【比較テスト】BMW 230iクーペMスポーツかVW ゴルフGTIか?走る歓びへの2つのアプローチ
2026年1月19日
BMW 230iクーペMスポーツ対VWゴルフGTI。BMW M2やVWゴルフRは高すぎる?しかし、運転の楽しさや外観は諦めたくない?BMW 2シリーズ クーペとVWゴルフのスポーティなモデルなら、その両方を実現できるかもしれない。最終的には驚くような結果になるかもしれない比較だ。
このストーリーは別の形で展開することも可能だった。そのテーマは、「50,000ユーロ(約925万円)程度で購入できるクルマの運転の楽しさはどれほどか?」というものだ。そして、今、上を見上げて目をこすりながら、「ゴルフ」がなぜここにあるのか疑問に思う方もいるかもしれない。この最新の「GTI」は45,710ユーロ(約845万円)からで、17インチホイールと通常のサスペンションが装備されている。ホイールを変更し、ダンパーをアップグレードすれば、あっという間に48,000ユーロ(約888万円)を超えてしまう。
居酒屋の懐疑派なら、「その値段なら、ちゃんとしたクルマが買えるだろう」と言うに違いない。確かにその通りだ。たとえばBMW 2シリーズの「230iクーペ」がある。ただし価格は53,300ユーロ(約986万円)で、「VW ゴルフGTI」より数千ユーロ高い。それでも、プレミアムブランドであり、クーペであることを考えれば、その差は納得できるだろう。
GTIへの敬意を払いつつ言えば、「2シリーズ」に投じたお金は、よりはっきりと目に見える形で現れている。質感の高い素材、大型のカーブドディスプレイ、左右に太く構えたエキゾーストパイプ。さらに3,350ユーロ(約62万円)のMスポーツプロパッケージを選べば、その名の通り、より一段スポーティさが加わる。

「プロ」とは何のプロか?プロフェッショナル向け、という意味だろうか。いや、車高調サスペンションやセミスリックタイヤが備わるわけではない。だが、よりダイナミックな走りを求める向きに向けた、かなり充実したベースパッケージである。通常のMスポーツパッケージに含まれるエアロパーツによるスポーティな外観、拡張されたブラックのシャドーライン・トリム、光沢クロームを排したMライト、そして前後異径タイヤを組み合わせたスタイリッシュな18インチホイールにミシュランタイヤが装着される。このパッケージでは、サスペンションもわずかに引き締められている。スポーツシートのみがオプション扱いで、価格は990ユーロ(約18万円)。すべてを含めると、総額はおよそ57,000ユーロ(約1,054万円)強となる。
| テクニカルデータ | BMW 230i クーペ M Sport | VW ゴルフ GTI |
| エンジン | 直列4気筒DOHCターボ | 直列4気筒DOHCターボ |
| 排気量 | 1998cc | 1984cc |
| 最高出力 | 180kW (245馬力)/4500-6500rpm | 195kW (265馬力)/5000rpm |
| 最大トルク | 400Nm/1600-4000rpm | 370Nm/1600-4500rpm |
| トランスミッション | 8速オートマチック | 7速デュアルクラッチ |
| 駆動 | 後輪駆動 | 前輪駆動 |
| 全長/全幅/全高 | 4537/2068/1390mm | 4289/2073/1471mm |
| ホイールベース | 2741mm | 2627mm |
| 燃料タンク/トランク容量 | 52/390L | 50/374-1230L |
| 価格(テスト車) | 57,640ユーロ(約1,066万円) | 48,220ユーロ(約892万円) |
「M240i」か?それなら価格表のスタート地点は、さらに6,000ユーロ(約110万円)上がる。しかも「240i」は四輪駆動のみの設定だ。その意味で「230i」は、「M2」とは比べものにならないほど距離はあるものの、走る歓びへの“ピュア”な入り口を体現する存在と言える。要するに、本物のMではない。だからこそ、ミュンヘンのメーカーはゴルフGTIと競うことになり、Rではないのだ。
パワーとスピードの比較
では、例の“居酒屋的”な質問に答えよう。パワーは?速さは?スペック上では、2シリーズが245馬力、ゴルフが265馬力を発生する。どちらも2.0リッターターボエンジンで、BMWは縦置き、VWは横置きだ。車重はそれぞれ約1.6トン弱と1.4トン強で、いずれもミドルクラスに分類されるが、秤に載せるとBMWのほうが137kg重い。言い換えれば、「230i」はゴルフよりも1馬力あたり約1kg多くの重量を背負っている計算になる。0-100km/h加速は両車とも5.9秒、公称最高速度も同じで、いずれも電子制御により250km/hに制限されている。だが、公道やザクセンリンクに解き放つ前に、まずは室内に座ってみよう。

