ニューモデル情報 リフレッシュした新型BMW 5シリーズ その全てをレポート!
2021年1月25日
購入アドバイス リフレッシュされたBMW 5シリーズ 我々のお薦めのフェイスリフトバージョンはこれらだ
BMW 5シリーズ(G30/G31)。お行儀の良い「520i」から野蛮な「M5 CS」まで、BMW 5シリーズには、ほぼすべてのニーズに対応できるバージョンがラインナップされている。そしてそれらは今回フェイスリフトされたモデルにもすべて揃っている。すべての情報をお届けする。
BMW 5シリーズは、すべてを簡単に兼ね備えているかのように見える1台だ。
アッパーミッドレンジのモデルが、快適性から俊敏性までちゃんと提供できるよう、長年にわたり多くの開発作業が行われてきた。
BMWの世界では、5シリーズは常に地に足の着いた存在であり、あえて大胆な設計開発の実験はしていない。
クリス バングル時代の5シリーズ、E60でさえ、当時の過剰なデザインの割には比較的控えめだった。
これは2017年からアッパーミッドレンジを率いるG30の現在も同様だ。
最新のフェイスリフトにおいて、特徴あるキドニーグリルはそれぞれのモデルで形状が変更されており、例えば7シリーズは中国市場のために不釣り合いなほど大きなフロントグリルを備えなければならず、M3とM4のスポーツカーはどうやらバッグスバニーをモデルにしているようなキドニーグリルを備えている。
さてそんな中、今回の5シリーズのキドニーグリルはより広くなっているが、より平らにもなっている。
なぜなら、BMWは、従来のモデルシリーズを、モデルごとにより差別化したいと考えているからだ。
5シリーズは一見して5シリーズだとわかるようにしなければならないが、そのためにも7シリーズとは異なったデザイン手法をとる必要があった。
そのため、BMWは、5シリーズのために、古典的なフェイスリフトの方法をとり、あえて7シリーズやM3とは別の形状のキドニーグリルを継続して採用したのだった。
今回のマイナーチェンジでは、フロントとリアでライトとスカート、インテリアのディテールが変更され、新しいホイールが採用された。
その中でもダブルLの形をした新しいLEDライトは特に印象的だ。
また、エンジンルームには48ボルト仕様の小さなエネルギー貯蔵ユニットが設置されており、つまり技術的にはすべての5シリーズの電動化に主な焦点が当てられたことになる。
トランク内の古典的な車両用バッテリーに加えて、エンジンルームには11アンペアアワーの小型エネルギー貯蔵ユニットがあり、発電機に短時間の電力を供給することで、8kW(11馬力)のパワーでエンジンをブーストすることができるようになっている。
さらに、ブレーキエネルギー回生、セーリング機能を備えたお馴染みの「エコプロ」モード、冷却性の向上または空力特性の改善を提供するグリルの需要制御フラップが備わっている。
新しいプラグインハイブリッドシステムのモデルは、394馬力のシステム出力を持つ「545e」だが、詳細はエンジンの章で改めて説明したい。
内部は穏やかなイメージチェンジのみ
まず、インテリアに目を向けてみよう。
BMWがシュトゥットガルト(メルセデス)やインゴルシュタット(アウディ)の競合車のようにホイールを再発明しようとしているのではなく、今まで長年にわたって成熟し、様々に試行錯誤されたiDriveの操作コンセプトに頼っているのはBMWファンにとっては喜ばしいことと言えよう。
運転席に面したコックピットのセンターセクションは、EクラスやA6ほど近代的には見えないかもしれないが、交通の妨げになることははるかに少ない。
これは、基本的な機能の多くがほとんど目隠しなしで操作でき、音声操作でも問題なく操作できるからだ。
すべての5シリーズに搭載されている10.25インチのセンターディスプレーにはナビゲーションシステムが搭載されており、最適化されたソフトウェアバージョンにより、リアルタイムでの交通状況への反応がさらに良くなっている。
