今まで習ったメルセデス・ベンツの基礎知識が通用しない!―崩壊した命名の法則
2025年12月31日
その他のクラスは?
「SLS AMG」
SLS AMG(2010年6月10日発表)のSLSの最後のSはSportを意味。つまり、S=Super、L=Leicht(軽量)、S=Sportの意味。メルセデス・ベンツとAMGの両ブランドを活かしたスーパースポーツカーである。つまり、伝説の1954年300SLガルウィングクーペを彷彿させるモデルだ。

Photo:Mercedes-Benz Group
「CL」
CLはC=クーペ、L=Leicht(軽量)の意味で位置付けとしてSクラスをベースにした旗艦クーペ。先代のSEC/W126(1981-1991年)やSEC/W140(1992-1999年)はSクラスクーペの名称であった。SECからCLに名称が変更されたのは、1992年のC140型からである。理由はSクラスのクーペではなく、CLクラス=高級クーペ専用モデルとして、クーペ独自の存在感を持たせた独立したブランド化にあった(1992-2013年)。

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「CLK」
CLK(1997-2002年)はシャーシやコンポーネンツは初代Cクラス/W202と共用するが、Eクラスクーペモデルの後期モデルとして登場した。つまりC=Cクラス、L=Leicht(軽量)、K=Kurz(ショート)の意味。

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「Mクラス(ミドルフルサイズラグジュアリーSUVで5人乗り)」
初代Mクラス/W163はドイツで開発し、1997年に特に北米市場を主なターゲットとして、メルセデス・ベンツが初めて北米のアラバマ州タスカルーサ工場で生産した。つまり、この初代MクラスはプレミアムSUVのパイオニア的存在で、オフローダ-から派生したクロスカントリー的な4WDが独占していた北米マーケットにメルセデス・ベンツの上質感や先進性を持ち込んだのである(日本では1998年からML320の販売が開始された)。

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この初代Mクラスは進化を遂げ、2015年にGLEに改名しオン/オフロードでも優れた走行性能を発揮するプレミアムSUVだ。GLEと改名したその背景にはGL(SUV)+クラス名を明記し、わかりやすくするためにある。つまり、GLA/GLB/GLC/GLE/GLSと統一化するためであった。
「GLクラス(フルサイズSUVで3例シートの7人乗り)」
このMクラスの後継モデルとして大型化し進化を遂げたのがGLクラスで、オン/オフロードでも優れた性能を発揮するフルサイズプレミアムSUVブランド。初代GLは2006年に発表されたGクラスのラグジュアリーSUVで、文字通りG=Geländewagen、 L=Luxuryの意味。初代はGL 320 CDI/GL 350/GL 450/GL 500(2006-2012年)、2代目はGL 350 d 4MATIC /GL 400/GL 500/AMG GL 63(2012-2019年)で、3代目として現行のGLSに改名。

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排気量が?
また、数字に10をかけるとそのモデルの排気量とほぼ等しくなる排気量の法則も途絶え(2000年のCクラス/W203より)、一部のモデルを除きほとんど通用しなくなっている。
一時期は、モデル数字よりも実質の排気量が大きくなっていた。例えば、W203のC 230(後期)は2.300ccではなく、2.496ccとなっていた。しかし、最近のメルセデス・ベンツでは高効率を追求した環境性能、ダウンサイジング・コンセプトによる燃費と動力性能を向上させるため、直噴・可変バルブ・電動補機やターボを組み合わせ、排気量がモデル表示の数字よりも小さくなっている(小排気量で出力とトルクをアップ)。

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例えば、2011年5月に発表された直4ターボのC 250 CGI/W204の排気量は、C 200 CGIの1.796ccと同じ排気量になっていたが、出力やトルクは先代の自然吸気C 230/W203の2.5 L/V-6エンジンに匹敵し204HPを発揮。
さらに、2014年から2021年には、本格ダウンサイジング+高性能化によりC 200/W205は1.998ccターボ+マイルドハイブリッド(ISG)で184HPを発揮した。