BMW:シートとドライビングポジションは申し分ない。後席に誰かが座ることはまずないだろうが、試してみたところ、身長160cm以下であれば何とか使える。390リッターのトランク容量は十分だ。ステアリングの握り心地は良好で、パドルシフトは大きく質感も高く、しっかりとした操作感がある。カーブドディスプレイ上のインフォテインメントも直感的で使いやすい。
一方で、運転支援システムをオフにするには、毎回サブメニューを深く潜る煩わしい操作が必要なのは残念だ。スポーツモードの切り替えはずっと簡単で、センターコンソールのボタンをワンクリックするだけでSport Plusまで一気に走りのキャラクターを尖らせることができる。ただし、その実態はステアリングとアクセルペダルの反応が変わるだけで、サスペンションは調整式ではない。
VW:「GTI」では、オプションのアダプティブサスペンションにより、「コンフォート」や「スポーツ」以上に硬くも柔らかくも調整できる。操作はインディビジュアルメニュー内で指を滑らせるだけだ。標準のチェック柄シートと着座位置は、BMWに比べて明らかに高い。コクピットのカーボン調トリムは「230i」よりも本物らしく見えるが、価格は950ユーロ(約18万円)と高額だ。スポーツステアリングの出来は良く、ボタンもリアルスイッチなのは好印象だが、パドルシフトは小さすぎるうえ、操作感もBMWに比べてかなり安っぽい。特にクリック感は曖昧で、スポンジーと表現したくなる。

インフォテインメント
先代モデルでは、2019年当時に“本当にひどい”と言わざるを得なかったが、第4世代となる現行モデルでは大きく改善された。メニュー構成は整理され、アクセスも格段に速く、カスタマイズの自由度も増している。新たに追加されたゲームアプリでは、駐車中にチェスや「マリオカート」で時間を潰すこともできる。エアコン操作も、ようやくきちんと機能するようになった。
ESPのオフ操作も、より洗練された方法が用意されている。そして、BMWよりも明らかにスポーティで魅力的な要素がもうひとつある。それがセンターに配置されたタコメーターだ。ここでは、今なお本物の円形メーターがアニメーション付きで表示される。もっとも、その上に盛り上がるバー表示は不要かもしれないが、これは好みの問題だろう。
エンジン比較:サウンドとキャラクター
エンジンを始動し、走り出そう。アイドリングでは、VWのエンジンのほうがBMWの「B48型」4気筒よりも、明らかに荒々しく、力強く聞こえる。しかしレスポンス、トルク感、パワーの出方という点では、2シリーズのエンジンはターボ4気筒の中でも珠玉の存在だ。出力自体はMモデルと比べれば控えめだが、主観的なフィーリングでは非常によく回り、実に魅力的だ。しかも、ヴォルフスブルク製よりも好印象ですらある。
もっとも、「GTI」のエンジンも決して退屈ではない。むしろその逆だ。第4世代へと進化した「EA888」は、回転域全体で滑らかかつ力強く、わずかに高回転まで勢いよく吹け上がり、少なくとも車内では心地よい咆哮を響かせる。それでもなお、BMWのエンジンのほうが常に一歩前に出ようとする意欲を感じさせるし、排気音も意外なほど良い。

