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EVタクシーという新しい現実 「BYD SEAL」で営業する個人タクシードライバーが語る電動車の実力と街に増え始めた「BYD Sealion 7」

2026年3月10日

電気自動車は本当に実用になるのか。その問いに対する最も説得力のある答えは、日々何百キロも走り続けるプロの声だろう。

今回話を聞いたのは、中国BYDの電動セダン「BYD SEAL」を営業車として使用する個人タクシードライバーのYさん。長時間運転と頻繁なストップ&ゴー、そして多様な乗客に対応するタクシーという環境は、クルマにとって決して優しいものではない。その厳しい現場で、BEVはどのように評価されているのか。

実際にSEALを使い続けているドライバーの言葉からは、電気自動車ならではの明確な利点と、タクシー業界に起きつつある静かな変化が見えてきた。

モーターの瞬発力が生む“運転の余裕”

まず印象的なのは、電動パワートレインのレスポンスの良さだ。

「進路変更や追い越しのときの瞬発力は、やっぱり電気の方が大きいですね。アクセルを踏んだ瞬間に加速が立ち上がるので、躊躇せずに動けるんです」

都市部のタクシー営業では、交通の流れに合わせた素早い車線変更や短いタイミングでの合流が求められる。モーター特有の瞬時のトルクは、そうした場面でドライバーに大きな安心感をもたらすという。

「減速もとてもスムーズですし、精神的にも肉体的にも楽ですよ。長時間運転する仕事なので、この“余裕”は大きいですね」

EVの静粛性や滑らかな加速はよく語られる特徴だが、それが仕事道具としての快適性にもつながっている点は興味深い。

乗客が実感する静粛性と快適性

もちろんタクシーとして最も重要なのは乗客の評価だ。その点でもSEALの評判は上々だという。

「乗り心地についてはお客様からもお墨付きですね。とにかく静かですし、後席の広さも十分あります」

なかでもドライバーが感心しているのがシートの設計だ。

「着座面と背もたれの長さ、それに角度のバランスが絶妙なんです。メーカーにも言ったんですが、“なんでこの角度が分かったの?”と思うくらいなんですよ」

広々とした後席はセンタートンネルがないため足元の窮屈感はゼロ。
Photo:BYD

タクシーでは空港送迎や都市間移動など、1時間以上乗車するケースも珍しくない。そうした長距離でも疲れにくいシートは、乗客の満足度に直結する。

「長距離のお客様からは“疲れないね”と言われることが多いです」

ミニバン全盛の時代に見直されるセダンの魅力

日本市場ではミニバン人気が続いており、個人タクシーのミニバン導入も増えているが、実際の乗客の反応を見るとセダンの評価も根強いという。

インテリアデザインはドイツ人デザイナーのミケーレ パガネッティによるもの。
Photo:BYD

「特に中年以降のお客様ですね。乗り降りが楽ですし、横揺れが少ない。セダンの落ち着いた乗り味はやっぱりいいですよ」

Yさん自身も久しぶりにセダンへ戻ってきたという。

「私自身、十数年ぶりにセダンに戻ってきましたが、正直ちょっとホッとしています」

SUVやミニバンが主流となった今だからこそ、セダンの持つ安定感や快適性が改めて評価されているのかもしれない。

イベント参加に合わせて架装は取り外されている。

ドイツ車を思わせる走りの質感

Yさんはこれまでドイツ車など数多くのモデルを乗り継いできた。その経験から見ても「SEAL」の完成度は高いという。

「全体的な味付けは、どこかドイツ車っぽい感じがありますね。ヨーロッパ市場を意識したセッティングなのかな、という印象です」

同時に、日本市場で根強く残る中国車への先入観についても率直に語る。

BYD SEALのどこか欧州車を思わせる堅実な走りは我々も確認済みだ。

「日本人には“中国車”というイメージを一度捨ててほしいですね。毛嫌いする前に乗ってみてほしい。いいものはいい、それはちゃんと認めるべきだと思います」

EVがもたらす圧倒的なランニングコスト

タクシー事業において最も重要な要素のひとつが運用コストだ。その点でEVは大きなメリットを持つ。

「コストはガソリン車と比べて、だいたい3分の1から4分の1くらいまで下がります。これはかなり大きいですね」

さらにメンテナンス面でも違いがある。

「タクシーは5000kmごとにオイル交換していましたが、BEVにはそれがありません。維持費という意味ではかなり助かります」

BYD SEALのブレードバッテリーがフラットに搭載されスペースユーティリティー、低重心化に貢献している。
Photo:BYD

日々走行距離の長いタクシーほど、BEVのメリットは大きくなる。

「すべてにおいてエコですし、環境にも配慮できます。BYDという会社は世界に対して大きなインパクトを与えたと思います」

航続距離の不安は実用上ほぼなし

BEVで多くの人が気にする航続距離についても、実用上の不安はほとんどないという。

「通常の営業なら1日1回の充電で十分です。長距離が入れば途中で充電しますが、基本的には帰庫時の1回ですね」

近年のEVの進化についても実感しているという。

「出始めの電気自動車とはレベルが全然違います。航続距離も伸びていますし、充電性能もかなり良くなっています」

タクシー業界で増え始めたSealion 7

最近ではBYDのSUV「BYD Sealion 7」を導入するタクシードライバーも増え始めているという。

「知り合いでも「Sealion 7」を導入した何人かいますし、最近は街でも見かけるようになってきました」

「Sealion 7」は「SEAL」と同じEV専用プラットフォームをベースにしたSUVで、より広い室内空間と高い実用性を備えるモデルだ。後席スペースや荷室容量の余裕は、タクシー用途でも大きな魅力になる。

「荷物の多いお客様にも対応しやすいですし、後席のゆとりも大きい。タクシー用途にはかなり向いていると思います」

BYD Sealion 7

EVタクシーが変える未来

「乗ったらとにかく楽しいし、楽なんです」

約50000kmを走った時点で点検を行ったYさん。

「バッテリーの劣化率は1.01%でした。これは正直びっくりです」

さらに乗り心地も相変わらず快適だと言う。

「車重が2100kgと重量級ですが、サスペンションの劣化を感じることもなければタイヤの山も十分に残っています」

そう語るYさんは、今後のBYDのモデル展開にも期待を寄せている。

「これからいろんな車種が出てくるでしょうし、新型も楽しみですね。たぶん、もうガソリン車に戻ることはないと思います」

空力特性に優れたBYD SEALのボディ。

EV化の波は確実に広がりつつある。そしてその変化は、日々街を走り続けるタクシーの世界にも、静かに、しかし確実に広がり始めている。

Text&Photo:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)