徳仁(なるひと)新天皇用トヨタ センチュリー カブリオレとはどういうクルマか

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トヨタ センチュリー カブリオレ (2019): V8、 ハイブリッド、 天皇陛下

このトヨタ センチュリーは極めて特別な1台だ。このコンヴァーティブルは新天皇の即位パレード用にトヨタによって作られた国家のクルマだ。

トヨタ センチュリーは日本国の車だ。我々AUTO BILDのテストでもこのラグジュアリーなセダンはその仕上げと、日本的な高級さを表した存在感に対し高評価を得ている。日本の自動車史におけるセンチュリーの地位も、運転手付きの最上級サルーンとして君臨し続けている。日本の皇室もセンチュリーを重用している。そしてトヨタはこのたび新天皇の即位式用にセンチュリー カブリオを作り上げたのだった。

といってもそれは決して簡単なことではない。屋根を切っただけ?そんなことあり得ない。さらに一台だけということもなく、おそらく数台の影武者がスペアカーとして存在している、のであろう。トヨタは絶対に明らかにはしないが。

もちろん全世界が注目する中であり、高貴な方々に何かあってはいけない。何かあったとしたらそれはトヨタとしても、さらには日本としても許せない事態となってしまうだろうから。責任重大である。絶対に開発主査になんてなりたくない。

おそらく開発はボディの剛性など、コンピューター解析からはじまり、いくつかの実験車(作ったはず)などを準備し、本当の本物は腫物でもさわるかのように熟練の職人たちが艤装を施したのであろう。そして彼らは誇らしげに自分たちの作った車を、パレードの画面上に見守りながら、感慨に浸ったはず、である(あるいは、何事もなく終わるように、祈りながらみたかもしれぬ)。

センチュリー コンヴァーティブルは唯一無二のモデル

コンヴァーティブルは、新天皇皇后両陛下が乗り降りしやすいように4ドアを保持したままで作られた。いうまでもなく公式行事だから、このボディ形式が正解、である。(もっと言えば、ランドーレットが正式なのかもしれないが)。2019年10月22日のパレードのテレビ画面を見ながら、おお、っと思ったのはそこに貼られた革の張りだけではない。リアドアとフロントドアのメッキのチリの合い具合、そしてボディ全体の醸し出す艶と深さ、である。

いったいどれだけ磨いて、塗って、焼いて、また磨いて、塗って、焼いてしたのかはわからないが、普通のセンチュリーよりは回数も手間も多いことは間違えない。

またいったいリアのドアがどうやって固定しているのか(ヒンジの部分は、フロアから強固な棒のようなものが出ていて、それについているはず、だが、そうであるならばフロアの設計や補強なども、普通のセンチュリーとは別物なはず)。見れば見るほど、その質の高さに度肝を抜かれた。

ナンバープレートがある場所には、天皇家の紋章である菊のご紋が装着されている。この紋章はリアドアにも備わっているが、その部分は取り外し式で、陛下がお乗りになる場合にのみ取り付ける。この金メッキもまた見たことのないような艶であり、下地を含めてどれだけ研磨したのか、気が遠くなる。
パワーユニットに関しては公にされていないが、おそらく生産型と同じ。V8ハイブリッドを搭載していると推測される。(ということは、旧レクサスのハイブリッドシステムと同じだが、信頼性は高いであろうし、性能的には問題ないはずである)

戴冠式のあと、センチュリー コンヴァーティブルは数回にわたって東京と京都で展示される予定だ。

おそらく今後、センチュリー コンヴァーティブルは唯一無二の存在であり続けるだろう。公の場で目にすることは極めて稀なこととなるであろう。
宮内庁によれば納入価格は8000万円とのことだが、それはあり得ない。絶対にあり得ない。ちゃんと設計して、試験もして(トヨタ社内で走行試験を徹底的にやったはずだ)、これだけ丁寧に作ったのであれば最低でもその10倍。いや、もっと高くともまったくおかしくない。8000万円はあくまでも、「トヨタとして8000万円でつくらせていただきました」という値段なのである。

幌があるのかどうか、ちょっと分かりかねるが、本番のパレード当日が素晴らしいお天気で、本当に良かった。尚、パレードの車輛にはちゃんと車検のステッカーと、定期点検の丸いステッカーさえ貼られており、そんなのはがせよ、とも思ったが、そういう律儀(でやや四角四面)なところも我が国の皇室なのである。

助手席にヘッドレストが見当たらないが、これはもちろん、新皇后陛下、雅子さまが良く見えるようにするため。

Aピラーの断面がかなり太いので、この部分も含めて剛性をものすごくしっかりと保てさせているのだろう。皇居から一般道に出る段差でスカットルシェイクして、万一にでも窓にひびが入ったりしたら、トヨタ一生の恥、なのだから。

Text: Moritz Doka、武部隆志