「東京オートサロン2026」メーカー主導とカスタム文化が交差する現在地
2026年1月21日
東京オートサロン2026は、かつてのチューニングカー主体のイベントという枠を完全に超え、メーカー、サプライヤー、ビルダーがそれぞれの立場から「クルマの未来像」を提示する総合モビリティショーとしての成熟を示した。派手さや過剰な演出よりも、市販車との連続性や技術的裏付けを重視する展示が増え、会場全体に現実解としてのカスタムと走りの方向性が共有されていたのが印象的だ。
国内メーカーが示した“今”と“次”
トヨタはGRブランドを軸に、モータースポーツ直結の世界観を全面に押し出した。市販車、レースカー、カスタムカーの境界を意図的に曖昧にし、「走りを核としたブランド体験」を立体的に提示する手法は、オートサロンにおけるメーカー展示の完成形とも言える。


日産はパフォーマンスブランドの再定義に注力した。電動化時代においても“走り”をどう継承するか、その思想をコンセプトと具体的な造形で示し、往年のネームバリューを単なる懐古に終わらせない姿勢を見せた。


スズキは軽自動車とコンパクトカーを中心に、現実的でユーザー距離の近いカスタム提案を展開した。使い切れる性能、日常と地続きの楽しさというスズキらしい価値観は、オートサロンという舞台でも強い説得力を持つ。



マツダは一貫したデザイン思想と走りの質感を重視した展示で、量より文脈を語るアプローチを貫いた。派手さを抑えつつも、ブランドの芯を明確に伝える構成は、成熟期に入ったメーカーの余裕を感じさせる。


ホンダは、モータースポーツ由来の技術と市販車の関係性を明確に打ち出す展示で存在感を示した。タイプRやレーシングイメージを想起させるモデルを中心に、走りを核としたホンダらしい価値観をストレートに表現している。

派手な演出に頼るのではなく、パッケージングやメカニズム、走行性能といった本質的な部分で語る姿勢は、オートサロンという場においても一貫している。サーキットと公道、市販車とレース活動を地続きで捉えるホンダの思想は、カスタムやチューニング文化とも親和性が高く、来場者にとっても分かりやすいメッセージとして届いていた。


ホンダの展示は、電動化や環境対応が進む時代においても、「操る楽しさ」をどう残していくのかという問いに対する現時点での答えを示すものだったと言える。

スバルは、シンメトリカルAWDと水平対向エンジンに代表される独自技術を軸に、走りと安全を両立させるブランド哲学を明確に打ち出した。派手な演出よりも、雪道や悪路、高速道路といった実使用シーンを想起させる展示が多く、日常とスポーツを地続きで捉えるスバルらしさが際立つ。

ラリーやモータースポーツに由来する技術背景は、カスタムやチューニング文化とも親和性が高い。単なる性能競争ではなく、「どんな環境でも安心して走れること」を価値として提示する姿勢は、アウトドア志向が高まる現在の流れとも合致している。スバルの展示は、実用性に裏打ちされたスポーツという独自の立ち位置を、オートサロンの場で改めて印象づけた。
ダイハツは生活密着型カスタムの進化形を提示した。軽自動車の拡張性や遊び方を具体的に示し、実用と個性を両立させる提案は、ファミリー層やライトユーザーに向けた現実的な選択肢として機能していた。

海外ブランドと“異なる文脈”
VW(フォルクスワーゲン)はコンセプトカー「ID.GTI」とゴルフRの特別仕様車を通じて、日常性と先進性の両立を示した。過度な演出に頼らず、プロダクトそのものの完成度で魅せる姿勢は、日本市場におけるVWの立ち位置を再確認させる。

「Golf R Black Edition(ゴルフR ブラックエディション)」は大型リアスポイラー、アクラポヴィッチ製チタンエキゾースト、そしてドリフトモードやスペシャルモードが追加されたR-Performanceトルクベクタリングを搭載した特別仕様車。

BMWはプレミアムブランドでありながら、カスタムやチューニング文化と強く結びつく存在であることを改めて示した。直列6気筒エンジンに代表される走りのイメージや、Mモデルを中心としたスポーツ性は、オートサロンの文脈とも親和性が高い。

完成度の高い市販車をベースに、足まわりやエアロ、ホイールなどで個性を加えるスタイルは、現代的なカスタムのひとつの到達点だ。派手さよりも質を重視する展示姿勢は、カスタムが成熟期に入ったことを象徴している。BMWの存在は、プレミアムカーであっても「走りを楽しみ、手を加える文化」が確かに根付いていることを来場者に示していた。
ケータハムは、「軽さこそが最大のチューニング」という伝統的価値に加え、その思想を次世代へとつなぐ存在として「Project V」を提示した。軽量スポーツカーの代名詞とも言えるブランドが、電動化という避けられない潮流にどう向き合うのか。その答えを具体的な形で示したのがこのモデルだ。

Project Vは、EVでありながらケータハムらしい軽快さとドライバー中心の思想を追求したコンセプトとして位置付けられる。重量増が避けられない電動車において、走りの質をどう確保するのかという問いに対し、車体構成やパッケージングの工夫によって応えようとする姿勢が明確だった。

伝統的なセブン系モデルが「原点」を体現する存在だとすれば、Project Vはケータハムの「未来」を象徴する存在だ。東京オートサロンという多様な価値観が交差する場で、内燃機関と電動化の両軸を提示したケータハムの展示は、ブランドの芯が揺らいでいないことを強く印象づけた。

ステランティスジャパンがプジョー、シトロエン、DSオートモビルというフランス系3ブランドで初めてブースを構えたことが大きな話題となった。各ブランドの日本初公開モデルが揃って披露され、イベント来場者にフレンチブランドの個性と最新のモデルポートフォリオを体感させた。

Photo:ステランティスジャパン

Photo:ステランティスジャパン
プジョーは新型「5008」を中心に、洗練されたデザインとドライビングプレジャーを訴求。シトロエンは新型「C5 エアクロス」でブランドらしい快適性と独創的な装備を示し、DSオートモビルは高級感を強調した「DS N°4(ナンバーフォー)」を含む展示でプレミアムブランドとしての存在感を放った。

Photo:ステランティスジャパン
これらの展示は単なるショーケースにとどまらず、ステランティスジャパンが日本市場におけるブランド価値を高める戦略の一環として位置付けられている点でも注目に値する。イベント期間中には日本初公開モデルのプレゼンテーションも行われ、来場者とのインタラクションを通じてブランド理解を深める機会が設けられた。

Photo:ステランティスジャパン