加えて、最新型のiDriveは、Android携帯電話をAppleデバイスと一緒にミラーリング(全く同じ画面表示を複数のディスプレーで行うこと)することができるようになった(これまでは、Androidユーザーは、Bluetoothでペアリングするしかなかった)。
さらに希望すれば、12.3インチのディスプレーも用意されている。
ただし、この機能は、プロフェッショナル・ビジネス・パッケージの「ライブコックピット(完全デジタルで自由に設定可能な計器類)」との組み合わせでのみ利用可能となっている。
価格はグレードにもよるが、2,583~2,924ユーロ(約33~37万円)だ。
ただし、少なくとも4ゾーンの空調システム、フロントシートヒーター、バックカメラ付きパーキングアシスタントは含まれている。
本当に優れたヘッドアップディスプレーは、予算とは別に1,218ユーロ(約15万円)が追加で必要となる。
携帯電話をワイヤレスで充電したい場合は、別途585ユーロ(約7万4千円)を支払う必要がある。
そして、距離マイナスボタンの長押しで従来のクルーズコントロールにダウングレードすることができる、ストップアンドゴー機能付きアダプティブクルーズコントロールは、別途1,170ユーロ(約14万円)の費用がかかる。
これに加えて、他にも5シリーズには、追加装備で大金をつぎ込むことができるが、「バウワース アンド ウィルキンス(Bowers & Wilkins)」製の1400ワットのサウンドシステムは4,533ユーロ(約57万円)もする。
特別に重要なディテールの1つは、もちろん新しいヘッドライトで、特に650メートルまで照らすことができるレーザーライトだ。
しかし、これはハイビームアシスト、ヘッドアップディスプレー、コンフォートアクセスと一緒に、4,582ユーロ(約58万円)の「イノベーションパッケージ」でのみ利用可能となっている。
それなら975ユーロ(約12万円)という「5分の1の価格」の適応マトリックスLEDライト、あるいは標準のLEDヘッドライトで十分ではないだろうかという議論を定義する。
広いモデルレンジ: 十数種類のエンジンから選択可能
ボンネットの下のエンジンは、M5 をカウントに入れない場合でも、12種類ものエンジンが選択できるようになっている。
まずは一番小さいガソリンエンジンから。
「520i」は、なんとしてでも「5シリーズ」を所有したいと望む人のためのものだ。
だが一番弱いバージョンの5シリーズであっても、スペースとプレステージはちゃんと備わっている。184馬力を持つ「520i」はその性能においても決して遜色はない。
0から100km/h加速8秒未満と235km/hの最高速度は、十分以上だ。
我々は、メーカー公表値の、リッターあたり18.1kmという平均燃費を信じていないものの、リッターあたり15km程度が可能であれば、このサイズの車にはよしとすべきであろう。
その上の、追加で4,000ユーロ(約50万円)以上の費用が必要な「530i」は、「520i」よりも68馬力も強いパワーと30Nmより多くのトルクを兼ね備える。
これによって、0から100km/hまで、「520i」より1.5秒速くスプリントし、最高速度も250km/hにまでアップする。
もちろんそれにともなって、燃料消費量もわずかに増加するが…。
シルキーな6気筒エンジンは、さらに60,000ユーロ(約762万円)を必要とする「540i」でのみ利用可能だ。
このクラスの5シリーズに興味がある人は、自分の中に明確なダイナミクス(動力学)の評価基準を持っているべきだ。
そうでないとどのエンジンがいいのか、果てしなく迷い続けてしまうだろう。
さらにパワーを望む人には「M550i」もあり、このモデルは従来までの462馬力から530馬力へと大幅に性能が向上しており、ツインスクロールスーパーチャージャーを搭載した4.4リッターV8がどれだけのパワーを備え持っているかを改めて知らしめるほど力強い。
この「M550i」は全輪駆動であり、そういった意味では M5と同じ全輪駆動のみのセダンの設定となる。
だが純粋にV8とスポーティな精神に信奉しているなら、コンペティションとして、当然本物の「M5」を選ぶべきだろう。