最終的に、純粋な数値ではゴルフが勝る。しかも、前輪駆動であることを考えると意外だが、発進加速からして優位に立つ。「GTI」のローンチコントロールは、停止状態からでもトラクション限界を正確に捉え、驚くほどスムーズに作動する。加速が続くにつれて、優れたパワーウエイトレシオの差はさらに明確になり、最終的には200km/h到達時点で3秒もの差をつけた。これは予想以上の開きだった。
ブレーキ:互角の高水準
制動性能に関しては両車とも意見が一致する。100km/hからの制動距離32メートルは、このコンパクトクラスとしては非常に優秀だ。10回連続のフルブレーキング後でも、フェードやペダルタッチの悪化は皆無。ペダルフィールも両車とも同等に優れており、フロントアクスルの状況が常に把握できる。200km/hから80km/hへと何度も急減速する高速走行でも、オーバーヒートの兆候は見られない。
さらに、両車ともコーナリング性能は非常に高い。ただし、そのアプローチはまったく異なる。M専用の補強材やストラットを持たない標準の「2シリーズ」は、剛性感や路面からの突き上げ、常に張り詰めた感じがやや抑えられており、精度こそ若干落ちるものの、そのぶん軽やかで伸びやかなハンドリングを味わえる。動きは流れるようで、切り返しもスムーズだ。それでもフロントの切れ味は鋭い。主因は、軽い4気筒エンジンの存在にほかならない。

前輪駆動である「ゴルフGTI」は、当然ながらこの点では一歩譲る。もっとも、その完成度は非常に高い。グリップ、横方向の安定性、トラクションはいずれも豊富で、かつてのような強烈なアンダーステアは過去のものだ。ただし、「GTI」は、よりアグレッシブに仕立てられた「クラブスポーツ」ほどリアを積極的に流すことはない。その結果、極めて安定しているが、突き抜けた面白さには欠けるコーナリングとなる。
ザクセンリンク:速さか、楽しさか
比較テストには、当然ザクセンリンクでのラップ計測も含まれる。ここでは、「GTI」が軽さという武器を存分に活かす。BMWよりも楽に、そしてライン取りも正確にコーナーをこなす。結論を先に言えば、ゴルフはBMWより速く、しかも245psの先代モデル(当時も同じブリヂストンタイヤを装着)より0.8秒も短縮してみせた。
| 評価ポイント | BMW 230i クーペ M Sport | VW ゴルフ GTI |
| 駆動システム(60点満点) | 30 | 32 |
| ブレーキ(40点満点) | 23 | 24 |
| シャシー(60点満点) | 34 | 43 |
| ステアリング(40点満点) | 27 | 28 |
| ラップタイム(50点満点) | 15 | 18 |
| エモーション(50点満点) | 32 | 31 |
| 日常使用(50点満点) | 35 | 37 |
| コスト(50点満点) | 35 | 38 |
| 総合評価(400点満点) | 231 | 251 |
だが、速さがそのまま楽しさにつながるとは限らない。そこで話は、再び「230i」へと戻る。ザクセンリンクでは約2秒遅いかもしれないが、その1周は楽しさにおいては倍以上だ。もっとも、その前提として、ミシュランタイヤを少なくとも2周しっかり慣らしておく必要がある。そうすれば「230i」は、「アルピーヌA110」以来と言っていいほどの、遊び心あふれるドリフトを披露してくれる。1周のあいだ、ほぼ常にクルマは動き続けている感覚だ。「230i」は、まるでラリーカーのように、車体を垂直軸まわりに自在に操ることができる。揺れ動くボディが、狙った通りにクルマを押し出してくれる。フロントアクスルは安定しており、頂点のクリップや、時には芝生にまでフロントを引っかけるようにして、そのまま一気に駆け抜けられる。
結論:
もし「230i」がもう少し安ければ、間違いなく“通好み”の一台になっていただろう。卓越した4気筒エンジンを備えた、純粋なファンマシンだ。一方の「GTI」は、縦方向・横方向ともに驚くほどスムーズで安定しており、非常に効率的に走る。しかし、BMWにあるあの高揚感が、「GTI」には欠けている。
Text: Guido Naumann
Photo: Ronald Sassen

