が届かない金額である。

275幅タイヤは泥を巻き上げやすいため、4450ユーロ(約82万円)のペイントプロテクションフィルムは合理的な選択だろう。また車両価値を考えれば677ユーロの盗難防止トラッカーも納得できる。
総評
| 評価 | 得点 | |
| ボディ | 許容できる広さの室内空間、見晴らしの良い高い着座位置。ただし、横開き式のリアドアは実用性の面ではあまり優れていない。 | 3.5点/5点満点 |
| 走行性能 | 非常に速いにもかかわらず、本格的なオフロード性能も備えている。オートマチックトランスミッションはスムーズで、V8エンジンは素晴らしいサウンドを響かせ、圧倒的な力強さを発揮する。 | 4点/5点満点 |
| ドライビングダイナミクス | 挙動は安全で予測しやすいが、俊敏さには欠ける。最小回転半径は約13メートル弱。制動距離は許容範囲内だ。 | 3.5点/5点満点 |
| インフォテイメント | リアルタイムナビゲーション(13.1インチのタッチスクリーン)は標準装備で、Apple CarPlayおよびAndroid Autoもワイヤレス接続に対応している。 | 4点/5点満点 |
| 環境性能 | 車体は大きく重く、燃費は良いとは言えず、CO₂排出量も多い。ツインターボV8にマイルドハイブリッドシステムを組み合わせる。外部騒音は低く抑えられている。 | 1.5点/5点満点 |
| 快適性能 | コンフォートモードではエアサスペンションが滑らかな乗り心地を実現する。一方で、大径ホイール装着時はやや硬めの乗り味となる。 | 3.5点/5点満点 |
| コスト | 購入価格は高額で、メンテナンス費用も同様に高い。ただし将来的にはコレクターズアイテムとしての価値が期待できる可能性がある。 | 1点/5点満点 |
| Auto Bild評価点 | 3.1 |
残る印象は、意外なほどバランスの取れた一台ということだ。過剰なパワーを誇示するタイプではなく、自信に満ちている。必要なら牙をむくが、ドライバーを挑発することはない。いわば“ゴールドチェーンをぶら下げた成金SUV”ではない。真のクルマ好きだけが、このオーナーに話しかけるだろう。そしてオフロード性能は、他のディフェンダーと同様に本格的だ。ただし、その価格がオクタの希少性を保証している。
結論:
神戸牛バーガーのようなクルマだ。贅沢だが、実に美味しい。調和が取れ、音楽的で、いかにも英国らしく控えめ。事情通だけが“億万長者のクルマ”だと気づく。将来的にはコレクターズアイテムになる可能性もある。
AUTO BILD テストスコア:3.1
フォトギャラリー:ランドローバー ディフェンダー P635 オクタ








Text: Rolf Klein and Berend Sanders
Photo: Christoph Börries / AUTO BILD

