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【W16エンジン開発秘話】このランボルギーニはブガッティの秘密のテストカーだった なぜVWはW16エンジンをディアブロでテストしたのか

2026年2月19日

ブガッティ製エンジンを積んだランボルギーニ ディアブロ?—長らく空想の産物のように思われていたが、それは紛れもない事実だった。1990年代後半、フォルクスワーゲンはこのスーパーカーを極秘のテストベッドとして使用していた。後に自動車史に名を刻むことになるW16エンジンの実験台としてである。

一見すると、それは典型的な「ランボルギーニ ディアブロ」だ。低く、ワイドで、荒々しい—まさに時代を象徴するスーパーカー。しかしこの個体は特別だった。ショーカーでもなければ、モーターショー向けの話題作りでもない。外見からは分からない歴史を秘めた一台である。なぜならそのリアには、本来ランボルギーニのものではないエンジンが搭載されていたからだ。そしてその真価が明らかになるのは、さらに数年後のことだった。

ピエヒの“大排気量”への情熱

この異色のコンバージョンは、当時のVWグループCEO、フェルディナント ピエヒ(Ferdinand Piëch)の下で極端なエンジン構想が次々と試みられていた時代に生まれた。「ブガッティ ヴェイロン」が市販されるはるか以前から、その心臓部となるエンジンはすでにランボルギーニの車体内で回っていたのだ。

ピエヒは妥協を許さない人物だった。「アウディ クアトロ(Audi Quattro)」や「ポルシェ 917(Porsche 917)」といったアイコンから、「VW パサート W8(VW Passat W8)」や「VW フェートン W12(VW Phaeton W12)」に至るまで、彼の足跡は自動車史の随所に刻まれている。とりわけエンジンに関しては限界という言葉を知らなかった。

VWは一時、「アウディ R8(Audi R8)」にV12ディーゼルを搭載し、「アウディ Q7(Audi Q7)」には12気筒エンジンを与え、「VW トゥアレグ V10 TDI(VW Touareg V10 TDI)」を市場に投入した。すべてが成功したわけではない。しかしそれぞれが、当時のVWグループの技術的野心と妥協なき姿勢を象徴していた。

4基のターボと16気筒—ブガッティW16はヴェイロンの技術的中核を担った。その前段階ではランボルギーニでテストされていた。
Photo:Bugatti Automobiles

W18からW16へ

これらの実験をも凌駕する存在、それがW16だった。当初ブガッティはさらに大きな構想を描いていた。1999年のフランクフルトモーターショー(IAA)で発表された「ブガッティ 18/3 シロン(Bugatti 18/3 Chiron)」は、6.2リッターW18エンジンを搭載し、大きな話題を呼んだ。

最終的に選ばれたのは、4基のターボチャージャーを備える8.0リッターW16だった。このエンジンこそが、後に「ブガッティ ヴェイロン(Bugatti Veyron)」を駆動することになる。

ディアブロでのテスト走行

最初のヴェイロンプロトタイプが製作される前、新型エンジンは別の車両で実地試験を受ける必要があった。VWが1998年にランボルギーニの権利を取得すると、テスト車両として選ばれたのがディアブロだった。V12エンジンは取り外され、開発途中のW16が収められた。

VWがW16のテスト車両として使用したランボルギーニ ディアブロ。

ベースとなったのは、リトラクタブルヘッドライトを持たない改良型「ディアブロSV」。外観はほぼ市販仕様に見えるが、リアボディには冷却性能向上のための追加開口部が設けられていた。大幅に増大した冷却要求への対応である。技術的には、このW16搭載「ディアブロ」は完全なワンオフ。量産車とはまったく異なる存在だった。

ワイドなリアエンドに4本出しエキゾースト。外観はディアブロSVそのものだが、中身は別物だった。

ひとつのエンジン、多くのコンセプト

W16は最終的にヴェイロン専用エンジンとなったが、VWグループ内では同じ気筒レイアウトを用いたコンセプトカーが他にも存在した。1999年の「ベントレー ユノディエール(Bentley Hunaudières)」や、2000年の「アウディ ローゼンマイヤー(Audi Rosemeyer)」がその代表例である。

同時期、VW自身もスーパーカー構想として「VW W12 ナルド(VW W12 Nardo)」を発表している。

極限条件下でテスト走行を行うブガッティ ヴェイロンのプロトタイプ。
Photo:Bugatti Automobiles

W12エンジンは2024年、最後の「ベントレー バトゥール(Bentley Batur)」とともに歴史に幕を下ろした。W16もまた、「ブガッティ ミストラル(Bugatti Mistral)」の最終納車をもってその役目を終える。その思想は、新型Bugatti Tourbillonへと受け継がれる—ただし今度はV16として。一方ランボルギーニは、最新の「ランボルギーニ レヴエルト(Lamborghini Revuelto)」に至るまで、V12の伝統を守り続けている。

Text: Marie Milius
Photo: Autostadt GmbH