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現行のC 200/W206は電動化ダウンサイジングへ進化し、マイルドハイブリッド(ISG)+高出力を発揮する。つまり、C 200/W206は1.498ccターボ+マイルドハイブリッド(ISG 48V)で204HP+ブーストを発揮し、前モデルC 200/205の1.998ccターボよりも小排気量だがモーターアシストで加速は鋭い。
呼び方は?
モデル名の数字180、220、350、580の呼び方は、イチハチマル、ニニマル、サンゴマル、ゴハチマルと語呂が良く呼びやすい一桁台で呼び、一方200、300、500はニヒャク/ニマルマル、サンビャク/サンマルマル、ゴヒャク/ゴマルマルとも呼んだりしている。
やはり、正式にはきちんと百単位で統一して呼ぶのが礼儀だ。筆者が現役時代に思った事は、お客様が商談途中でモデル変更された場合には、なお更の事だ。
Mercedes-Benzをどのように呼ぶのか、メルセデス・ベンツ、メルツェデス・ベンツ、マーセデス・ベンツ、それとも単にメルセデス、マセデス、ベンツ?
日本語ではメルセデス・ベンツ、ドイツ語ではメルツェデス・ベンツと呼ぶのが通例。英語では、マーセデス・ベンツとも呼び、しかも日本では大正末期頃、ある商事会社の広告には独逸マセデス号と書かれていた事もある。しかし、ただ単にメルセデスやベンツとは呼ばずに「メルセデス・ベンツ」と書き、呼ぶべきで、それは由緒あるMercedes-Benzの車名の歴史を理解すればわかることだ。
AMGをどう呼ぶのか、果たしてアー・マー・ゲー?またはエー・エム・ゲー?言うまでもなく、ドイツ語ではアー・エム・ゲー、英語ではエイ・エム・ジーである。

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AMGもまた誕生の歴史を知れば、正式な呼び方がなんであるか理解できる。つまり、1967年、創立者であるHans-Werner Aufrecht(ハンス・ヴェルナー・アウフレヒト)と彼の兄と、エンジニアのErhard Melcher(エルハルト・メルヒャー)の3人で創業し、アウトレヒトの生まれ故郷であるGrossaspach(グローサスパッハ)のそれぞれの頭文字からAMGとなった。
W124の「W」って何?
モデル名の他に、「W124」のようなコードネームで言い表すことがよくあるが、その「W」は何を意味するのか。例えば、その初代Eクラス/W124にはW124/S124/C124/A124/V124と多くのボディバリエーションがあった。
ドイツ本国では、Baumuster(製造モデル)と呼ばれ、ボディタイプを区別するコードネーム。但し、例えばクーペの300SL(1954年~1963年)がW198であったように、1970年代まではボディタイプによる区別がなかった。

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このコードネームでのWはセダン、Sはステーションワゴン、Cはクーペ、Aはカブリオレ、Rはロードスター、Vはロングボディ・・・とそれぞれボティタイプを意味し区別されているといえばスッキリするだろう!ただし、このコードネームのアルファベットはAクラスのA180、CクラスのC200、SクラスのS500、VクラスのV250などのモデル名のアルファベットとは意味が違うので注意が必要だ。
現行モデルでは下記の通り。
W=セダン(Aクラス、Mクラス、Rクラスを含む)を指す。Wagen(ドイツ語でヴァ一ゲン=車)の頭文字。また、シルバーアローのレ一シングカ一W25などの「W」はWerk(ドイツ語でヴェルク=工場の意味)の頭文字で、英語ならばwork shop no.に当たる。
S=ステーションワゴンを指す。
C=クーペ/スポーツクーペ(CL、CLS、SLS AMGのスポーツクーペを含む)を指す。
A=4シーターのカブリオレを指す。
R=2シーターのロードスターを指す。
V=ロングボティを指す。
X=GLA//GLB/GLC/GLSクラス(GLEはMクラスの後継車のためW;詳細は後述)を指す。
BR=Gクラス/Vクラスを指す。
現行クラスと旧クラスのコードネーム一覧
例;
Aクラス:W177(ハッチバック)/V177(セダン)。
Bクラス:W247。
Cクラスセダン/ワゴン:W206/S206。→Cクラスのクーペ/カブリオレはCLEに統合。
Eクラスセダン/ワゴン:W214/S214。→Eクラスのクーペ/カブリオレはCLEに統合。
CLEクーペ/カブリオレ:C236/A236(新設定)。
※従来のC/Eクラスのクーペ/カブリオレは世界的な需要減少と開発コスト削減でCLEに統合。
Sクラス/ロング:W223/V223。
SLクラス:R232。
Vクラス:BR447。
Gクラス:BR463。
GLA/GLB/GLC/GLE/GLS:X156/X247/X254/W166/X167(新設定)。
※GLEだけがW166となっているのはMクラスの後継車として分類され例外となる。
CLSクラス:C219(2004-2010年))/C218(2010-2018年)/C257(2018-2023年)→CLEクラス 統合
SLS AMGクーペ/ロードスター:C197/R197(2010-2014年)。
SLKクラス:R170(1996-2004年)/R171(2004-2011年)/R172(2011-2020年)。
Mクラス:W163(1997-2005年)/W164(2005-2011年)/W166(2011-2015年5月にGLEに改名)。
Rクラス:W251(2005-2013年)の後継モデルがなく、VクラスやGLEで代替。

今や完全に崩壊したメルセデス・ベンツの命名の法則。ラインナップが増えたとは言え法則は残しても良かったのではないかと思うのは筆者だけではないだろう。1.5リッターターボエンジン搭載の「C 200」は「C 150 t」で何が悪いのか?”2リッター並みの出力”だからという解釈もあるようだが。
Text:妻谷裕二