そしてそれは625馬力で、それは他を寄せ付けない圧倒的なパワーだ。
フェイスリフト後のニューモデル「545e」
プラグインハイブリッドグループは、今回のフェイスリフトで拡大され、新しく仲間入りしたのは、従来までプラグインハイブリッドモデルであった「530e」の効率化技術の実質的な採用により性能を高めた「545e」となった。
つまり545eでは電動モーターを、8速オートマチックのトランスミッションベルに搭載していて、80kW(109馬力)と265Nmの出力を発揮する。
システムのトータル出力は、「530e」で292馬力だった性能を、「545e」では394馬力までアップしている。
その小さな兄弟「530e」との違いは、「545e」に搭載される直列6気筒エンジンは、可変ツインスクロール充電器を備えた「540i」の3リッターを採用していることだ。
そのため、「545e」はフルバッテリーで4.6秒という驚異的な速さで0から100km/hまで加速し、その性能はスポーツセダンとしての「M550i」と競合できるレベルに在る。
したがって、良識ある通勤・通学者は、「530e」をツーリングとして選ぶべきだろう。
ディーゼルは、ミッドレンジの「530d」のヴァリアントでさえ、6気筒を搭載している。
約6,400ユーロ(約81万円)という「520d」と「530d」の価格差は、「530d」と「540d」にもほぼ同様に適用される。
もし、あなたがアドバイスを求めるならば、バランスと価格を考えて私は躊躇なく6気筒の中間モデルを勧めるだろう。
それは、エントリーレベルのディーゼル「520d」よりも大幅に多くのパワーを提供し、非常に素晴らしくシルキーで自信のあるドライブを提供してくれる。
286馬力、0-100km/hスプリント5.6秒、その650Nm(520dより250Nm以上のトルク)で、文字通りほとんどすべての状況下で、ミッドレンジから十分なパワーを有している。
また、「540d」は全輪駆動のみの設定となっているので、それが要らない、あるいは必要ないという人は、無駄にお金を使うことにもなる。
おすすめ装備はベースモデルを買って好みに応じて個別に設定することだ。
結論:
頻繁な長距離走行には、ツーリングとしてのディーゼルモデル「530d」が論理的な選択となる。
そして、アルプス近郊にお住まいならxDrive、平地にお住まいなら後輪駆動がお勧めだ。
短距離から中距離の通勤者には「530e」がお勧めだ。
さらにスポーツドライブの愛好家なら、「M550i」にはわき目もふらず、獰猛な「M5」に向かってまっしぐらに進むべきだ。
昨年のメルセデスE(W213)のマイナーチェンジに呼応するように、BMWのど真ん中のモデルである5シリーズもマイナーチェンジを施されて発表になった。BMWと言えば、なんだかんだいっても3シリーズと5シリーズ、とつい思ってしまうのは昔(30年以上前の話である)のBMWの車種構成になじみがある世代だからかもしれない。今やSUVのXシリーズだってフルラインナップで存在はしているものの、やはりこの3とか5シリーズあたりが根幹車種となってBMWのラインナップを形成している、そう思ってしまう年代なのである。
そんなBMW 5シリーズのマイナーチェンジではあるが、ヨーロッパ車で流行りの?48ボルト化を施され、若干のお化粧を受けて登場した。
驚くのはそのエンジンバリエーションで、本文中にも記されている通り、「M5 CS」を除いても12種類ものエンジンバリエーションが展開している。こうまで多いと、いったいどれを買えばいいのか迷ってしまうが、本記事では、ディーゼルエンジンの530dか、プラグインハイブリッドモデルの530eがおすすめらしい。
普通のガソリンモデルでは何を選ぶべきなのか、今回は記されていないが、520(4気筒)か530(こちらは直列6気筒)あたりが良いのではないかと推測される。そして圧倒的にハイパフォーマンスなモデルが望みならば、迷うことなくM5というのは昔から変わらない5シリーズの定説なのである。
Text: Alexander Bernt
加筆:大林晃平
Photo: BMW Group